ブラームス「交響曲第1番」【解説と名盤】

2020年9月21日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

弦楽器が豊かに奏でる旋律はベートーヴェンの有名な「歓喜の歌」を彷彿とさせます。

その旋律は徐々に高揚し、クライマックスへと導いていきます。

まずは第4楽章をダイジェストで聴いてみましょう。

サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

交響曲 第1番 ハ短調 作品68はドイツの作曲家、ヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1876年に書き上げた最初の交響曲です。

20歳の時に出会ったシューマンに認められ、シューマン自身が創刊したドイツの有名な音楽誌「新音楽時報」の評論で熱烈な賞賛を受けたブラームスは、徐々に作曲家としての知名度を上げていきます。

1862年、30歳を前にウィーンに移ったブラームスは指揮者として活動をしながらも作曲に集中していきます。

1868年に完成させた「ドイツ・レクイエム」は特に高い評価を受け、ドイツを代表する作曲家としての地位を確立します。

そんなブラームスでしたが交響曲に関しては40歳を迎えても未だに完成させた作品がないと言う状況でした。

ベートーヴェンを敬愛するあまり、当時の高名な指揮者ハンス・フォン・ビューローに宛てた手紙に「ベートーヴェンという巨人が背後から行進して来るのを聞くと、とても交響曲を書く気にはならない」と書き送っているほどブラームスにとってベートーヴェンの存在は大きなものであったようで、彼自身の内省的な性格もあってか交響曲の作曲にはかなり慎重であったようです。

この交響曲第1番を書き上げた1876年はブラームスが43歳になる年で、早熟の天才モーツァルトが最初の交響曲を書いたのは僅か8歳の時と伝えられ、ブラームスが敬愛してやまなかったベートーヴェンの交響曲第1番が30歳の時の作品であるのと比べても、交響曲の作曲家としてはかなり遅いデビューと言えるでしょう。

しかし、ブラームスが最初に交響曲の着想を得たのは20代の頃と言われていますが、初期に浮かんだアイデアは他の作品に転用されたと見られています。

一説には1854年、21歳の時には交響曲のスケッチを始めていたとされ、もちろんその時の着想は後年の交響曲第1番とは別のものでしょうが、そうなると最初に交響曲の構想をしてから、実に20年以上を経てようやく完成された交響曲であると言えます。

この交響曲第1番の第1楽章の原型と見られるものが作曲されたのは1862年、ブラームスが29歳の時のことです。

この第1楽章の草稿はこの時に、シューマンの妻であり、彼の死後もブラームスと終生深い関りを持ったクララ・シューマンにピアノで弾いて聴かせています。

それから6年後の1868年のクララの誕生日を祝う書簡には、終楽章でホルンによって奏でられる有名な旋律が歌詞を添えて書き送られています。

こうして長い年月を掛けて推敲に推敲を重ねてようやく書きあげられた交響曲第1番は1876年にようやく完成をします。

ブラームスは初演の前に、全曲をクララ・シューマンにピアノで弾いて聴かせていますが、クララはこの作品に対してあまり良い印象を持たなかったようです。

同年行われた初演に対する批評家たちの意見の中にも芳しくないものがあったようで、ブラームスは初演後も作品に改訂を加え、翌1877年に決定稿がドイツの音楽出版社、ジムロックから出版されています。

その後この作品はベートーヴェンの交響曲を継ぐ作品として高い評価を得、ハンス・フォン・ビューローが評した「ベートーヴェンの第10交響曲」の言葉は余りにも有名です。

ブラームス「交響曲第1番」解説

第1楽章:Un poco sostenuto – Allegro

冒頭、重々しく運命的な何かを感じさせるようなティンパニの連打の上に、波のようにゆったりと押し寄せる弦楽器の旋律が上昇していく序奏で印象的に始まります。(譜例①)

譜例①:冒頭部分

悲壮な雰囲気も感じられる序奏は頂点を迎えると徐々に減衰していき、哀愁漂うオーボエの旋律の後静かに消えていき、ティンパニの一打と共にアレグロの主部が始まります。(譜例②)

譜例②:演奏動画(02:38)

第1ヴァイオリンに現れる第1主題(譜例②:赤部分)はその後何度も反復され発展していきます。

弦楽器によって奏でられる豊かな第1主題に対して、オーボエが奏でる第2主題は対比的に柔らかく繊細で、どこか哀愁を帯びています。(譜例③)

譜例③:演奏動画(04:41)

このオーボエのソロに続くオーボエとクラリネットの掛け合いはまるで対話をしているかのようで印象的です。

楽章全体に運命的、宿命的な重々しい雰囲気を感じますが、それに立ち向かうかのような力強さもあり、ベートーヴェンの交響曲を髣髴とさせるようです。

楽曲は終盤さらにドラマティックに展開され、最後はゆっくりと静かに終曲します。

第2楽章:Andante sostenuto

重々しい雰囲気に支配された第1楽章とは対照的に、ある種ロマンティックな雰囲気も感じさせる美しい楽章です。

ハ短調で書かれた第1楽章の三度上のホ短調で、三部形式で書かれています。

弦楽器の美しい調べ、オーボエの繊細な音色に心が洗われます。

終盤に現れるホルンの伸びやかな旋律に絡む繊細なヴァイオリンは大変美しく、何度聴いても鳥肌が立ちます。(譜例④)

譜例④:演奏動画(24:02)

第3楽章:Un poco allegretto e grazioso

本来スケルツォが置かれることの多い第3楽章ですが、ブラームスは間奏曲風の素朴な音楽を書いています。

木管楽器の柔らかい音色で奏される旋律に導かれ、優美な音楽が展開されます。

第4楽章:Adagio – Allegro non troppo, ma con brio

第4楽章は再び苛酷な運命が姿をあらわすかのような長大な序奏で重苦しく始まります。

弦楽器の旋律が徐々に高揚していくとティンパニのロールが響き、続いてホルンが朗々と雄大な旋律を歌います。(譜例⑤)

譜例⑤:演奏動画(34:55)

この旋律は作曲の背景にも記したようにクララ・シューマンの誕生日に歌詞を添えて送られていて、その歌詞は「Hoch auf’m Berg, tief im Tal, Grüß ich dich viel Tausendmal!」(山の上高く、谷の底深くにありて、御身に心からあいさつを送る)と言ったもので、山の奥から聴こえてきたアルペンホルンの音から採ったとも、クララへの愛情を表現したものとも言われています。
※訳:属 啓成(ブラームス:交響曲第1番スコア 全音楽譜出版社)

この旋律はまるでこだまのようにフルートに引き継がれた後、金管楽器が讃美歌風の旋律を奏します。

序奏が終わりアレグロに入るとダイジェスト動画でも紹介した有名な第1主題が弦楽器によって豊かに奏でられます。(譜例⑥)

譜例⑥:演奏動画(37:07)

冒頭に触れたようにベートーヴェンの交響曲第9番の終楽章「歓喜の歌」を髣髴とさせる旋律ですが、実際に類似している箇所もありますので上記の赤部分と比べてみてください。(譜例⑦)

譜例⑦:ベートーヴェン「交響曲第9番」より

これらの主題は自在に発展し、途中で先ほどのアルペンホルンの主題を挿みながらドラマティックに展開していきます。

音楽はクライマックスへ向けて高揚していくと最後は急速にテンポを速め、讃美歌風の主題が輝かしいファンファーレとして奏でられ、圧倒的な高揚の中で終曲します。

「暗から明へ」と言うその構成はベートーヴェンの交響曲に通じるところがあり、「ベートーヴェンの交響曲第10番」と評されるのもわかりますが、それはベートーヴェンの模倣と言う意味ではなく、ブラームスのベートーヴェンを超えようとする意志を感じるかのようなオリジナリティ溢れる素晴らしい作品です。

クラシック初心者の方もぜひ全曲を通して聴いてみてください。

ブラームス「交響曲第1番」youtube動画

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
第1楽章(00:00)
第2楽章(17:34)
第3楽章(26:43)
第4楽章(31:56)

セミヨン・ビシュコフ指揮ケルンWDR交響楽団(ケルン放送交響楽団)

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ブラームス「交響曲第1番」名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

ブラームス
1.交響曲第1番ハ短調 op.68
2.ハイドンの主題による変奏曲 op.56a

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1987年(1)1983年(2)

生涯に何度もこの作品を録音しているカラヤンですが、これは晩年に録音された唯一のデジタル録音です。

ベルリン・フィルならではの重厚で輝かしい響きがこの作品の魅力を存分に引き出している1枚です。

名盤と言われるカール・ベーム&ベルリン・フィル盤と比べると、とても歯切れのよい印象のベーム盤に比べ、いかにもカラヤンらしいレガートの美しく豊かな弦楽器のカラヤン盤が個人的には好みです。

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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