ムソルグスキー(ラヴェル編)「展覧会の絵」【解説と名盤】

2020年9月20日

まずはダイジェストで聴いてみよう!!

厳かに響く鐘の音、弦楽器のざわめきが徐々に大きくなると冒頭のプロムナードのテーマが奏されます。

このテーマはさらに拡大され再び鐘の音が大きく響き渡る中、壮大なクライマックスを迎えます。

まずは終曲「キエフの大門」のクライマックス部分をダイジェストで聴いてみましょう!

ワレリー・ゲルギエフ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

組曲「展覧会の絵」はロシアの作曲家、モデスト・ムソルグスキー(1839-1881)が1874年に作曲したピアノのための組曲です。

この作品は「ロシア五人組」の一人として活躍したムソルグスキーが、友人であった画家ヴィクトル・ハルトマン(1834-1873)の遺作展で見た10枚の絵の印象を音楽にしたものです。

39歳の若さで急死した友人の死にムソルグスキーは大きなショックを受けていたようですが、この遺作展を見て大きなインスピレーションを得た後、わずか3週間足らずでこの作品を完成させています。

しかしながらこの作品はムソルグスキーの生前は出版されることも演奏されることもありませんでした。

1881年3月、アルコール依存症に加え、度重なる心臓発作に見舞われたムソルグスキーは失意のうちにこの世を去ります。

ムソルグスキーの遺稿の整理に当たった同じ「ロシア五人組」のリムスキー=コルサコフ(1844-1908)はこの作品に改訂を加え、その死の5年後の1886年にようやく出版されることになります。

ただしムソルグスキーのオリジナル版に比べて改訂点が多く、「リムスキー=コルサコフ版」として原典版とは区別されています。

さらに時を経た1922年、当時の高名な指揮者セルゲイ・クーセヴィツキー(1874-1951)がフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(1875-1937)にこの作品の管弦楽版への編曲を依頼します。

そして完成したのが管弦楽版の組曲「展覧会の絵」です。

「オーケストラの魔術師」の異名を持つラヴェルの色彩豊かで華麗な管弦楽版への編曲で、この作品は一躍、世の人に知られることになります。

楽曲は10枚の絵の印象を音楽で表現し、その間を印象的な旋律の「プロムナード」が繋ぎます。

この「プロムナード」は展覧会を見て歩くムソルグスキー自身を表していると言われています。そこには展覧会の絵の印象だけでなく亡くなった友人への思いも含まれているのかも知れませんね。

組曲「展覧会の絵」の解説

プロムナード
曲の冒頭を飾るのはトランペットソロで演奏される有名な「プロムナード」の旋律。
この旋律が様々に形を変えて10枚の絵を表現した音楽を繋いでいきます。

1.小人」(3:00)
弦楽器で奏される不気味な旋律が印象的です。「小人」と言うタイトルとは似つかわしくないかもしれませんが、日本語訳のニュアンスとは異なり「土の精」的な感じのものでロシアの感覚では少し不気味でグロテスクな雰囲気なのかも知れませんね。

プロムナード(6:08)
ホルンのソロではじまる旋律に木管楽器が柔らかい響きで呼応します。

2.「古城」(7:00)
ファゴットの序奏に導かれアルトサクソフォーンが哀愁を帯びた旋律を奏でます。「ボレロ」でもサクソフォーンをオーケストラに効果的に使ったラヴェルはここでもサクソフォーンの魅力を存分に引き出します。

プロムナード(11:22)
金管楽器が重々しく旋律を奏でます。

3.「テュイルリー、遊びの後の子供たちの口げんか」(11:53)
「テュイルリー」はパリにあった宮殿で現在は庭園となっているようです。木管楽器が賑やかに動き回り子供たちが口げんかする様子が描かれます。

4.ビドロ(牛車)」(13:01)
一転して重々しく牛車を引く牛の様子がチューバのソロで描き出されます。牛車のイメージよりも更に重々しく暗澹たる雰囲気に包まれた曲ですが、この「ビドロ」と言う言葉は「牛車」とは別に「虐げられた人々」と言う意味を含んでいるそうです。
人生の重荷や過酷な運命を引きずりながら重い足取りで歩く人々・・・そんなイメージの方がしっくりくる曲調かも知れませんね。

プロムナード(16:23)
木管楽器で演奏される柔らかく美しい旋律の後に少し影を落とすようにオーケストラが続きます。

5.「卵の殻をつけた雛の踊り」(17:00)
卵の殻をつけた雛が走り回っている姿が目に浮かぶようで思わずクスッと笑ってしまいそうになります。

ヴィクトル・ハルトマン 
バレエ「トリブィ」のための衣裳デザイン

6.「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」(18:20)
2人のユダヤ人を表していて、傲慢な金持ちサムエル・ゴールデンベルクは重々しい弦楽器で、貧しく卑屈なシュムイレがミュート(弱音器)をつけたトランペットで表現されています。

トランペットのベルに挿して使われるミュートは音量を下げると言うよりは音色に変化を与え甲高くヒステリックな感じのシュムイレを表現しているように感じます。

ヴィクトル・ハルトマン 富めるユダヤ人
ヴィクトル・ハルトマン 貧しきユダヤ人

7.「リモージュの市場」(21:11)
フランスのリモージュの市場での活気あふれる様子が忙しく動き回る弦楽器で表現されています。行き交う人々、話し声、喧噪・・・そんなイメージが浮かびます。

8.「カタコンベ、ローマ時代の墓」(22:40)
地下に作られた墓のことで、金管楽器の重厚な響きに時代を遡ったかのような感覚を覚えます。中間部に出てくるトランペットのソロが郷愁を誘います。

ヴィクトル・ハルトマン パリのカタコンベ

「死せる言葉による死者への呼びかけ」(24:30)
「プロムナード」の変奏です。弦楽器による静かなトレモロ(同じ音を小刻みに反復する奏法)に乗って奏でられる不気味な響きが印象的です。

9.「鶏の足の上に建つ小屋、バーバ・ヤガー」(26:56)
ロシア民話に登場する骨と皮だけの痩せこけた妖婆。森の中の鶏の足の上に建つ小屋に住むと言われており、その奇妙な様子がテンポの速い音楽で描かれています。中間部は幻想的な雰囲気も漂わせています。

10.「キエフの大門」(30:13)
フィナーレは冒頭でも紹介した「キエフの大門」。力強く堂々としたトランペットの旋律がさらに発展していきます。何度か静けさを取り戻した後に再び音楽は高揚し、最後は10枚の絵をつないできたプロムナードの旋律が壮大に展開され大団円を迎えます。

ヴィクトル・ハルトマン キエフ市の門の設計図

組曲「展覧会の絵」(管弦楽版)のyoutube動画

ムソルグスキー(ラヴェル編)組曲「展覧会の絵」

クリスチャン・ヤルヴィ指揮 フランス国立管弦楽団

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組曲「展覧会の絵」(ピアノ版)のyoutube動画

※こちらの動画は埋め込みが出来ません。下記のタイトルをクリックしていただき、リンク先のyou tubeでご覧ください。

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」

ピアノ:エフゲニー・キーシン

組曲「展覧会の絵」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

ムソルグスキー(ラヴェル編曲) 組曲『展覧会の絵』
ボロディン 交響曲第2番ロ短調
ボロディン だったん人の踊り
サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 2007年 ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ)

ベルリン・フィルの録音ではこれまでカラヤン盤、アバド盤なども出ていますが、このラトル盤ではあまり演出過多にならず、比較的すっきりした演奏が楽しめるように思います。

豪華絢爛と言った雰囲気がお好みの方はカラヤン盤が良いかもしれませんね。

youtubeの公式チャンネルにこの録音がアップされていますので、リンクを貼っておきます。
【プロムナード】【古城】【キエフの大門】

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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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