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ラヴェル「スペイン狂詩曲」【解説と名盤】

2020年9月14日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

オーケストラが色彩豊かに描写するのは祭りの喧騒、カスタネットの刻むリズムに乗って明るく陽気な音楽が展開されます。

金管楽器が華やかに響き渡ると熱狂的な祭りは終わりを告げます。

まずはクライマックスの部分をダイジェストで聴いてみましょう。

Juanjo Mena指揮 BBCフィルハーモニック
BBCプロムス 2011より 
収録:ロイヤル・アルバート・ホール 

作曲の背景

スペイン狂詩曲(仏:Rapsodie espagnole)はフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(1875-1937)が1908年に書き上げた管弦楽のための狂詩曲です。

狂詩曲(ラプソディ)は自由な形式で民族的な内容を表現した楽曲です。

パリ音楽院在学中から既に作曲家としてのキャリアをスタートさせたラヴェルは1900年から5回にわたって、フランスの作曲家の登竜門として有名なローマ大賞に応募をします。

しかし結果は芳しいものではなく、1901年に3位入賞したものの、その後は入賞を逃し最後の挑戦となる1905年には予備審査で落選と言う屈辱を味わいます。

しかし、既に著名な作品も作曲し、新進気鋭の作曲家として頭角を現し始めていたラヴェルに対する審査の過程に不公正な力が働いたのではないかと言う疑念の世論が巻き起こり、大きなスキャンダルとなりました。

これにはフランスを代表する作家、ロマン・ロラン(1866-1944)がラヴェルの落選の真意を問う公開質問状を当時の新聞紙に掲載させたことも大きく影響しています。

結果、「ラヴェル事件」とも呼ばれるこのスキャンダルにより、パリ音楽院院長のテオドール・デュボワ(1837-1924)が引責辞任に追い込まれることになります。

ラヴェルがこのスペイン狂詩曲を作曲するのは、そんな周囲の騒動がようやく収まったころのことです。

4曲から成るこの作品のうち、第3曲「ハバネラ」は1895年、ラヴェルが20歳の時に2台のピアノのために作曲されたもので、これに残りの3曲を加えてオーケストラ作品として完成されました。

そもそもラヴェルはスペインに近いバスク地方の生まれで、父親はスイス出身ですが、母親はスペインとフランスに跨るバスク地方の人です。

ラヴェルは生後すぐに家族と共にパリへ移住したため、スペイン風の生活様式の影響をどの程度受けたのか定かではありませんが、母親の存在を通じて少なからずバスク地方、スペイン風の文化に関心を持っていたことは確かなようで、このスペイン狂詩曲の他にもスペインの影響を感じる作品が複数見受けられます。

ラヴェル「スペイン狂詩曲」の解説

第1曲 夜への前奏曲(Prélude à la nuit

冒頭から繰り返される神秘的な4つの音「F-E-D-C♯」は第3曲「ハバネラ」以外の全てに現れ、この作品全体に統一感を出す主要な主題となっています。

この4つの音が循環する中で幻想的な調べが奏でられます。2本のクラリネット、2本のファゴットが奏でる自由な楽句が印象的です。

第2曲 マラゲーニャ(Malagueña

マラゲーニャはスペイン南部のマラガ地方で起こった舞曲です。

低弦の刻む特徴的なリズムに乗って、ミュート(弱音器)を付けたトランペットが舞曲的な旋律を奏でます。

どこか郷愁を誘うようで心が惹かれるコーラングレ(イングリッシュホルン)が奏でる旋律の裏では冒頭の4つの音が繰り返されます。

第3曲 ハバネラ(Habanera

ハバネラは元々キューバの民族舞曲でしたが、スペインに伝えられることで19世紀末には大変人気の舞曲となり、すっかりスペイン舞曲として定着するようになりました。

ゆっくりとした2拍子の特徴的なハバネラのリズムに乗って奏される旋律は激しく踊る陽気な舞曲と言うよりは、夢見心地で気持ちよく身体を揺らしているかのような心地よい舞曲です。

第4曲 祭り(Feria

弦楽器が刻む細かいリズムの乗って、木管楽器が軽やかに五線譜の上を駆け巡ります。

オーケストラが奏でる旋律は熱気を帯び、陽気なスペインの祭りを再現します。

中間部では弦楽器が奏でるけだるいグリッサンド(2つの音を滑らせるように演奏する奏法)の中、コーラングレ(イングリッシュホルン)が幻想的な調べを奏でます。

旋律の終わりがどこか後に作曲されるボレロによく似ていますね?

そしてここでも冒頭の4つの音が印象的に繰り返されます。

いよいよ祭りもクライマックス、オーケストラが華やかに高揚した後、熱狂的に終幕します。

ラヴェル「スペイン狂詩曲」のyoutube動画

ラヴェル スペイン狂詩曲
第1曲 夜への前奏曲(00:05)
第2曲 マラゲーニャ(04:40)
第3曲 ハバネラ(06:55)
第4曲 祭り(09:32)

パブロエラスカサド指揮 hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)

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ラヴェル「スペイン狂詩曲」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
ラヴェル作曲
ボレロ
スペイン狂詩曲
バレエ「マ・メール・ロワ」
亡き王女のためのパヴァーヌ

録音:1985年6月 ロンドン

1979年、ロンドン交響楽団の首席指揮者に就任したクラウディオ・アバド(1933-2014)は1983年、音楽監督に就任します。

アバドとロンドン交響楽団のコンビが黄金期を迎える1985年の録音です。

アバドがカラヤンの後継者としてベルリン・フィルの芸術監督に就任するのは5年後の1990年のことです。

いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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参考資料:新進作曲家ラヴェルの誕生 井上さつき(愛知県立芸術大学音楽学部教授)
世界大百科事典 第2版 株式会社平凡社
日本大百科全書(ニッポニカ) 小学館