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吹奏楽コンクール自由曲ランキング・ベスト30(クラシック編曲作品)

2021年6月26日

クラシックファンの中には学生時代に吹奏楽をはじめたことがクラシック音楽と出会うきっかけだと言う方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

かくいう管理人も中学生の頃に吹奏楽をはじめたことがクラシック音楽との出会いでした。

今回の記事では2019年までに全日本吹奏楽コンクール全国大会で演奏されたクラシック編曲作品の内、演奏回数の上位30作品をまとめてご紹介しています。

記事には吹奏楽の各演奏団体やレーベルなどの公式チャンネルにアップされたYouTube動画を貼り付けさせていただいています。(一部にオケ版あり)

当ブログで詳細記事を書いている作品に関してはリンクを貼っていますので、作曲の背景や詳しい解説、原曲の演奏動画などはリンク先の記事でお読みいただければと思います。

尚、記事中の全日本吹奏楽コンクールの受賞データは吹奏楽コンクールの過去データをまとめられたWEBサイト『Musica Bella』の「吹奏楽コンクールデータベース」から引用、参照させていただいております。

『Musica Bella』様、ありがとうございました。

※尚、受賞内訳の「その他」には全国大会がまだ順位制だった1969年以前のデータなどが含まれています。

目次

レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」

【第1位】レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」 金賞47:銀賞38:銅賞29:他1:計115

第1位は出場回数115回で「ローマの祭り」がランクインしました。これほどの人気曲になると同一部門で自由曲が被ることもありますよね?万一、課題曲まで一緒だとちょっと辛いかも知れませんね。

2012年の職場・一般Aでは3団体が、2006年の高校Aではなんと5団体がこの「ローマの祭り」を自由曲に選んでいます。他にも同一部門で2団体、3団体が過去に度々この作品を選んでいます。

2009年の職場・一般Aでは「創価グロリア吹奏楽団」「東海市吹奏楽団」がこの曲を選び、見事に2団体とも金賞に輝いていますが、私はたまたまその時会場に足を運んでいて両団体の素晴らしい演奏を聴くことが出来たのを懐かしく思い出しました。

終曲「主顕祭」ラストのトランペットソロは一番の見せ場ですが、聴いているこちらも思わず力が入ってしまう部分です。

ソロを担当される方のプレッシャーや、いかばかりか心中お察し致します。(涙)

それにしても、この難曲を中学生が見事に演奏していると言うのが私には信じられません。(驚)

レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」(編曲:榛葉光治)
Ⅰ.チルチェンセス(0:00)
Ⅱ.五十年祭(04:58)
Ⅲ.十月祭(12:24)
Ⅳ.主顕祭(19:59)

冨田篤指揮:ブリヂストン吹奏楽団久留米

レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」詳細解説

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

【第2位】ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」 金賞49:銀賞48:銅賞14:他1:計112

1位と僅差の第2位は「ダフニスとクロエ」がランクイン、こちらも人気の作品ですよね。この作品も「ローマの祭り」と同じように複数の団体が被るケースが多く、1999年、2001年、2007年の高校Aでは共に4団体が、1991年、1999年の中学Aではなんと6団体がこの作品を選ぶと言う渋滞ぶり。(汗)

人気の高さにも驚かされますが、これほど多くの中学校がこの作品に取り組むほどの演奏技術を持っていると言うのにも驚きです。

私が中高生の頃にはまだ著作権の関係で音源もなく、コンクールの演奏を収録した音源からも割愛されていたように記憶しています。

コンクールでは「夜明け」「全員の踊り」が抜粋されることが大半だと思いますが、この作品の重要なモチーフであるパンとシランクスの物語をパントマイムで表現する「無言劇」は聴きどころだと思います。

吹奏楽がきっかけでこの作品を知った方には、ぜひ原曲、そしてバレエ音楽全曲を通して聴いてみていただきたいと思います。バレエのあらすじも詳細解説に書いていますので、そちらもぜひお読みくださいね。

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲(編曲:上埜孝)
Ⅰ.夜明け(00:00)
Ⅱ.無言劇(04:57)
Ⅲ.全員の踊り(11:02)

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」詳細解説

R.シュトラウス:楽劇「サロメ」

【第3位】R.シュトラウス:楽劇「サロメ」 金賞28:銀賞30:銅賞15:他1:計74

出場回数74回で第3位にランクインした「サロメ」ですが、近年は取り上げられる機会はそう多くはなく、ほとんどが1980年代後半に集中的に取り上げられています。

吹奏楽コンクールではこの流行の波が本当に激しいですよね。

コンクールで取り上げられる「7つのヴェールの踊り」は木管楽器、中でもオーボエの見せ場が多い作品です。物語はかなり官能的な内容なので、中学校の先生方はどんな風に生徒に説明しているのだろうと考えてしまいます。(笑)

R.シュトラウス:楽劇『サロメ』より「7つのヴェールの踊り」(編曲:森田 一浩)

ジェームズ・バーンズ指揮:洗足学園音楽大学フレッシュマン・ウインド・アンサンブル

ドビュッシー:交響詩「海」

【第4位】ドビュッシー:交響詩「海」 金賞30:銀賞28:銅賞10:計68

第4位にランクインしたドビュッシー「海」も近年の全国大会ではそんなに多い印象はないですね。

抜粋されるのは終曲「風と海との対話」がメインかと思いますが、ドビュッシーの持つ印象派絵画のような独特の淡い色彩感を吹奏楽で表現するのはなかなか難しいですよね?

それだけに上手く表現できれば評価は高いのかも知れませんね。

この作品はドビュッシーが愛の逃避行を行うなど、結構ドロドロな時期に書かれた作品です。その辺の経緯は詳細解説に書いていますので、そちらもぜひお読みください。

ドビュッシー:交響詩『海より「風と海との対話」(ダイジェスト)

酒井伊知郎指揮:陸上自衛隊東北方面音楽隊

ドビュッシー:交響詩「海」詳細解説

ラヴェル:スペイン狂詩曲

【第5位】ラヴェル:スペイン狂詩曲 金賞21:銀賞21:銅賞9:計51

第5位にランクインした「スペイン狂詩曲」もここ10年程はあまり全国大会で聴く機会は少なくなりましたが、かつては中学、高校の部を中心によく取り上げられた作品です。

この作品が書かれたのは「ラヴェル事件」と呼ばれる身辺のゴタゴタもようやく収まってきた30代前半の作品です。その辺の経緯は詳細解説に書いていますので、こちらもぜひお読みくださいね。

ラヴェル:スペイン狂詩曲(編曲:森田 一浩)
第1曲:夜への前奏曲(00:00)
第2曲:マラゲーニャ(04:29)
第3曲:ハバネラ(06:42)
第4曲:祭り(09:37)

武田晃指揮:陸上自衛隊中央音楽隊

ラヴェル:「スペイン狂詩曲」詳細解説

ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」

【第5位】ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」 金賞20:銀賞18:銅賞12:他1:計51

「スペイン狂詩曲」と並んで51回の出場で第5位の「ガイーヌ」、1992年の大会が一番多く、全部門で8つの団体が自由曲として取り上げています。

どの曲をセレクトするかで演奏団体の個性も出ますよね?

派手な曲も冒頭や終わりには配置したいですが、個人的には「ガイーヌのアダージョ」「子守歌」などもしっとりとして聴かせどころかな?と思ったりします。

ハチャトゥリアン:バレエ音楽『ガイーヌ』より「レズギンカ」(編曲:林紀人)

森下治郎指揮:近畿大学吹奏楽部

バルトーク:バレエ音楽「中国の不思議な役人」

【第7位】バルトーク:バレエ音楽「中国の不思議な役人」 金賞26:銀賞14:銅賞10:計50

第7位は「中国の不思議な役人」、2000年以降コンスタントに全国大会で取り上げられている作品ですが、特に高校の部23回、大学の部14回の順で多く演奏されています。

これも難解な作品で、ともすれば音符を追うので精一杯になりがちですよね?

こんな作品を見事に表現する学生の方々は本当に素晴らしいと思います。毎日の厳しい練習の賜物なのでしょうね。

原作の物語はかなり退廃的かつ官能的な内容になっています。中高生の方々にはちょっと説明が難しいのではと先生方のご苦労をお察しいたします。

組曲版しか聴いたことがない方は全曲版、そしてバレエの舞台作品を見るともっと理解が深まるかも知れません。オーケストラ版の演奏は詳細解説でご紹介していますので、ぜひそちらの方もお読みください。

バルトーク:バレエ音楽「中国の不思議な役人」より(編曲:上埜孝)

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

バルトーク:バレエ音楽「中国の不思議な役人」詳細解説

バッハ:トッカータとフーガ ニ短調

【第8位】J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 金賞14:銀賞18:銅賞8:他7:計47

第8位はバッハの名曲「トッカータとフーガ」、最近は全国大会で演奏される機会は少なくなりましたが、昭和の全国大会ではよく登場しました。その他の7は吹奏楽コンクールがまだ順位制の頃のデータ不明などの数字です。

昔、この曲が流行ったのはやはり「パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団」の録音の影響が大きいのではないでしょうか。

かく言う私も中学生の頃にギャルドが演奏した「トッカータとフーガ」の録音テープを擦り切れるまで聴いた覚えがあります。ちなみにメタルテープに録音していましたが・・・今の若い方には意味不明ですね。(涙)

ロジェ・ブトリーの前の楽長フランソワ=ジュリアン・ブランの指揮で録音された「トッカータとフーガ」はパイプオルガンを彷彿とさせる圧倒的な迫力と豊かな響きに包まれた名演で、当時のギャルドの演奏を聴いたことがない方にはぜひ一度聴いていただきたいものです。

ちなみにこのクラシックファンならずとも知っているであろう「トッカータとフーガ」は、かねてよりバッハの作ではないと言う偽作説もつきまとう作品です。

そのあたりの経緯と原曲のオルガンでの演奏は詳細解説の方でご覧ください。

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調より(編曲:藤田玄播)

高橋友子指揮:聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校吹奏楽部

J.S.バッハ:「トッカータとフーガ ニ短調」詳細解説

レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」

【第9位】レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」 金賞21:銀賞15:銅賞8:計44

第9位は「シバの女王ベルキス」、この作品は昭和から平成に変わるころから急速に流行りだし、1993年には全部門で8団体が自由曲に選ぶと言う人気ぶりを見せます。

金管楽器が奏でる圧倒的な迫力のサウンドは吹奏楽に向いていますよね?E♭クラ奏者の方も腕の見せどころです。

最近ではオーケストラの演奏会でもたまに取り上げられる機会があるようですが、吹奏楽での演奏の機会の方が圧倒的に多い作品です。

吹奏楽の編曲作品から人気に火が点く、こんなパターンもありだと思います。原曲のオーケストラ版の演奏は詳細記事の方でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」(編曲:木村吉宏)
1.ソロモンの夢(00:18)
2.戦いの踊り(08:50)
3.夜明けのベルキスの踊り(11:42)
4.狂宴の踊り(19:25)

José Alfredo Sánchez Murcia指揮:Banda de Música de Salcedo

レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」詳細解説

ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」

【第10位】ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」 金賞14:銀賞19:銅賞6:計39

第10位はファリャ「三角帽子」、39回の登場回数の内22回は中学の部で取り上げられています。

この作品もオーケストラの演奏会では、スペインの指揮者やオケ、「スペイン」をテーマにしたコンサートでないとなかなか取り上げられる機会の少ない作品です。

原作はストラヴィンスキーに一連のバレエ作品を依頼した、高名なバレエ・リュスロシア・バレエ団)の主宰者ディアギレフの求めに応じてバレエ作品にも改変されています。

「粉屋の踊り」の有名なソロはホルンとイングリッシュ・ホルンの腕の見せどころですね。

ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」より(編曲:森田 一浩)
1.序奏-昼下がり(00:33)
2.粉屋の女房の踊り(03:04)
3.隣人たちの踊り(05:45)
4.粉屋の踊り(09:20)
5.終幕の踊り(12:21)

下野竜也指揮:広島ウインドオーケストラ

ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」

【第11位】ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」 金賞10:銀賞18:銅賞9:他1:計38

第11位はストラヴィンスキー「火の鳥」、この曲も数ある曲からセレクトすることが出来ますが、大抵は「魔王カスチェイの凶悪な踊り」「子守歌」「終曲」からセレクトされますね。

ストラヴィンスキーが世に知られるきっかけにもなったこの作品は物語も「白鳥の湖」的でわかりやすく、音楽も後期の作品に比べると親しみやすい旋律が多いような気がします。

原曲を聴いたことがない方は組曲版や全曲版、バレエ作品などを見てみるとさらに理解が深まると思いますよ。あらすじも詳細記事の方に書いていますので、ぜひご覧ください。

ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」より(編曲:G.M.デューカー)
・魔王カスチェイの凶悪な踊り(00:15)
・終曲(04:25)

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」詳細解説

コダーイ:ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲

【第12位】コダーイ:ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲 金賞13:銀賞13:銅賞11:計37

第12位はコダーイの「くじゃく」による変奏曲、この作品もクラシックのコンサートではまずお目にかかることのない作品ですね。

吹奏楽を聴かない方は余程のクラシック通の方でない限り、なかなか聴くことのない作品ではないですかね?

1990年代後半に多く取り上げられていますが、個人的には「出場すれば金」の状態が続いていた1995年の楊鴻泰指揮、西宮市吹奏楽団の演奏が強く印象に残っています。

コダーイ:ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(編曲:森田一浩)

庵 吾朗指揮:六角橋吹奏楽団

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」

【第12位】プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 金賞13:銀賞12:銅賞12:計37

コダーイと並んで同数の第12位は「ロメオとジュリエット」、原作は言うまでもなくシェイクスピアの悲劇「ロメオとジュリエット」、チャイコフスキーベルリオーズもこの作品をテーマにした楽曲を遺しています。

この作品もコンクールで演奏するにはセレクトの妙もあって面白いですよね。でも演奏効果ありきで原作のストーリ展開と関係なく音楽が進行するのも少し悲しいかも?と個人的には思ったりもします。

全国大会37回の登場の内、高校の部が16,中学の部が11と大半を占めています。オーケストラでの演奏動画は詳細解説の方をご覧ください。

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」
・モンタギュー家とキャピュレット家(00:35)
・仮面舞踏会(04:40)
・ジュリエットの墓の前(06:55)
・アンティル諸島から来た娘たちの踊り(13:15)
・タイボルトの死(15:35)

本名徹次指揮:洗足学園音楽大学ブルー・タイ ウインド・アンサンブル

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」詳細解説

ベルリオーズ「幻想交響曲」

【第14位】ベルリオーズ「幻想交響曲」 金賞8:銀賞15:銅賞10:他3:計36

第14位は「幻想交響曲」、後のロマン派の作曲家たちにも大きな影響を与えた重要な作品です。ベルリオーズの卓越した管弦楽法で描かれる作品だけに吹奏楽で表現するのもなかなか難しい作品ですね。

取り上げらえるのは大抵は終楽章だと思いますが、36回の内、金賞は8回と評価は厳しいものになっています。

原作はベルリオーズ自身の恋愛体験を投影した作品で、ベルリオーズのある種、偏狂的な恋愛感情と女性遍歴を垣間見ることで作品のとらえ方も少し変わってくるのではないでしょうか。

もし全曲を通して聴いたことがないと言う方は、ぜひ詳細解説の方で聴いてみて下さい。

ベルリオーズ「幻想交響曲」より第5楽章(編曲:M.ロジャース)

※こちらの動画は埋め込みが出来ません。上記のタイトルをクリックしていただき、リンク先のyou tubeでご覧ください。

林 紀人指揮:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

ベルリオーズ「幻想交響曲」詳細解説

イベール:交響組曲「寄港地」

【第15位】イベール:交響組曲「寄港地」 金賞14:銀賞13:銅賞6:他1:計34

第15位はイベール「寄港地」、こちらもクラシックのコンサートではなかなか聴くことの出来ないプログラムですね。

登場回数34回の内、中学の部が17、高校の部が12と大半を占めています・

フルート愛好家の管理人としてはイベール言えば真っ先に「フルート協奏曲」が頭に浮かぶのですが、この作品はイベールがローマ大賞受賞の特典として与えられるローマ留学中に作曲された作品でイベールの出世作です。

チョイスされるのは第2曲「チュニス ― ネフタ」第3曲「バレンシア」が大半ですね。

イベール:交響組曲「寄港地」より第3曲「バレンシア」

佐渡裕指揮:コンセール・ラムルー管弦楽団

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」

【第15位】プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」 金賞12:銅賞17:他5:計34

イベールと並んで登場回数34回の第15位はプッチーニの歌劇「トゥーランドット」、全国大会ではじめて登場したのが1999年、この20年間に演奏機会が増えた作品です。

34回の内、職場・一般の部が2回、大学の部は0回と言うのも特徴です。2006年にこの作品を演奏して話題をさらった埼玉栄高校は2011年には新たに編曲を委嘱して再び取り上げると言うこだわりを見せています。

ちなみに2006年は後藤洋編曲版2011年は宍倉晃編曲版です。

いずれにしてもオペラ作品の場合、序曲ではなくオペラ・アリアを吹奏楽で表現すると言うのはなかなか難しいもので勇気のいるチャレンジだと関心させられるばかりです。

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より

山下 一史指揮:洗足学園音楽大学ブルー・タイ ウインド・アンサンブル

ヴェルディ:歌劇「運命の力」

【第17位】ヴェルディ:歌劇「運命の力」 金賞11:銀賞8:銅賞8:他4:計31

第17位はヴェルディ歌劇「運命の力」、こちらは同じオペラ作品でも序曲です。冒頭に奏でられる3つの音はドラマティックでインパクト十分ですね。有名な作品だけに、この音のさばき方一つをとってもバンドの個性や評価の方向性が出てしまいそうな気もします。

昭和の時代には盛んに演奏されましたが、残念なことに1998年を最後に全国大会で取り上げられた記録はありません。

目新しい作品に関心が向きがちな吹奏楽コンクールの中で、今、新たに取り上げてみるのも面白いかも知れませんよ?

原曲のオーケストラ版の演奏も詳細記事の方でご紹介していますので、ぜひどうぞ!

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲

佐藤親悟指揮:警視庁音楽隊

ヴェルディ:歌劇「運命の力」詳細解説

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」

【第18位】ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」 金賞9:銀賞7:銅賞8:他6:計30

第18位は同じくヴェルディ歌劇「シチリア島の夕べの祈り」、こちらも序曲ですね。「運力」同様1997年を最後に全国大会では取り上げられていません。

同じイタリア・オペラのプッチーニの作品が取り上げられる機会が増えると共に、ヴェルディを取り上げる機会が減って行くと言うのも面白い現象です。

ちなみに1997年の全国大会で最後にこの曲を取り上げたのは、全国大会での指揮32回と言う鈴木竹男率いる、名門阪急百貨店吹奏楽団でした。

まだ私が学生の頃に所属していた吹奏楽団で1度だけレッスンを受けた鈴木先生の穏やかな人柄が懐かしく思い出されます。

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」

時任康文指揮:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

プッチーニ:歌劇「トスカ」

【第19位】プッチーニ:歌劇「トスカ」 金賞3:銀賞14:銅賞11:計28

第19位はプッチーニ歌劇「トスカ」、ヴェルディ2作品をはさんで再びプッチーニ作品の登場です。

この作品もはじめて全国大会に登場したのが1997年で、それ以後に28回演奏されたわけですがそのうち金賞は3回と評価はなかなか厳しいようです。

ちなみにその3回は1998年「東海大付属第四高」、1999年「アンサンブルリベルテ吹」、2002年「松本市立鎌田中」で、それ以後20年近く金賞は出ていません。

プッチーニのオペラ作品は心に残るオペラ・アリアとドラマテックな作風で印象的です。今後、高い評価を受ける名演奏が聴けるのが楽しみですね。

プッチーニ:歌劇「トスカ」より(編曲:宍倉晃)

奥 章指揮:埼玉栄高等学校吹奏楽部

ボロディン:歌劇「イーゴリ公」

【第20位】ボロディン:歌劇「イーゴリ公」 金賞5:銀賞10:銅賞9:他2:計26

第20位はボロディンの歌劇「イーゴリ公」、まだまだオペラ作品が続けてランクインしますが、こちらは「ダッタン人の踊り」がメインですね。

ちなみにこの作品はボロディンが未完のまま死去したため、リムスキー=コルサコフグラズノフが手を加えて完成されたものです。

2人とも吹奏楽コンクールでもよく取り上げられる作曲家です。

第2幕で演奏される「ダッタン人の踊り」の有名なオーボエソロは聴かせどころですね。

ボロディン:歌劇『イーゴリ公』より「ダッタン人の踊り」(編曲:M.ハインズリー)

汐澤安彦指揮:洗足学園音楽大学アンサンブル・ウィンド・シンフォニカ

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲

【第20位】リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 金賞9:銀賞10:銅賞6:他1:計26

26回の登場で同数の第20位はリムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」、26回の内、実に19回を中学の部が占めています。

原曲はスペイン民謡集の旋律を題材にした5つの部分が切れ目なく演奏されます。第1曲、第3曲の「アルボラーダ」はクラリネットのソロが大変印象的ですが、ソロを演奏する奏者にとっては緊張の一瞬ですね。

原曲のオーケストラ版の演奏は詳細記事の方でご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲(編曲:Alan C. Sierichs)
1.「アルボラーダ」(00:00)
2.「変奏曲」(01:13)
3.「アルボラーダ」(06:05)
4.「シェーナとジプシーの歌」(07:20)
5.「アストゥリア地方のファンダンゴ」(12:00)

ローウェル・グレアム指揮:アメリカ空軍バンド

リムスキー=コルサコフ:「スペイン奇想曲」詳細解説

オルフ:カルミナ・ブラーナ

【第20位】オルフ:カルミナ・ブラーナ 金賞7:銀賞13:銅賞6:計26

こちらも同数で第20位はオルフ「カルミナ・ブラーナ」、全国大会に初登場したのは1984年のことですが、1990年の近畿大学が金賞を受賞した演奏が余程インパクトがあったのか、翌1991年には一挙に7団体が競合する人気の作品となりました。

全曲を通して大半の部分が合唱か声楽の独唱を伴う作品なので、自ずと歌唱部分を吹奏楽で演奏することになります。それだけに表現の大変難しい作品と言えるのではないでしょうか。

全曲を通して聴いたことのない方はぜひ詳細解説の方でお聴きいただければと思います。

オルフ:「カルミナ・ブラーナより(編曲:J.クランス)

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

オルフ:「カルミナ・ブラーナ」詳細解説

レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」

【第23位】レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」 金賞14:銀賞9:銅賞2:計25

第23位はレスピーギの交響詩「ローマの噴水」、そろそろ「ローマの松」の登場かな?と思っていましたが、ローマ三部作からは「噴水」が次にランクインしました。

登場回数25回の内、14回が金賞と高い評価を受けています。勇壮な金管楽器の旋律ときらめくような木管楽器の響き、レスピーギらしい色彩感溢れるオーケストレーションが魅力の作品です。

原曲のオーケストラ版も素晴らしいので、詳細記事の方でぜひ聴いてみて下さい。

レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」より
第1部:夜明けのジュリアの谷の噴水(0:00)
第2部:朝のトリトンの噴水(2:17)
第3部:真昼のトレヴィの泉(3:53)
第4部:黄昏のメディチ荘の噴水(6:40​)

酒井道明指揮:富山県立高岡商業高等学校吹奏楽部

レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」詳細解説

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

【第23位】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 金賞9:銀賞8:銅賞4:他4:計25

同数の第23位はショスタコ5番「革命」です。既に昭和40年代には吹奏楽コンクールで取り上げられていますが、何の影響なのでしょうか?

昭和33年に始まった関西ローカルの人気テレビドラマシリーズ「部長刑事」のオープニングBGMとして印象的に使われていたので、関西圏の方には当時からかなり認知されていた作品ですが、吹奏楽とは結び付かないかな?

吹奏楽コンクールで取り上げられるのは基本的に終楽章だと思いますが、全曲通して聴くとまた違う魅力を味わえます。

オーケストラによる全曲演奏は詳細記事の方でご紹介していますので、こちらもぜひ聴いてみて下さいね。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

R. Hamilton指揮:The United States Army Field Band

ショスタコーヴィチ:「交響曲第5番」詳細解説

アーノルド:第六の幸福をもたらす宿

【第23位】アーノルド:第六の幸福をもたらす宿 金賞9:銀賞9:銅賞7:計25

こちらも同数で第23位はアーノルド「第六の幸福をもたらす宿」、原作は映画音楽なのでクラシックのコンサートではまず聴くことのない作品ですね。

25回中16回は中学の部で演奏されていて、初登場は1996年、佐川聖二指揮文教大学吹奏楽部による演奏です。

ロンドン・フィルで首席トランペット奏者としても活躍したアーノルドらしい、管楽器が活躍するドラマティックな作品です。

アーノルド:第六の幸福をもたらす宿

中村睦郎指揮:創価グロリア吹奏楽団

リスト:ハンガリー狂詩曲第2番

【第23位】リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 金賞5:銀賞12:銅賞5:他3:計25

こちらも同数で第23位はリスト「ハンガリー狂詩曲第2番」、この作品も「トッカータとフーガ」と同じフランソワ=ジュリアン・ブラン指揮の「パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団」の録音で一世を風靡した楽曲です。

その影響が強く昭和40年代から積極的に取り上げられています。25回の内、中学の部が14回と過半を占めています。

原曲は言うまでもなくピアノの魔術師リストが書いたピアノ曲ですが、管弦楽編曲版はいくつかの版が出ています。クラリネットのソロは腕の見せどころですね。

原曲のピアノ演奏及び管弦楽編曲版の演奏は詳細解説の方でご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

リスト:ハンガリー狂詩曲第2番(編曲:井澗昌樹)

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

リスト:「ハンガリー狂詩曲第2番」詳細解説

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

【第27位】リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 金賞8:銀賞9:銅賞6:他1:計24

第23位が同数で4曲続いたので、次は第27位、リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」、24回の内、中学の部が14回と過半を占めています。

2000年以降は中学の部で2回演奏されただけです。原作は有名な「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)が題材となっています。

物語の語り手である「シェエラザード」のモチーフを演奏するヴァイオリンのソロが重要なポイントになっているので、吹奏楽で表現するのはなかなか難しい作品かも知れませんね。

物語のあらすじやオケ版の演奏動画は詳細解説の方でご紹介しています。ぜひご覧ください。

リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェエラザード』より第4曲「バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲」(編曲:和田信)

水科克夫指揮:航空中央音楽隊

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」詳細解説

ワーグナー:歌劇「ローエングリン」

【第28位】ワーグナー:歌劇「ローエングリン」 金賞4:銀賞5:銅賞6:他8:計23

第28位はワーグナー楽劇「ローエングリン」、この作品の場合「ローエングリン」と言うよりも「エルザの大聖堂への行列」と言った方が良いくらいこの曲が大半を占めていますが、近年の演奏ではそれ以外の楽曲も取り上げられています。

その他の「8」が示すように昭和40年代の演奏回数が多い作品ですが、今でも吹奏楽でよく演奏される楽曲です。

次にご紹介する演奏動画は2019年の浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバルでの演奏の様子ですが、フルート:マチュー・デュフォー、ペーター=ルーカス・グラーフ、オーボエ:吉井瑞穂、サックス:須川展也、ジャン=イヴ・フルモーと木管楽器だけざっと見渡してもかなりヤバいメンバーが揃ってますね!

ワーグナー:『ローエングリンより「エルザの大聖堂への行列」(編曲:保科洋)

大井剛史指揮:浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバル第25回記念吹奏楽団

コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」

【第29位】コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 金賞10:銀賞8:銅賞4:他1:計23

第29位はコダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」、この作品もクラシックのコンサートではなかなかお目にかかることのない作品です。

全国大会では昭和40年代から取り上げられていますが、2002年を最後に全国大会での演奏記録はありません。

原曲は6曲から成る管弦楽組曲です。吹奏楽コンクールでも再評価されて、クラシックの世界に「コダーイ」の作品が広まる火付け役となるとうれしいですね。

コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」より(編曲:加養浩幸)
Ⅱ:ウィーンの音楽時計(00:10)
Ⅳ:ナポレオンとの戦い(2:28)
Ⅵ:皇帝たちの入場(6:44)

加養浩幸指揮:千葉県立幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部

チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」

【第30位】チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」 金賞4:銀賞11:銅賞6:計21

第30位はチャイコフスキー「白鳥の湖」、登場回数21回の内、金賞が4回と評価はなかなか厳しい感じです。やはりこういう原曲のイメージが強すぎる作品と言うのは表現するのも難しいのかも知れませんね。

原曲の方はチャイコフスキーを代表するバレエ作品ですが、意外なことにこの作品が評価されたのはチャイコフスキーが亡くなった後のことで、存命中は上演機会にもあまり恵まれませんでした。

その辺の経緯や物語のあらすじ、原曲のバレエ作品の動画も詳細解説の方でご紹介しています。作品の理解を深めるためにもぜひご覧いただければと思います。

チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」より(編曲:近藤久敦)

近藤久敦指揮:横浜ブラスオルケスター

チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」詳細解説

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まとめ

今回の記事では全日本吹奏楽コンクール全国大会で演奏されたクラシック編曲作品の演奏回数上位30作品をまとめてご紹介させていただきました。

いかがでしたでしょうか?お楽しみいただけましたでしょうか?

私自身、吹奏楽少年だった中高生の頃は吹奏楽版の演奏は聴いても、オリジナルの演奏は知らないものもたくさんありました。

特に原曲がオペラ作品やバレエ作品の場合はその傾向が顕著でした。

この記事をご覧いただいている方の中にもそういった方がいらしゃれば、ぜひオリジナルの作品も聴いていただけるとまた違う味わいや魅力、そして作品に対する理解が深まることと思います。

そしてもっともっとその作品を好きになることが出来ると思います。

この記事が皆様のお役に少しでも立てることを願っております。

管理人:piccolo

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