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オルフ「カルミナ・ブラーナ」解説とおすすめの名盤

2021年5月30日

目次

まずはダイジェストで聴いてみよう!

運命的なティンパニの一撃に続き、合唱を伴ったオーケストラがドラマティックな開幕を告げます。

曲名はご存じない方もテレビ番組などの様々なシーンでも使われる機会が多いので、聴いたことのある方も多いのではないでしょうか。

まずは冒頭の『おお、運命の女神よ』をダイジェストで聴いてみましょう!

オルフ『カルミナ・ブラーナ』より「おお、運命の女神よ」 

サイモン・ラトル指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

『カルミナ・ブラーナ』はドイツの作曲家カール・オルフ(1895-1982)が1936年、41歳の時に書き上げた世俗カンタータです。

作品には「楽器群と魔術的な場面を伴って歌われる、独唱と合唱の為の世俗的歌曲」と言う副題が付けられていて、本来は舞台形式で演奏される作品ですが、今日ではコンサート形式で演奏されることが専らです。

カンタータとは器楽伴奏を伴う声楽作品のことですが、ドイツにおいてはプロテスタント教会の礼拝において演奏される宗教音楽として発展してきた歴史があります。

18世紀前半には教会カンタータとして多くの作品が作曲されますが、ヨハン・セバスティアン・バッハは中でも代表的な作曲家です。

『カルミナ・ブラーナ』は19世紀のはじめにドイツの南部にあるボイエルン修道院で見つけられた詩歌集の写本で、その内容は恋愛から酒、性に至るまで多岐に渡っていて、その数はおよそ300編にものぼります。

テキストの成立年代は古く11世紀から13世紀にかけて、それまでに伝承されてきたものを写し取られたと見られています。

その中の約4分の1にはネウマ譜と呼ばれる中世ヨーロッパの古い記譜法で書かれた簡単な旋律が付けられていました。

ネウマ譜
グレゴリオ聖歌のネウマ譜
(パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1038066)

オルフはその中から24編を選び、壮大なカンタータ作品として仕上げました。

ソプラノ、テノール、バリトンの独唱。多彩な打楽器群にピアノ、チェレスタを含む大編成のオーケストラに混声合唱と児童合唱まで加えた大規模な作品です。

曲は3部からなっており冒頭とエンディングにダイジェストでご紹介した有名な『おお、運命の女神よ』を配置しています。

1937年、フランクフルトで行われた初演は大成功を修め、一躍、カール・オルフの名前は世間に知られることになりました。

ボイエルン修道院
ボイエルン修道院
Von Patrick Huebgen – Eigenes Werk (Originaltext: eigene Aufnahme), Gemeinfrei, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22225661

オルフ「カルミナ・ブラーナ」解説

全世界の支配者なる運命の女神

おお、運命の女神よ(00:03)

あまりにも有名な冒頭の一節はこの部分だけがテレビのBGMなどで使われることも多く、曲名は知らずとも聴いたことのある方は多いはずです。

おお運命の女神よ!
月のように絶えず姿を変え 満ち欠けをくりかえす者よ
このいやな人生は 気ままに 抑えつけたり なだめたりする
貧乏も権力も 氷のようにとかしてしまう
おぞましく空虚な運命よ お前は回転する車輪のように
悪意に満ち 幸福を無にする
影に隠れて 私を苦しめ 私は丸裸でお前の術中に落ちる
運命は健やかさも力強さも奪い 私を渇望と失望のとりこにする
今こそ時をおかず弦をかき鳴らせ 運命は強者をも打倒するのだから
皆の者 我と共に嘆こう!

ベルリン・フィル、ジルヴェスターコンサート(1989)NHK放送用字幕より引用

運命の女神の痛手を(02:34)

合唱が運命の女神のかつての栄光を振り返り「華やかな至福の時も今は昔」と嘆きつつも「運命の女神の車は回る・・頂にある王よ、破滅を恐れよ」と忠告します。

それを繰り返す弦楽器の旋律と煽り立てるようなオーケストラの響きが印象的です。

春

第1部:初春に

春の愉しい面ざしが(05:45)

鳥のさえずりのような木管楽器に導かれ合唱が春の訪れを歌いますが、それはまだどこかほの暗く冬の面影を残しています。

万物を太陽は整えおさめる(09:37)

バリトンの独唱が「太陽が清く優しく万物を暖め、四月が新しい世界にその姿を示す」と歌いますが、ここでもまだ春の陽気さは感じられません。

「私の心のすべてはお前と共にある、このように恋する者は誰であれ、苦悩の車輪に振り回される」と春の喜びを歌いながらも恋に懊悩する若者を歌う切ない調べが続きます。

見よ、今は楽しい(11:30)

ここにきてようやく合唱が春の喜びを感じさせる明るい曲想の調べを奏でます。心が沸き立つようなティンパニのリズムに乗せて「悲しみはもはや去った!夏は戻り、冬の厳しさは遠ざかる!」と合唱が歌います。

芝生の上で

踊り(14:23)

金管楽器の勇壮な導入に続き、弦楽器が楽しそうな舞曲を奏でます。ヴァイオリンのソリがまるでペアで踊るダンスの様に楽しそうです。

途中に挿入されるティンパニのリズムに乗って可愛く踊るフルートのソロも魅力的です。それに続くホルンからオーケストラに受け継がれる旋律の響きはどこかラテンアメリカの陽気な香りも漂い、いかにも楽し気です。

森は花咲き繁る(16:14)

「森は見事に花開き、木々の葉が萌え出ている」と再び合唱が加わり、春の喜びを歌います。しかしここでも恋焦がれた人がどこかへ行ってしまった悲哀も同時に歌っています。

小間物屋さん、色紅を下さい(19:30)

馬車が走るかのような軽快な鈴(スレイベル)の音に導かれ、合唱が「お店の方、頬紅をくださいな、若い男の恋心を誘うために」と陽気に歌います。

円舞曲: ここで輪を描いて回るもの – おいで、おいで、私の友だち(23:15)

柔らかな響きのオーケストラの円舞曲に続いて、弦楽器のピチカット(指で弦をはじく奏法)に乗って合唱が「ここで輪になって踊るのは、皆、乙女たち、彼女らは夏中男を相手にしない」と歌います。

次いで合唱が「おいで、おいで、僕の恋人、僕は君を待ち焦がれている」と静かに歌います。合唱の繰り返しをブリッジするようにフルートの美しい調べが挿入されます。

たとえこの世界がみな(28:11)

金管楽器の力強いファンファーレとホルンの勇壮な調べに導かれ合唱が「海からライン川まで全世界が我が物だとしても、私は喜んで投げ出すだろう、イギリスの女王様をこの腕に抱けるなら」と壮麗に歌い上げます。

楽曲は再び金管楽器の力強いファンファーレで締めくくられます。

酒場

第2部:酒場で

胸のうちは、抑えようもない(29:04)

激しいトリルと馬が駆けるようなオーケストラのリズムに導かれ、バリトンのソロが「激しい怒りを胸にたぎらせ、私は自問する、吹けば飛ぶようなこの私、風にもてあそばれる木の葉同然」と自嘲気味に歌います。

美徳を忘れ官能を求め、あてもなく漂う若者の言いようもない不安を歌ったような印象的な歌唱です。

昔は湖に住まっていた(31:29)

ファゴットのソロが高音域で奏でる奇怪な旋律に導かれ、テノールがハイトーンで「昔、私は湖に住んでいた、昔は私も美しい姿だった、白鳥だった時には」と歌いだします。

このテノールの独唱に呼応するように合唱が「何てことだ!今じゃ真っ黒にローストされる身!」とシュールな歌詞を返します。

このあたりの歌詞の内容と奇怪な雰囲気のオケの響き、特徴的な打楽器の使い方はとても印象的でこの作品の大きな魅力です。

結局、テノールの独唱はローストされてテーブルの皿に盛られる鳥の心情を特徴的なハイトーンで歌い切ります。

わしは僧院長さまだぞ(34:40)

バリトンの独唱が不気味な歌声で「我こそは怠け者の楽園の僧正!」と歌います。これに合いの手を入れる打楽器はシンバル、鐘、小太鼓などを含む大掛かりなものです。

バリトンの独唱と合唱が交わす劇的なやり取りは「下らぬ運命よ!何をしてくれた!人生の楽しみを根こそぎ持っていきやがって!」と歌う独唱に対して「ああ!何てことだ!」と合唱が呼応しています。

酒場に私がいるときにゃ(36:11)

弦楽器が刻むリズミカルな伴奏に乗って合唱が「我らは居酒屋では来世を気にせず、賭け事に汗を流す」と歌います。

このあたりの歌詞は韻を踏みながらの数え歌の様になっていて、ラテン語に造詣が深ければ、もっと深い味わいがあって面白いと思うのですが、残念ながら私にそこまでの学はありません(笑)

歌詞に合わせて上手くテンポを変える合唱に絶妙のオーケストレーションで合いの手を入れる管楽器や打楽器も聴きどころの一つです。

最後はドラマティックに合唱とオケが交差した後、劇的に終わりを告げます。

王女

第3部:愛の誘い

愛神はどこもかしこも飛び回る(39:13)

フルートの優しく穏やかな調べに導かれ少年合唱が「愛の神は至る所に飛んでいく」と歌います。続いてソプラノの独唱が若い男女の恋心を美しく歌い上げます。

昼間も夜も、何もかもが(42:27)

バリトンの独唱がかなりのハイトーンで恋の嘆きを歌います。それは静かに独白しているようにも聴こえますが、テノールではなく、あえてバリトンで高音域を奏でることで独特の雰囲気を醸し出しています。

少女が立っていた(44:28)

「娘が一人立っていた。赤いブラウスを着て。誰かが触るとブラウスはサラサラ音をたてた」とソプラノ独唱が艶のある歌声で歌います。

オペラ・アリアのような豊かな旋律は一つの歌曲としても成立するような素晴らしい楽曲です。

私の胸をめぐっては(46:11)

バリトンの独唱が「私の心は溜息で一杯だ、あなたの美しさに私の心は痛む」と朗々と歌います。その独唱を煽り立てるように刻まれるピアノとオケに乗って「私の恋人は来ない」と合唱が加わります。

もし若者が乙女と一緒に(48:16)

無伴奏の合唱が「もし若者と娘が二人きりで小部屋に居られたら、それは幸せ」と力強く歌います。

バリトンの独唱が加わり合唱と掛け合いながら愛の睦を表現します。

おいで、おいで、さあきておくれ(49:33)

ピアノが刻む前奏に続いて合唱が「おいで、おいで、来ておくれ」と歌います。ここでも多彩な打楽器が旋律に鮮やかな彩りを添えています。

天秤棒に心をかけて(50:33)

ソプラノの独唱が「迷う心の秤は揺れる」と穏やかに美しく歌います。このあたりからソプラノ独唱の見せ場が続きます。

今こそ愉悦の季節(52:40)

「歓喜の時は来た!おお!乙女たち!若者たちよ、一緒に楽しもう!」と合唱が高らかに朗らかに歌います。カスタネットの軽快なリズムに乗せてバリトンの独唱が「私は全身がはちきれそう、乙女への恋に体中が燃える」と続きます。合唱の繰り返しの後はバリトンが奏でた旋律をソプラノと少年合唱がなぞります。

とても、いとしいお方(54:52)

無伴奏のソプラノ独唱が「いとしい君よ」と歌い上げます。ソプラノの一番の見せ場です。

ブランツィフロール(白い花)とヘレナ

アヴェ、この上なく姿美しい女(55:33)

オーケストラと合唱が壮麗な響きで「ようこそ、最も美しい人」と奏でます。クライマックスにふさわしい感動的な部分です。

全世界の支配者なる運命の女神

おお、運命の女神よ(57:23)

再び冒頭で奏でられた衝撃的でドラマティックな音楽が再現され、この壮大な作品の幕は閉じられます。

カルミナ・ブラーナ写本
ブラヌス写本 (カルミナ・ブラーナ)
匿名 – http://daten.digitale-sammlungen.de/bsb00085130/image_5, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=202349による

※解説中の歌詞の抜粋箇所はいずれも「ベルリン・フィル、ジルヴェスターコンサート(1989)NHK放送用字幕」より引用しています。

※各楽曲のタイトルはウィキペディアでの表記に準拠しております。

オルフ「カルミナ・ブラーナ」YouTube動画

カール・オルフ:「カルミナ・ブラーナ」
全世界の支配者なる運命の女神(00:03)
第1部:初春に(05:45)
芝生の上で(14:23)
第2部:酒場で(29:04)
第3部:愛の誘い(39:13)
ブランツィフロール(白い花)とヘレナ(55:33)
全世界の支配者なる運命の女神(57:23)

ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

piccoloのツボ!ここを聴いて!

このコーナーでは今回ご紹介した作品の中から「ぜひここを聴いて欲しい!」と言う管理人piccoloの独断と偏見によるツボをご紹介しています。

「全曲聴くのは長すぎて・・・」と感じられるクラシック初心者の方はぜひここだけでも聴いてみて下さい。

下記の動画をクリックしていただければ該当箇所から再生できるように設定しています。

今回の「piccoloのツボ!」は作品の終盤、ソプラノ独唱の「とても、いとしいお方」から「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」へ至る部分です。

全曲を通してテノール、バリトン、ソプラノの各独唱に魅力的な見せ場が多いこの作品ですが、中でもこのソプラノの独唱は何度聴いても鳥肌が立ちます。

恋や愛、人生と運命、悦楽と堕落などを歌ってきた内容のクライマックスにふさわしい歌詞と音楽も魅力的です。

まさに「歌い上げる」と言う表現がピッタリのソプラノ独唱に続く「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」の壮麗さがこれまた見事です。

大編成のオーケストラと大合唱が奏でる壮麗な響きに多彩な打楽器群が鮮やかな彩りを添えます。ぜひ聴いていただきたい一節です。

ソプラノ独唱:愛しい君よ、私のすべてを捧げます

合唱:ようこそ、最も美しい人 貴重な宝石
   ようこそ、乙女たちの誇り 栄光の乙女
   ようこそ、この世の光 この世の薔薇
   ブランツィフロールとヘレナ 高貴なヴィーナス!

「ベルリン・フィル、ジルヴェスターコンサート(1989)NHK放送用字幕」より引用

クリスティアン・アルミンク指揮:リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ:チェン・レイス

オルフ「カルミナ・ブラーナ」おすすめの名盤

小澤征爾指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

【収録情報】
小澤征爾指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)
ジョン・エイラー(テノール)
トーマス・ハンプソン(バリトン)
晋友会合唱団
ベルリン・シュターツ&ドム少年合唱団

録音:1988年

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小澤征爾は日本の晋友会合唱団を率いて2度にわたってベルリン・フィルとこの作品を演奏しています。

1回目は1988年6月の定期演奏会、そして2回目は翌1989年の大晦日にベルリン・フィル恒例のジルヴェスターコンサートでこの作品を演奏しています。

定期演奏会での演奏はCDで、ジルヴェスターコンサートの演奏はDVDとして発売されていますが、DVDの方はもう新品は入手困難なようです。

CD版とDVD版はそれぞれソリストのキャストが異なり、特にソプラノはCD版ではエディタ・グルベローヴァ、DVD版ではキャスリーン・バトルと豪華なキャストとなっていてどちらも楽しめます。

個人的には小澤征爾の精緻な指揮とオーケストラがひとつになった姿がとても印象的なDVD版がおすすめです。キャスリーン・バトルの艶のあるなめらかな絹のような美しい声も素晴らしく、ぜひ再販して欲しいものです。

本作品の演奏ではこの作品の持つバーバリズムを感じさせるリズムと響きを強調した演奏も多いですが、この小澤&ベルリン・フィル盤はどちらかと言うとドラマティックで叙情的な雰囲気が強く、テンポ設定も速めでドライブ感もあります。

初めて全曲を聴く方も聴きやすく楽しめる1枚だと思います。

CD版の方では当時42歳のまさに絶頂期と言って良いグルベローヴァの美しい歌声も堪能できます。「ブランツィフロール(白い花)とヘレナ」の前の独唱で聴かせる絹糸のような美しい弱音は鳥肌ものです。

オルフ「カルミナ・ブラーナ」より
小澤征爾指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ:エディタ・グルベローヴァ

オイゲン・ヨッフム指揮:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

【収録情報】
オイゲン・ヨッフム指揮
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
シェーネベルク少年合唱団
録音時期:1967年10月

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名盤の呼び声の高い有名な録音です。個人的には先ほどの小澤&ベルリン・フィル盤が好みですが、どうしても合唱は言語的なニュアンスに限界があるのは致し方ないかとも思います。

この盤では強い歯擦音のような歌唱法に合わせた短く刻んだフレージングのオーケストラが特徴的で、女声合唱も細かいビブラートなど特徴的な演奏をしています。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌唱もかなり刻んだ印象が強く、その素晴らしい歌声には魅了されますが、テノールのゲルハルト・シュトルツェがこの作品の持つ奇怪で野卑な雰囲気を前面に出して歌っているのに対し、ディースカウのあまりにも朗々と気持ちよく響く歌声にややミスマッチを感じます。

全体的には強調されたバーバリズムを感じるリズムとスタッカート気味の特徴的なフレージングが印象的な名盤だと思います。

オルフ「カルミナ・ブラーナ」より
オイゲン・ヨッフム指揮:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

ジェイムズ・レヴァイン指揮:シカゴ交響楽団

【収録情報】
ジェイムズ・レヴァイン指揮
シカゴ交響楽団
ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
フィリップ・クリーチ(テノール)
ベルント・ヴァイクル(バリトン)
シカゴ・シンフォニー・コーラス
グレン・エリン児童合唱団
録音:1984年

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シカゴ響もショルティではなくレヴァインとのコンビで聴くと金管楽器の強烈な響きも含めてオケの個性がやや薄く感じるのは私だけでしょうか。

その分、テンポ設定も含めて王道の録音と言うか初心者の方にも聴きやすい内容になっているような気もします。

合唱もやや柔らかな響きでこの作品が持つ原始的で野卑な雰囲気はあまり感じられません。ソプラノのジューン・アンダーソンは伸びやかな声で印象的ですが、テノールのフィリップ・クリーチはやや張り気味で力が入っているような印象を受けました。

堂々としたテンポと響きで合唱もクセがなく初心者の方でも楽しめるアルバムだと感じました。

オルフ「カルミナ・ブラーナ」より
ジェイムズ・レヴァイン指揮:シカゴ交響楽団

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※下記の検索結果は本記事の投稿日現在、「Amazon Music Unlimited」「Carl Orff Carmina Burana」「カルミナ ブラーナ」などのキーワードで検索した例です。すべての録音を表示しているわけではありませんのでご了承ください。

カルミナ・ブラーナ

「オイゲン・ヨッフム&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「クリスティアン・ティーレマン&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「小澤征爾&ベルリン・フィル」「アンドレ・プレヴィン&ウィーン・フィル」「ギュンター・ヴァント&北ドイツ放送響」「オイゲン・ヨッフム&バイエルン放送響」「ミシェル・プラッソン&トゥールーズ・キャピトル国立管」「アンドレ・プレヴィン&ロンドン響」「アンタル・ドラティ&ロイヤル・フィル」「クリスチャン・ヤルヴィ&MDR交響楽団」「クルト・プレステル&モーツァルテウム管」「リコ・サッカーニ&ブダペスト・フィル」「ジェイムズ・レヴァイン&シカゴ響」「ヘルベルト・ブロムシュテット&サンフランシスコ響」「オーマンディ&フィラデルフィア管」「ストコフスキー&ヒューストン響」「レナード・スラットキン&セントルイス響」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」「小林研一郎&日本フィル」他

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「おすすめの名盤」でご紹介した「小澤征爾&ベルリン・フィル」「オイゲン・ヨッフム&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「ジェイムズ・レヴァイン&シカゴ響」以外では、「クリスティアン・ティーレマン&ベルリン・ドイツ・オペラ管」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」も録音状態も良く聴きやすい感じでしたが、あまり個性は感じられませんでした。

「アンドレ・プレヴィン&ロンドン響」盤はソリスト(テノール)、オケのフレージング共に個性が強く、この作品が持つ奇怪な雰囲気を味わうのに面白い録音です。

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まとめ

カール・オルフ作曲の「カルミナ・ブラーナ」いかがでしたでしょうか?

作曲の背景で触れたようにテキストとなった詩歌集は中世ヨーロッパで古来より伝わるものを集めたもので、それを書いたのは著名な文芸家などではなく修道院を訪れた学生や修道僧たち、いわば市井の人たちが書き残したものだと考えられています。

数百年の時を経ても変わらない「若者の怒り」「虚無感」「恋や愛」「酒や性」をテーマにした歌詞が生々しく、そして人間臭くも感じられます。

オルフはこの作品を20世紀の作品らしい近代的な響きと複雑なリズムを取り入れながらも、時には原始的なバーバリズムも感じさせる独特のオーケストレーションで壮大なカンタータ作品として仕上げました。

テノールとバリトン独唱はかなりの高音域を駆使しながら奇怪で妖しげな雰囲気を醸し出し、ソプラノは甘美に愛や恋を歌い上げます。

合唱とオーケストラが繰り広げる壮大な音絵巻も聴きごたえたっぷりで、児童合唱や多彩な打楽器群、ピアノやチェレスタの響きが作品に彩りを添えます。

一つの作品の中でオーケストラ、合唱、声楽などのありとあらゆる魅力が詰まった素晴らしい作品です。

歌詞の内容がわかると味わいがさらに深くなる作品なので、邦訳が表示されたDVDの名盤があれば良いのですが・・・あればまたおすすめの名盤のコーナーでご紹介したいと思います。

「冒頭の部分以外は聴いたことがない」そんなクラシック初心者の方もたくさんいらっしゃると思います。ぜひこの機会に全曲を通して聴いていただければと思います。

演奏時間は1時間近い大作なので「ちょっと長いな?」と感じられる方は「piccoloのツボ!ここを聴いて!」だけでも聴いてもらえたらうれしいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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