ベルリオーズ「幻想交響曲」

2020年5月17日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

彼は夢の中で愛していた彼女を殺し、死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。行列は行進曲にあわせて前進し、その行進曲は時に暗く荒々しく、時に華やかに厳かになる。その中で鈍く重い足音に切れ目なく続くより騒々しい轟音。ついに、固定観念が再び一瞬現われるが、それはあたかも最後の愛の思いのように死の一撃によって遮られる。

引用:「幻想交響曲」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

これは作曲者自身が記したプログラム・ノートです。恋に絶望した若い芸術家がアヘンを吸って夢を見ている場面です。

まずはこの第4楽章「断頭台への行進」をダイジェストで聴いてみましょう。

ヤニック・ネゼ=セガン指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

幻想交響曲作品14はフランスの作曲家、エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)が1830年に作曲した交響曲です。

1827年、パリ音楽院に入学しフランスの作曲家の登竜門として有名なローマ大賞に挑戦していたベルリオーズはパリでイギリスのシェイクスピア劇団による「ハムレット」を観る機会を得ます。

そこでオフィーリア役を演じる女優ハリエット・スミスソン(1800-1854)に一目惚れしたベルリオーズは手紙を出したり、面会を申し込むなど猛烈なアプローチを始めます。

しかしこの想いはベルリオーズの一方的なもので、その歪んだともいえる激しい情念はやがて交響曲と言う形で昇華していきます。

1855年に作曲者自身が記したプログラムには次のように書いてあります。

病的な感受性と激しい想像力に富んだ若い音楽家が、恋の悩みによる絶望の発作からアヘンによる服毒自殺を図る。麻酔薬の量は、死に至らしめるには足りず、彼は重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見、その中で感覚、感情、記憶が、彼の病んだ脳の中に観念となって、そして音楽的な映像となって現われる。愛する人その人が、一つの旋律となって、そしてあたかも固定観念のように現われ、そこかしこに見出され、聞えてくる。

引用:「幻想交響曲」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

アヘンで服毒自殺を図る若き音楽家とはもちろんベルリオーズ自身を投影していて、作品には「ある芸術家の生涯のエピソード」と言う副題が付けられています。

この作品が作曲された1830年にはベルリオーズはピアニストのマリー・モークと恋愛関係にありました。

彼女とは婚約にまで至りますが、翌1831年に彼女の母親によって破局させられることになります。

モーク母娘を殺して自分も死のうとしたほどの激情に駆られたベルリオーズでしたが結局は思いとどまり、その後スミスソンと運命的な再会を果たすことになります。

結局1833年にスミスソンと結婚し当初の想いを果たしたベルリオーズでしたが、ほどなく二人の関係は冷え込みやがて別居することになります。

1845年の出版に際しては作曲家自身によって解説されたプログラム・ノートを配布するように要請されています。

ベルリオーズ「幻想交響曲」の解説

第1楽章「夢、情熱」

冒頭の静かで物悲しい序奏は恋する人に出会うまでの漠然とした憂鬱でしょうか。

ベルリオーズがスミスソンに出会うのは23歳の時、心を焦がす激しい恋情、それと交差する嫉妬などが描写されています。最後は我に返り敬虔な気持ちを思い返したかのように静かに終わります。

第2楽章「舞踏会」

舞踏会のざわめきの中で再び愛する人と出会います。

ハープの美しい音色に乗って舞踏会が始まります。軽やかな舞踏会の旋律の中に夢に見た彼女があらわれます。

第3楽章「野の風景」

舞台上のイングリッシュホルン(コーラングレ)と舞台裏のオーボエが演奏する牧歌の二重奏。舞台裏のオーボエの牧歌は遠くから風に乗って聴こえてくるかのようです。

しばし訪れた心の平安のようですが、再び彼の心に不安が押し寄せます。最初は二重奏を奏でていた旋律が最後は遠雷が響く中イングリッシュホルンのみで奏されます。(35:47)

それはあたかも答えてくれる人がいない孤独を感じているかのようです。プログラム・ノートには次のように記されています。

1人の羊飼いがまた素朴な旋律を吹く。もう1人は、もはや答えない。日が沈む…… 遠くの雷鳴…… 孤独…… 静寂……

引用:「幻想交響曲」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

第4楽章「断頭台への行進」

嫉妬に狂った芸術家が、夢の中で愛する人を殺して死刑を宣告され、刑場へ連れていかれる場面です。

曲の最後はギロチンが首をはねる打撃音が響き、ファンファーレで締めくくられます。

フランス革命によりルイ16世と王妃マリー・アントワネットがギロチンにより処刑されたのは1793年のこと。当時はまだ記憶に新しかったことでしょう。

そう考えると相当センセーショナルな音楽であったように思いませんか?

第5楽章「サバトの夜の夢」

彼はサバト(魔女の饗宴)に自分を見出す。彼の周りには亡霊、魔法使い、あらゆる種類の化け物からなるぞっとするような一団が、彼の葬儀のために集まっている。奇怪な音、うめき声、ケタケタ笑う声、遠くの叫び声に他の叫びが応えるようだ。愛する旋律が再び現われる。しかしそれはかつての気品とつつしみを失っている。もはや醜悪で、野卑で、グロテスクな舞踏の旋律に過ぎない。彼女がサバトにやってきたのだ…… 彼女の到着にあがる歓喜のわめき声…… 彼女が悪魔の大饗宴に加わる…… 弔鐘、滑稽な怒りの日のパロディ。サバトのロンド。サバトのロンドと怒りの日がいっしょくたに。

引用:「幻想交響曲」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

終楽章はまだ悪夢の霧の中を彷徨っているかのような不気味な響きで幕を開けます。

魔女の饗宴がはじまりそこにやってきた愛する彼女も最早狂ってしまっているのか、はたまた狂っているのは自分自身なのか、あらゆる喧噪の中で様々な音楽が交差します。

弔いの鐘が響き低音楽器による死者のためのミサ「怒りの日」が奏されます。(46:30)

狂乱の饗宴は激しさを増し、熱狂の内に幕を閉じます。

ベルリオーズ「幻想交響曲」のyoutube動画

ベルリオーズ:幻想交響曲作品14
第1楽章(0:30) 第2楽章(15:00) 第3楽章(21:20) 第4楽章(38:25) 第5楽章(43:10)

ステファン・デネブ指揮:シカゴ交響楽団

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ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
シャルル・ミュンシュ指揮
パリ管弦楽団
録音:1967年

「幻想交響曲」を得意としたミュンシュの複数ある録音の中でも屈指の名演です。

パリ管弦楽団の初代音楽監督に就任して最初の演奏会で取り上げた際の録音です。

録音も古くアンサンブルは荒々しい面も感じますが、ベルリオーズが内包する熱と狂気を感じさせる名演です。

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参考資料:後藤真理子監修「大人の観劇クラシック音楽ガイド」成美堂出版