ショスタコーヴィチ「交響曲第7番《レニングラード》」【解説と名盤】

2020年9月13日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

激しく咆哮する金管楽器、弦楽器がかき鳴らす旋律の間を木管楽器が吹きすさぶ嵐のように駆け巡ります。

まずは第4楽章をダイジェストで聴いてみましょう。

テオドール・クルレンツィス指揮 南西ドイツ放送交響楽団(SWR Symphonieorchester)

作曲の背景

交響曲第7番ハ長調作品60『レニングラード』は旧ソ連の作曲家、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1941年に作曲した交響曲です。

第2次世界大戦中の1941年6月、ナチス率いるドイツ軍は突如として不可侵条約を結んでいたソ連に侵攻し、両国は戦争状態に突入します。

同年9月、ソ連第2の都市であったレニングラード(現サンクトペテルブルク)はドイツ軍によって包囲されることになります。

このナチス・ドイツ軍によるレニングラード包囲は1944年1月まで900日近く続き、飢餓や砲爆撃によって、ソ連政府の発表によれば67万人、一説によれば100万人以上の市民が死亡すると言う甚大な被害を出すこととなります。

当時、レニングラード音楽院教授の職にあったショスタコーヴィチがこうした緊迫した状況にあって作曲されたのが、今回ご紹介する交響曲第7番です。

作品は7月頃から作曲され10月にはレニングラードを脱出し、疎開先のクイビシェフで12月に完成しています。

この作品はショスタコーヴィチ自身がソ連共産党の機関紙『プラウダ』で「私は自分の第7交響曲を我々のファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そして我が故郷レニングラードに捧げる」と表明したことにより「レニングラード」の通称で親しまれています。

各楽章には当初「戦争」「回想」「祖国の大地」「勝利」と言う副題が付けられていましたが、この副題は結局作曲者自身の手によって削除されています。

当時の社会主義体制下のソ連においては「社会主義リアリズム」の名のもとにあらゆる芸術に革命国家が勝利に向かって進んでいく姿を描写するような内容が求められていた時代です。

それが故にショスタコーヴィチ自身が真に戦争の惨禍と闘争、勝利と言ったテーマに創作意欲を感じて作曲したのか、一部に批判されているようにソ連のプロパガンダ的な役割を担って作曲したものか、さらにはナチスのみならずソ連に対する体制批判の意味も込めて作曲したものなのか、真意はよくわかりません。

ただショスタコーヴィチ自身がこの時期に軍隊や義勇軍への入隊を志願していることを考えると愛国の高揚した気持ちが創作に深く関わっているようにも思います。

いずれにしてもショスタコーヴィチの交響曲の中で最も長大で壮大なこの作品が、戦争の惨禍の中で作曲され、内容的にも戦争と平和、祖国、闘争と勝利、これらのテーマと深い関連を持った作品であることは間違いないようです。

作品そのものの最後は勝利の凱歌で飾っていますが、初演された1942年にはレニングラードは激戦の最中にあり、勝敗の行方も定かではない状況でした。

ショスタコーヴィチがこの作品に込めた強い想いが溢れるかのようなショスタコーヴィチを代表する交響曲です。

クラシック初心者の方には長く感じされるかも知れませんので楽章ごとに聴いてみるのも良いかも知れませんね。

ショスタコーヴィチ「交響曲第7番《レニングラード》」解説

第1楽章:Allegretto

第1楽章全体が平和な街を突如襲ってきた戦争の苛酷な姿を描写しています。

冒頭の力強い第1主題は「人間の主題」と呼ばれていて、その後に続く弦楽器による穏やかな第2主題は戦争が起こる前の平和な生活を描写しています。

やがて2小節単位で同じリズムを刻む小太鼓に乗って「戦争の主題」が何度も繰り返されながら高揚していきます。

この部分はひと昔前にアーノルド・シュワルツェネッガーが出演した『アリナミンV』のテレビCMで用いられたので、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。

また反復される小太鼓のリズムに乗りながら徐々に大きくなっていく仕掛けにラヴェルの「ボレロ」の影響も指摘されます。

この「戦争の主題」は前半こそ少々コミカルな雰囲気も漂わせていますが、徐々に大きくなるにつれて力強さが加わり、ついには破壊的な凶暴性も感じられるような戦争の音楽へと展開していきます。

この劇的でドラマティックな激しい戦場の描写が静まるとファゴットによる長大なソロが奏でられます。

これは戦争によって愛する家族を失った悲しみの音楽であり、嘆きのレクイエムにも聴こえます。

激しい戦闘に傷つき、疲れ果てたレニングラード市民が足を引きずりながら歩いているようにも感じます。

最後は「人間の主題」が静かに流れた後、継続する戦争を象徴するように再び「戦争の主題」が再び現れ、静かに第1楽章を終えます。

第2楽章:Moderato. Poco allegretto

ここでは再び戦争が起こる前の平和で素朴な街の姿が描かれています。

オーボエからイングリッシュ・ホルンへと続く穏やかな旋律は牧歌的でのどかなようにも感じますが、どこか悲哀を感じさせる雰囲気もあります。

中間部からはやや激しい音楽が展開されますが、この楽章でのテーマは「回想」にあるようで、戦争の描写と言うわけではないようです。

フルートの刻む細かい音型に乗ってバスクラリネットが不気味な旋律を奏で、最後は静かに第2楽章を終えます。

第3楽章:Adagio

教会の鐘を思わせるような響きの讃美歌風の主題に続き、弦楽器がドラマティックな旋律を奏でます。

「広大な祖国」と言う副題を付けたこともある第3楽章は生活の歓喜、自然にたいする讃嘆など祖国に対する愛情が表現されています。

フルートのソロによる美しい旋律は風に乗って運ばれる調べのようでもあり、祈りの音楽のようにも聴こえます。

中間部では付点のリズムが印象的な激しい旋律が演奏され、金管楽器を加えながら疾駆するかのようなスピード感のある音楽が展開されていきます。

再び弦楽器による美しく豊かな旋律が奏でられる中、切れ目なく第4楽章へと続いていきます。

第4楽章:Allegro non troppo

弦楽器が静かに奏でる冒頭の旋律はまだ前楽章の余韻に満ちていますが、すぐに戦闘の再開を予感させるような激しい動きを伴った旋律が支配していきます。

戦闘が激化していくかのように様々なモチーフが交差し、金管楽器が刻む細かい音型は速射砲のようにも感じられ、その間を弦楽器と木管楽器が嵐のように駆け抜けていきます。

戦場の描写がクライマックスを迎えると重々しい3拍子で深く沈み込むような音楽が展開されます。

それは戦争の犠牲になった人々の鎮魂の音楽のようでもあり、悲哀に満ちています。

最後は再び劇的に高揚した後、第1楽章冒頭の「人間の主題」が高らかに奏され熱狂的に終曲します。

ショスタコーヴィチ「交響曲第7番《レニングラード》」youtube動画

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番ハ長調作品60『レニングラード』
第1楽章(00:25) 第2楽章(29:10) 第3楽章(40:50) 第4楽章(1:01:12)

クラウス・ マケラ指揮 hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)

ショスタコーヴィチ「交響曲第7番《レニングラード》」名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

【収録曲】
ショスタコーヴィチ
交響曲第7番作品60『レニングラード』
シカゴ交響楽団
録音:1988年6月

交響曲第9番作品70
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1985年10月

指揮:レナード・バーンスタイン

1988年、バーンスタインが亡くなる2年前の70歳の時に収録された作品ですが、晩年の録音とは思えない生気に満ち溢れた圧倒的な演奏です。

シカゴ響と言えば強力なブラス・セクションで有名ですが、ここでもその圧倒的な響きは遺憾なく発揮され筋肉質で骨太の響きが作品の魅力を一層際立てています。

「Amazon Music Unlimited」ならいろんなクラシック作品を聴き放題で楽しめます。まずは無料体験から!

いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

お役に立ちましたらクリックをお願いします。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村


音楽(クラシック)ランキング

関連記事