マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」【あらすじと解説】

作曲の背景

「カヴァレリア・ルスティカーナ」はイタリアの作曲家、ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)が1889年、26歳の時に書き上げたオペラです。

1888年7月、イタリアの楽譜出版社、ソンゾーニョは第2回目となる1幕もののオペラコンクールを開催することを発表します。

まだ駆け出しの作曲家で指揮者や音楽教師としても活動していたマスカーニは、このコンクールに応募するために、同郷で以前からの知り合いであったタルジョーニ=トッツェッティ(1863-1934)に台本を依頼します。(※後に詩人グィド・メナッシ(1867-1925)も台本作成に加わります。)

彼が台本の題材に選んだのはイタリアの小説家、ジョヴァンニ・ヴェルガ(1840-1922)が1880年に出版した小説をもとに1884年に初演した戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」でした。

タイトルの「カヴァレリア・ルスティカーナ」「田舎の騎士道」と言ったような意味です。

それから11か月後、1889年5月のコンクールの締め切りに応募された73作品は、翌1890年2月に行われた第1次予選を経て、5月の本選では圧倒的な支持を得てマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」が最優秀作品に選ばれました。

19世紀末のイタリアでは「ヴェリズモ(伊: verismo )」と呼ばれる、一般庶民の日常やむき出しの激しい感情、暴力の生々しい描写を特徴とした「ヴェリズモ文学」が一大ムーブメントを巻き起こします。

「真実主義」「現実主義」などと訳されるこの「ヴェリズモ」はすぐに演劇やオペラの分野にも波及します。

音楽の分野では激しい感情表現や、それを表現するための重厚なオーケストレーションも特徴です。

今回ご紹介する「カヴァレリア・ルスティカーナ」はこの「ヴェリズモ・オペラ」の代表作とも言われる作品です。

1890年、ローマの歌劇場で行われた初演では、60回ものカーテンコールを受け、その後瞬く間に大ヒット作となりました。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」あらすじ

ここではオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」のあらすじを簡単にご紹介したいと思います。

あらすじの中で【カッコ書き】で記した楽曲に関しては次の項でダイジェスト動画をご紹介していますので、ぜひ聴いてみて下さい。

中間部で演奏される有名な間奏曲については後程、別にご紹介していますので、こちらもぜひお楽しみください。

【主な登場人物】

トゥリッドゥ(テノール)・・かつての恋人ローラと隠れて逢瀬を重ねる若者
サントゥッツァ(ソプラノ、メゾソプラノ)・・トゥリッドゥの恋人
ルチア
(アルト)・・トゥリッドゥの母親、居酒屋の女主人
アルフィオ
(バリトン)・・ローラの夫、金持ちの馬車屋
ローラ
(メゾソプラノ)・・アルフィオの妻、トゥリッドゥの元恋人

舞台はイタリア南部、地中海に浮かぶシチリア島にある村、復活祭の日。

村の若者トゥリッドゥローラはかつて恋中でしたが、トゥリッドゥの兵役中にローラは馬車屋のアルフィオと結婚してしまいました。

兵役を終え帰郷したトゥリッドゥは、一度はローラを忘れるべく、村の娘サントゥッツァと婚約しますが、アルフィオの目を盗んでローラと逢瀬を重ねる仲に戻ってしまいます。

冒頭、前奏曲に続きトゥリッドゥローラを想いシチリアーナを歌います。

O Lola ch’ai di latti la cammisa】(おお!ローラ!ミルクのように純白のシャツを身にまとい)

二人の関係はサントゥッツァの知るところとなり、悲しみに暮れるサントゥッツァはトゥリッドゥのことを聞きにトゥリッドゥの母ルチアのもとを訪ねます。

「トゥリッドゥは?」と尋ねるサントゥッツァにルチアは「知らないよ」と素っ気ない返事をしますが、泣きすがるサントゥッツァを見かねて「ワインを仕入れにフランコフォンテへ」と答えます。

しかし「いえ!夜更けに村で彼を見かけた人がいるわ」とサントゥッツァが否定します。

「息子のことで何か気がかりなことがあるの?」と問いただすルチア。

そこへ歌声も高らかに現れたのはローラの夫、馬車屋のアルフィオ

ルチアにワインを注文しますが、「トゥリッドゥが仕入れに行ってるよ!」と言われます。

しかしアルフィオは「行ってないだろう。今朝あいつを俺の家の近くで見かけたぜ!」と言います。

「何だって!」と驚くルチア、「黙って!」とルチアを制止するサントゥッツァ。

アルフィオは教会で行われる復活祭のミサに参加するために一旦その場を立ち去ります。

ここで聖母マリアを讃えた復活祭の聖歌がソプラノの独唱と合唱によって荘厳に歌われます。

Regina coeli laetare】(お喜びください、天の女王さま)

再びトゥリッドゥの母ルチアと二人きりになったサントゥッツァはルチアにすべてを打ち明け、「私は捨てられてしまった!」と嘆きます。

Voi lo sapete, o mamma】(お母さまもご存じの通り)

「神様にお願いに行ってください!」とルチアにすがるサントゥッツァは「トゥリッドゥが来たら、もう一度だけお願いしてみます」と告げるのでした。

ルチアは教会へお祈りに行き、一人残ったサントゥッツァのもとにトゥリッドゥがやってきます。

「どこにいたの?」と問い詰めるサントゥッツァに「フランコフォンテさ!」とあくまでしらを切るトゥリッドゥ。

二人が激しく言い争っているところへローラの歌声が聴こえて来ます。

「今日は復活祭で主はすべてをお見通しよ!」とローラに皮肉を言うサントゥッツァですが、ローラは気にする風もなく教会へと去っていきます。

「何てことを言うんだ!」とサントゥッツァを責めるトゥリッドゥ、「ここにいて!わたしを見捨てるつもりなの?」とすがるサントゥッツァでしたが、トゥリッドゥは怒りにまかせてサントゥッツァを振り切るように教会へと向かいます。

立ち去るトゥリッドゥにサントゥッツァは「呪われた復活祭になるよ!裏切者!」と怨みの言葉を投げつけます。

トゥリッドゥが立ち去った後、今度はそこへローラの夫アルフィオがやってきます。

嫉妬の炎に包まれたサントゥッツァはアルフィオにトゥリッドゥとローラの関係をすべて話してしまいます。

告げ口した自分を恥じるサントゥッツァでしたが、アルフィオは「復讐してやる!」と怒りに震えながらその場を後にします。

登場人物たちの嫉妬と愛憎が絡み合う中、そんなキャラクターとは正反対とも言える有名な美しい間奏曲が流れます。

【間奏曲】

復活祭のミサを終えた広場ではトゥリッドゥが「一杯やろうじゃないか!」と乾杯の音頭をとっています。

Viva il vino spumeggiante】(万歳!泡立つ酒よ!)

そこへ現れたアルフィオに「一緒に飲もう!」と誘うトゥリッドゥですが、既に二人の関係を知ってしまったアルフィオは「お前の酒を飲むわけにはいかない!」と断ります。

ローラがその場を去った後、すべてを悟ったトゥリッドゥは決闘のしるしにアルフィオの耳を噛みます。

死を覚悟するトゥリッドゥですが、「俺が死んだら、俺にすべてを捧げたサントゥッツァは見捨てられたままになってしまう!哀れなサントゥッツァと嘆きます。

アルフィオは「裏の畑で待っている」と言う言葉を残し、その場を立ち去ります。

トゥリッドゥは酒に酔ったふりをしながら母ルチアに「もし僕が戻ってこなかったら、サントゥッツァの母親になっておくれ!」と歌います。

Mamma, quel vino è generoso】(母さん、この酒は強いね)

「なぜそんなことを言うの?」と言うルチアに「酒がそう言わせるのさ」とはぐらかすトゥリッドゥ。

母に別れを告げトゥリッドゥがその場を後にすると、やがて「トゥリッドゥが殺された!」という女の悲鳴が響き、物語は幕を閉じます。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」youtube動画

ここではあらすじの中で触れた主要な楽曲の動画と歌詞の和訳を抜粋してご紹介しています。

ご紹介する動画の中にはオペラの1シーンを抜粋したものだけでなく、歌唱のみのイメージPVも含まれますのでご了承ください。

※歌詞の和訳はフランコ・ゼフィレッリ演出の映像作品、歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)より引用しています。

O Lola ch’ai di latti la cammisa(おおローラ!ミルクのように純白のシャツを身にまとい)

トゥリッドゥ:プラシド・ドミンゴ

おおローラ!ミルクのように純白のシャツを身にまとい
お前は清らかで、さくらんぼのようにバラ色
お前が姿を見せ、微笑む時
最初にお前に口づけする者は、何と幸せなんだろう
お前の門戸に血をまき散らして
殺されようと、それが何だ!
もし命を奪われ、天国へ行くことになろうとも
そこでお前に会えないのなら、天国にだって入りはしない

引用:フランコ・ゼフィレッリ演出、『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)

こちらの動画は歌詞を引用したフランコ・ゼフィレッリ演出の歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)の動画で、DVDとして発売されています。

トゥリッドゥ役に三大テノールとしても有名なプラシド・ドミンゴ、サントゥッツァ役には旧ソ連出身のメゾソプラノ、エレーナ・オブラスツォワジョルジュ・プレートル指揮のミラノ・スカラ座管弦楽団と豪華なキャストで素晴らしい演奏ですが、動画をご覧いただくとおわかりのように、オペラの舞台を収録したものではなく、映画風に撮影された映像作品です。

Regina coeli laetare(お喜びください、天の女王さま)

サントゥッツァ:Eva-Maria Westbroek
The Royal Opera Chorus

たたえて歌いましょう 主は亡くなられたのではありません
たたえて歌いましょう よみがえられた主を
今日、天上の栄光の座へ昇られた主を
・・・
ああ主よ!ああ主よ!
・・・
主をたたえよう、主をたたえましょう
主を!主を!

引用:フランコ・ゼフィレッリ演出、『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)

人間の嫉妬と愛憎が交差する物語の中にあって、清らかで美しい間奏曲と並び、荘厳で感動的な讃歌となっています。個人的にはこの作品の中で一番好きな楽曲です。

Voi lo sapete, o mamma(お母さんもご存じの通り)

メゾソプラノ(サントゥッツァ):エリーナ・ガランチャ

お母さんもご存じの通り、トゥリッドゥは兵隊に行く前
ローラに永遠の愛を誓いました
永遠の愛を誓ったのです

帰ってきて、彼女が結婚したのを知り
彼は新しい恋で、炎を消そうとしたのです
心を燃え上がらせていた炎を

わたしを愛し、わたしも彼を愛した
彼を愛したわ

わたしの喜びを何でもねたむ彼女は
夫を忘れて、嫉妬の炎に身を焦がし
わたしから彼を奪ったのです
わたしから奪ってしまった

わたしから名誉も取り上げ
誇りを踏みつけたままにして
ローラとトゥリッドゥは愛し合っているのです
わたしはと言えば、ただ涙にくれるばかり

引用:フランコ・ゼフィレッリ演出、『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)

悲嘆に暮れるサントゥッツァが、トゥリッドゥの母ルチアに吐露する胸の内が、ドラマティックな調べに乗って歌われます。

この動画でご紹介した歌唱はこちらのCDに収録されています。

【Revive~オペラ・アリア集】

メゾソプラノ・エリーナ・ガランチャ
ロベルト・アバド指揮:バレンシア州立管弦楽団

※こちらのアルバムは「Amazon Music Unlimited」でもお楽しみいただけます!

Viva il vino spumeggiante(万歳!泡立つ酒よ!)

テノール(トゥリッドゥ):ヨナス・カウフマン

ともかく、みんな!ここで!
一杯やろうじゃないか!

きらめくグラスに泡立つ酒よ、万歳!
それは恋人のほほ笑みに似て
快い歓びを呼び覚ます

どんな悩みも楽しみに変える
誠実な友、ぶどう酒、万歳!

それはやさしい酔い心地で
暗い気分を吹き飛ばす

誠実な友、ぶどう酒、万歳!
どんな悩みも楽しみに変える

暗い気分を吹き飛ばす
快い酔い心地の中に

引用:フランコ・ゼフィレッリ演出、『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)

この動画でご紹介した歌唱はこちらのCDに収録されています。

【ヴェリスモ・アリア集】

テノール:ヨナス・カウフマン
アントニオ・パッパーノ指揮
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団

※こちらのアルバムは「Amazon Music Unlimited」でもお楽しみいただけます!

Mamma, quel vino è generoso(母さん、この酒は強いね)

トゥリッドゥ:グレゴリー・クンデ

母さん!この酒はいい酒だね

そして、確かに今日は
ひどく飲みすぎた

外に出て来るよ

でも、その前に僕を祝福して欲しいんだ
兵隊に出かけた日にしてくれたのと同じように

それから母さん、聞いてよ
もし僕が戻ってこなかったら
サントゥッツァの母親になってやってよ
僕は彼女を祭壇へ連れていくと誓ったのだから

サントゥッツァの母親にならなくてはいけないんだよ

もし僕が戻ってこなかったら・・・

引用:フランコ・ゼフィレッリ演出、『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1981年製作)

「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

作中で演奏されるこの有名な間奏曲は、次に起こる悲劇的な物語の展開を感じさせないような、清楚で美しい大変印象深い曲です。

オペラのシーンだけではなく、コンサートプログラムやアンコールピースとしてもよく使われる曲です。

弦楽器とオーボエが応答する部分では、恋人同士が優しく愛を語り合っているかのような印象を受けます。(譜例)

譜例:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲冒頭部分

大変短い曲なので、今回は2つの動画をご紹介しています。

短いタクト(指揮棒)を小刻みに振るゲルギエフと長いタクトを流麗に振るドゥダメル、2人の指揮ぶりの違いなども楽しめるポイントかも知れませんね?

マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

グスターボ・ドゥダメル指揮:イェーテボリ交響楽団

まとめ

マスカーニ作曲の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」、いかがでしたでしょうか?

マスカーニはこの作品の大成功によって一躍イタリア・オペラを代表する作曲者として名を馳せ、その後も数々のオペラを作曲しますが、今日ではこの作品を除いては上演される機会は多くないように思います。

物語は嫉妬と愛憎の念が入り混じる、現代の昼ドラにも通ずるようなお話ですが、不貞を働いておいて「もし自分が死んだらサントゥッツァは見捨てられたままになってしまう」と嘆くトゥリッドゥの態度には、女性の方からは厳しいツッコミが入るかも知れませんね?(笑)

動画でご紹介した有名な間奏曲は単独で演奏される機会も多く、後日歌詞が付けられ「マスカーニのアヴェ・マリア」としても親しまれています。

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

有名な「タイスの瞑想曲」も元はオペラの間奏曲!

美しくも切ないヘンデルのオペラ・アリア!

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