リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」【解説と名盤】
目次
「スペイン奇想曲」作曲の背景
スペイン奇想曲作品34はロシアの作曲家、リムスキー=コルサコフ(1844-1908)が1887年に作曲した管弦楽曲です。
リムスキー=コルサコフはロシア海軍兵学校を卒業後、海軍に入隊し、その傍ら作曲活動を行なっていました。
18歳の時に同郷の作曲家バラキエフに出会い、ロシア5人組と呼ばれる作曲家たちの中で切磋琢磨することになります。
このロシア五人組には他にムソルグスキー、ボロディン、キュイの3人がいました。
そしてまだ海軍に所属していた27歳の時にペテルブルク音楽院(現サンクトペテルブルク音楽院)の教授に招かれ就任しますが、その時まだ体系的な作曲技法を習得していなかったコルサコフは猛勉強して作曲理論を身につけたそうです。
「スペイン奇想曲」はスペインの作曲家、ホセ・インセンガがまとめたスペイン民謡集の旋律を題材にした5つの部分が切れ目なく演奏されます。
奇想曲とは気まぐれを意味するイタリア語「カプリッチョ」に由来し、形式にとらわれない気まぐれな音楽を指しています。
「スペイン奇想曲」の解説
1.アルボラーダ
「アルボラーダ」は夜明けと言う意味のスペイン語ですが、アストゥリア(スペイン北部)地方の舞曲で「朝の歌」と言ったニュアンスの曲のようです。
曲の冒頭から燦燦と降り注ぐスペインの太陽のような明るく快活なオーケストラの旋律が響き渡ります。
この旋律はクラリネットのソロに引き継がれ、まるで陽気に踊るように奏でられます。
2.変奏曲(01:16)
熱狂的な1曲目と対照的に穏やかで牧歌的な旋律をホルンが口ずさむように奏で、イングリッシュ・ホルンの哀愁を帯びた響きが心を落ち着かせます。
弦楽器による変奏は力強い中にも異国情緒を湛えていて惹きつけられます。
曲はフルートソロが幻想的に半音階を奏でる中静かに終わります。
3.アルボラーダ(6:22)
1曲目と同じ旋律がさらに華やかに演奏されます。1曲目で活躍したクラリネットのソロはヴァイオリンに引き継がれ、クラリネットはその旋律の裏で華麗なアルペジオ(分散和音)を奏でます。
4.シェーナとジプシーの歌(7:35)
スネアドラム(小太鼓)のロールに続き金管楽器が華やかにファンファーレを奏でます。
ヴァイオリンが異国情緒たっぷりにソロを演奏するとフルート、クラリネット、オーボエ、ハープが次々とソロを演奏します。
オーケストラが演奏する情熱的なジプシーの音楽は熱気を帯びながらクライマックスへと向かっていきます。
5.アストゥリア地方のファンダンゴ(12:17)
3拍子の力強い旋律がオーケストラにより歌われると独奏ヴァイオリンがこの旋律を優雅に変奏します。
木管楽器が踊るように旋律を奏でるとカスタネットが舞踏的な雰囲気をさらに盛り上げます。
最後は冒頭の旋律が現れ速度を増しながら熱狂の内に終曲を迎えます。
「スペイン奇想曲」のyoutube動画
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲作品34
パブロ・エラス=カサド指揮 hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
「スペイン奇想曲」の名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
リムスキー=コルサコフ
交響組曲『シェエラザード』 op.35
スペイン奇想曲 op.34
指揮:シャルル・デュトワ
モントリオール交響楽団
録音:1983年5,9月
少し落ち着いたテンポで熱狂的な雰囲気には欠けるかもしれませんが、スコアが浮き上がって見えるかのような美しく精緻なアンサンブルが魅力の録音です。
ヴァイオリン、フルート、クラリネットのソロも美しく秀逸で、代表作『シェエラザード』も一緒に楽しめる1枚です。
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