バルトーク 中国の不思議な役人

まずはダイジェストで!

ミュート(弱音器)を付けたトロンボーンが演奏する不気味な旋律は物語の主役、中国の役人を象徴しています。

大太鼓のリズムに乗って役人が少女を追いかけ廻す様子が弦楽器によって描写されます。ところどころで挿入されるトロンボーンの叫びが追いかけてくる役人を描写しているようで不気味さを助長します。

金管楽器が加わり、混沌さと狂乱の熱を帯びながらクライマックスを迎えます。まずは組曲版の最後の部分をダイジェストで聴いてみましょう!

ズビン・メータ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

『中国の不思議な役人』はハンガリー出身の作曲家、ベラ・バルトークが作曲したパントマイムのための舞台音楽で、物語はハンガリーの劇作家で脚本家のレンジェル・メニヘールトが1917年に発表した脚本を元にしています。

この脚本を元にした舞台音楽を作曲することにしたバルトークでしたが、第一次世界大戦による混乱等もあり曲が完成したのは1924年のことでした。

しかもグロテスクさとエロティシズムを感じさせる前衛的な物語の内容と音楽のために上演に当たっては相当の紆余曲折があったようで、1926年の初演当初から厳しい批判を受けたようです。

舞台作品としての上演の困難さを痛感したバルトークは演奏会用の作品としてこれからご紹介する組曲版を1927年に完成させます。

後にはバレエ作品としても上演されることになる本作品ですが、今日では舞台作品、特にオリジナルのパントマイムとして上演されることは極めてまれなのではないでしょうか。

しかし、演奏会用の作品としてはバルトークの代表作として取り上げられる機会も多いように思います。

クラシック初心者の方にはやや難解で刺激の強い作品かも知れませんが、物語のあらすじを踏まえたうえで聴くと少し聴きやすいかも知れませんね。

楽曲解説

ここでは物語のあらすじに沿って曲をご紹介していこうと思います。

登場人物は3人の悪党たちと1人の少女、そして少女に誘われる3人の男たちです。

冒頭、弦楽器が慌ただしく駆け回り都会の喧騒を表現するとそこに管楽器が加わりさらに混沌とした雰囲気に包まれます。

そんな都会の片隅のアパートの一室で3人の悪党たちが悪巧みをしています。
この3人の男はドスが利いたかのようなヴィオラの旋律(01:33)、それに続くヴァイオリンのどこか苛立っているような旋律(01:53)、地の底を這うような声を出すトロンボーンとチューバの旋律(02:09)によって表現されています。

男たちは通りすがりの人から金を奪うために、少女に窓辺に立って通行人を誘惑するように強要します。男が執拗に少女に強要する姿がトロンボーンのグリッサンドによって表現されています。(02:19)
※グリッサンドは2つの音の間を滑らせるように演奏する技法。

はじめは拒んでいた少女ですが、結局は男たちに従い仕方なく窓辺に立ち男を誘惑することに。
ためらいながらも男たちを誘う少女の姿がクラリネットのソロで表現されています。(02:54)

ゆったりと宙を彷徨うような旋律が徐々に高揚していくと最初に年老いた男があらわれます。
この部分は金管楽器で表現されていますが、ここでもミュート(弱音器)をつけたトロンボーンのグリッサンドが印象的です。(04:26)

「お金はあるの?」少女は問いかけますが男は文無し、しかし「お金より愛が大切」と年老いた男は執拗に少女に迫ります。(05:09)しかし結局は悪党たちに放り出されてしまいます。

2度目の誘惑もクラリネットによって表現されていますが(06:46)、最初の表現よりもさらに大胆になってある種官能的にも感じます。

その誘惑に乗って現れるのは内気そうな青年。オーボエのソロで表現されます。(08:20)

この青年もやはり文無しですが少女は青年を誘い踊り出します。(09:02)ファゴットからフルートへ引き継がれる旋律が怪しげな雰囲気を醸し出します。
結局はこの男も悪党たちによって放り出される様子が金管楽器によって描写されています。(10:07)

そして、いよいよ3度目の誘惑。(10:24)
クラリネットによる誘惑の旋律はさらに挑発的になります。そしてついにタイトルの中国の役人が現れます。遠くから近づいてくる不気味な中国の役人の姿が徐々に大きくなる金管楽器によって表現されています。(11:44)

徐々に大きくなりながら不気味さを増す金管楽器の旋律が強烈な印象を与える下降グリッサンドを伴いながら中国の役人がいよいよ部屋に入ってきたことを告げます。(12:14)

不気味な中国の役人の姿に怯えながらもためらいがちに誘いの踊りをはじめる少女。(13:50)それを凝視する役人の眼差し。少女の踊りは徐々に高揚し、ついには役人の膝の上に倒れこみます。

興奮に身震いする役人に恐ろしくなった少女は逃げようとしますが、役人との間で追いかけっこになります。(18:00)
ついに少女を捕まえた役人は共に倒れこみます。冒頭のダイジェストでも紹介した通り、組曲版ではここで終曲となります。

演奏会で取り上げられるのはこの組曲版の方が多いかもしれませんが、物語にはまだ続きがありますのでご紹介しておこうと思います。
※上記の()内の時間は次の組曲版の動画での目安です。

悪党たちは物陰から一斉に飛び出すと役人を押さえつけ、金品を奪った上に役人を殺そうと枕や毛布で押さえつけます。

もう死んだだろうと覗き込みますが、じっと少女を見つめている役人に驚きます。

今度はナイフで役人の腹を突きますが、役人は崩れ落ちそうになりながらも、恍惚の眼差しをしたまま少女に飛びかかろうとしします。

恐怖に駆られた悪党たちは役人の編んだ髪を首に巻き付けた上でシャンデリアのフックに吊るします。

シャンデリアは落ちて砕け散りますが、役人は吊るされたまま死なないばかりか青白い不思議な色に輝き始めます。

恐怖におののく悪党たちですが、ここで少女が役人を降ろしてくれるように頼み、求めに応じた悪党たちは役人の編んだ髪をナイフで切ります。

床に崩れ落ちる役人ですが、すぐさま少女に飛びつこうとします。
少女は抗うことなく役人を自分の胸に抱きとめます。少女に抱かれた役人は満足したかのようなうめき声を発しながら徐々に弱っていき、やがて苦悶の内に息絶えます。

組曲版を聴いてみよう!

ペーター・エトヴェシュ指揮 南西ドイツ交響楽団

いかがでしたか?少し難解な雰囲気ですか?それとも刺激的に感じましたか?

オリジナルのパントマイム、もしくはバレエなど舞台作品として鑑賞するとさらに楽しめるかも知れませんね?

全曲版を聴いてみたい方は次の動画をどうぞ!

全曲版を聴いてみよう!

アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮 フランクフルト放送交響楽団

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