ショスタコーヴィチ「交響曲第5番《革命》」【解説と名盤】

2020年9月21日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

木管楽器が奏でる独特の甲高いトリルの響きと力強いティンパニのリズム、それに続く金管楽器の重低音の響きは迫力満点です!

関西のご年配の方々の中にはテレビドラマ「部長刑事」のオープニング曲として耳にされたことのある方も多いと思います。

まずはこの印象的な第4楽章の冒頭部分をダイジェストで聴いてみましょう。

佐渡裕指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ご紹介した動画は2011年5月20日に開催された佐渡裕の自身初となるベルリン・フィル定期演奏会での公演の様子です。

こちらの公演はブルーレイ化され発売されています。

作曲の背景

交響曲第5番ニ短調作品47「革命」はソビエトの作曲家、ドミートリイショスタコーヴィチ(1906-1975)が1937年に作曲した交響曲です。

1936年1月28日、旧ソビエト連邦共産党の機関紙「プラウダ」紙上に、ショスタコーヴィチが作曲したオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」に関して「音楽のかわりに荒唐無稽」と題された社説が掲載されることになります。

さらに翌2月6日にはバレエ「明るい小川」が「バレエの偽善」と言う表題の元に立て続けに厳しい批判にさらされることになります。

「プラウダ批判」と呼ばれるこれらの批判はただ単なる新聞紙の社説とは次元が異なり、「社会主義リアリズム」の名のもとにあらゆる芸術がソビエト共産党の意に即した作品でなければならない時代にあっては決して大袈裟な話ではなくショスタコーヴィチの生命に係わる問題でもありました。

現に「形式においては民族的、内容においては社会主義的」と言う独裁者スターリンの方針に反したとして多くの芸術家が自己批判を余儀なくされ、命を奪われた人々も多く存在します。

この「プラウダ批判」を機にショスタコーヴィチの作品は演奏される機会を失い、一緒に粛清されるのを恐れ、行動を共にする者もいなくなりました。

この1936年、ショスタコーヴィチは既に交響曲第4番の作曲に取り掛かっていて5月には完成して、12月には初演の予定が決まっていましたが、当局の意向に沿わないことを恐れたためかショスタコーヴィチ自身がこの初演を撤回しています。

そんな危機的な状況の中にあった翌1937年の4月から7月に作曲されたのが今回ご紹介する交響曲第5番です。

一般的にはプラウダ批判に対する名誉回復を図った作品と評価されることが多く、中には体制に迎合するために書かれた妥協の産物などと言う辛辣な批評もあるようですが、当時のソ連の社会情勢下にあっては次の作品での名誉回復が自身の生命を左右する重要な作品になるであろうことはショスタコーヴィチ自身が最も痛切に感じていたことであろうと思います。

かくして1937年11月21日、十月革命20周年の記念演奏会でエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団(現サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団)によって行われた初演は大成功に終わり、ショスタコーヴィチは以降徐々に名誉を回復していくことになります。

日本では「革命」の副題が付けられるケースがありますが、ショスタコーヴィチ自身はそのような副題を付けておらず、日本国内のみでの愛称のようなものです。

ショスタコーヴィチの死から4年後の1979年、音楽学者のソロモン・ヴォルコフ(1944-)が「ショスタコーヴィチの証言」と言う書籍を発表します。

ショスタコーヴィチ自身から取材した内容に基づき、ソ連国外でその死後に出版すると言う条件の下に許可を得たとされる回想録の中で本作品の終楽章ことを「強制された歓喜」「鞭打たれ、喜べ、それがおまえたちの仕事だと命令されるのと同じだ」と表現し、初演を指揮したムラヴィンスキーさえもそうしたことを理解していないと辛辣に批判しています。

この「ショスタコーヴィチの証言」には内容的にどの程度ショスタコーヴィチの実際の証言と真意を含んでいるかは疑義を唱える声も多く、内容を丸呑みにすることは出来ないかもしれませんが、作曲当時のショスタコーヴィチが置かれていた立場を考えると作品の中に複雑な意味合いが含まれていることは間違いないことと思われます。

第1にショスタコーヴィチがスターリン体制下の社会主義リアリズムの方針に心から共感して創作活動を行っていたとは考えにくいこと。

第2に反面1917年に起こったロシア革命から激動の20年間に青年期を過ごしてきたショスタコーヴィチがソヴィエト連邦に対して愛国的な感情を全く持っていなかったとも考えにくい点。

第3に「プラウダ批判」により危うくなった立場を回避することがショスタコーヴィチにとって今後の創作活動を続けていくためにも何よりも先決事項であったこと。

これらのことを考えると当局の意向に沿った作品を作曲しながらも、その中に何らかのショスタコーヴィチ自身の秘められた強い思いが込められたとしても不思議ではないような気もします。

ショスタコーヴィチ「交響曲第5番《革命》」の解説

第1楽章:Moderato – Allegro non troppo

冒頭、弦楽器が奏でる劇的で悲壮な旋律が強烈な印象を与えて始まります。

暗雲立ち込めるかのような不気味で不安な雰囲気が第1楽章全体を支配します。

ショスタコーヴィチの音の運びと和音の響きはとても特徴的で、何度か聴く間に初めて聴く他の作品も「ショスタコ?」と感じるようになるのではないでしょうか。

ピアノが力強く低音を刻むとホルンが行軍するかのように低い旋律を奏で、これにトランペットが呼応します。(8:05)

この辺りから曲に激しさが加わり、行進曲風の楽句をはさみながら激烈に展開していきます。

激しさは徐々に増しクライマックスに達すると、一旦静けさを取り戻します。

フルートとホルンが冒頭の旋律の変奏を奏でるとクラリネットとオーボエの旋律を導きながら、最後はヴァイオリンとチェレスタのソロで静かに第1楽章の幕を下ろします。

第2楽章:Allegretto

やや軽妙な舞曲風の楽章です。木管楽器が演奏する旋律はどこかおどけているようで第1楽章とは雰囲気が一変します。

ピッコロやクラリネットの響きにとても特徴があり、悲壮な雰囲気の漂う本作品の中で唯一軽妙な雰囲気を醸し出す楽章になっています。

第3楽章:Largo

再び暗く悲しい雰囲気が曲を支配します。それはまるで弦楽器が奏でる葬送の音楽のようで、哀しみや死と言う言葉を連想させます。

漂うフルートの音色は私には彷徨う死者の魂のように感じられます。

弦楽器による悲哀に満ちた旋律は徐々に高揚し、やがて静かに深く沈んでいきます。

最後は次の楽章を暗示するような激情を示した後、静かに終わります。

激烈な音楽が印象的な本作ですが、こうした緩徐楽章でも大変印象深く素晴らしい音楽が展開されています。

第4楽章:Allegro non troppo

木管楽器が奏でる独特の甲高いトリルの響きと力強いティンパニのリズムに続き、重低音の金管楽器群が主題を堂々と奏でます。

これまでの暗雲を振り払うかのように力強く激烈な楽章ですが、ベートーヴェンやブラームスの交響曲にみられるような輝かしい印象はなく、苛烈な運命を乗り越え、苦しみぬいて勝ち取ったかのような、日本で親しまれる「革命」の副題がぴったりの曲想です。

曲の最後の部分は出版されている版によって速度表示が異なり、指揮者の解釈の違いで様々なテンポの録音が残されています。

残念ながら作曲者の自筆譜が残されておらず、確認する手立てはありませんが、いろんな盤を聴き比べてみるのも楽しいかも知れませんね。

ショスタコーヴィチの作品は響きとリズムがとても個性的で音楽の激情性と壮大さも特徴です。

クラシック初心者の方には長く感じられるかもしれませんが、ドラマティックな音楽が好きな方にはおすすめの作品です。

ショスタコーヴィチ「交響曲第5番《革命》」のyoutube動画

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番ニ短調作品47「革命」
第1楽章(0:26) 第2楽章(17:25) 第3楽章(23:28) 第4楽章(38:15)

ダーヴィト・アフカム(David Afkham)指揮 hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)

ショスタコーヴィチ「交響曲第5番《革命》」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

【収録曲】
ショスタコーヴィチ
交響曲第5番ニ短調 op.47『革命』
交響曲第9番変ホ長調 op.70
劇付随音楽『ハムレット』 op.32
交響曲第8番ハ短調 op.65

アンドリス・ネルソンス指揮
ボストン交響楽団
録音時期:2015年、2016年

ネルソンスが音楽監督を務めるボストン交響楽団とのショスタコーヴィチ交響曲全曲録音シリーズ第2弾となる作品です。

1978年、当時まだソ連領だったラトヴィアに生まれたアンドリス・ネルソンスは、ソビエトの音楽的伝統のもとで教育された、最後の指揮者の一人でもあります。

このアルバムは第59回グラミー賞クラシック部門「ベスト・オーケストラル・パフォーマンス部門」を受賞した名盤です。

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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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