グスターボ・ドゥダメル【経歴とyoutube動画】
目次
グスターボ・ドゥダメルのプロフィール
グスターボ・ドゥダメル(1981-)はベネズエラ出身の指揮者です。この記事ではドゥダメルの簡単なプロフィールを動画と共にご紹介したいと思います。
1981年、ベネズエラに生まれたドゥダメルは幼い頃からベネズエラの音楽教育プログラム、エル・システマ(El Sistema)で音楽を学び、ヴァイオリンを学んだ後に指揮も始めるようになります。
1996年(15歳)、アマデウス室内管弦楽団(ベネズエラ)の音楽監督に就任。
1999年(18歳)、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラの音楽監督に就任。
2003年(22歳)、ベルリンやザルツブルクでサイモン・ラトルのアシスタントを務める。また、クラウディオ・アバドの招きでマーラー室内管弦楽団を指揮。
2004年(23歳)、第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝。
2005年(24歳)、ロザンゼルス・フィルを振ってアメリカ・デビュー。
2006年(25歳)、ミラノ・スカラ座デビュー。
2007年(26歳)、ルツェルン音楽祭でウィーン・フィルを初めて指揮。エーテボリ交響楽団の首席指揮者に就任。(2013年まで)
2008年(27歳)、ベルリン・フィルの夏の風物詩、ヴァルトビューネ・コンサートを指揮。
2009年(28歳)、ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任。
2010年(29歳)、ベルリン・フィル年末恒例のジルヴェスター・コンサートを指揮。
2012年(31歳)、シェーンブルン宮殿で行われたサマーナイト・コンサートでウィーン・フィルを指揮。
2014年(33歳)、ベルリン・フィルのヴァルトビューネ・コンサートに再び登場。
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より
ヴァルトビューネ・コンサート2014より
2017年(36歳)、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを指揮。ベルリン・フィルのヴァルトビューネ・コンサートにも三度登場。
ニューイヤーコンサート2017より
※こちらのコンサートの録音は「Amazon Music Unlimited」でも聴くことが出来ます。
2019年(38歳)、シェーンブルン宮殿のサマーナイト・コンサートに再登場。
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
サマーナイト・コンサート2019より
※こちらのコンサートの録音は「Amazon Music Unlimited」でも聴くことが出来ます。
このプロフィールを見ておわかりいただけるようにグスターボ・ドゥダメルはその情熱的な指揮と音楽で世界のメジャー・オーケストラから引っ張りだこの人気の指揮者で、今後の活躍から目が離せません。
エル・システマとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ
エル・システマはベネズエラの音楽家、ホセ・アントニオ・アブレウ(1939-2018)が1975年に設立した音楽教育プログラムです。
貧困に喘ぐ児童や青少年たちが、無償で音楽教育を受けることが出来る音楽による社会活動です。
ベネズエラの首都カラカスのガレージで始まったユース・オーケストラは発足間もない1976年にスコットランドで開催されたユース・オーケストラの国際大会でグランプリを獲得したことで、ベネズエラ国内で一躍脚光を浴び、オイルマネーで潤っていた政府のバックアップもあり、急速に発展していきます。
そしてこの教育プログラムはベネズエラ国内に多くのユース・オーケストラを組織し、30万人を超える多くの子供たちが無償で音楽を学ぶようになります。
これらのユース・オーケストラは団員の技術の向上に伴い初心者のオーケストラから海外での演奏活動も行うオーケストラまでピラミッド型に組織されていて、オーディションによりそのピラミッドの頂点として1999年に組織されたのが、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラで、その音楽監督に就いたのがエル・システマで学んだ18歳のグスターボ・ドゥダメルです。
オーケストラの名前に含まれる「シモン・ボリバル」は19世紀初頭に南米諸国をスぺインから独立に導いた英雄で、そもそもベネズエラの正式な国名は「ベネズエラ・ボリバル共和国」です。
ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラはエル・システマの趣旨に賛同、共感したクラウディオ・アバドやサイモン・ラトルが、ある時は指揮台に立ち指導し、ある時はヨーロッパの音楽祭に招待するなど積極的に協力し、メディアにも取り上げたことで一躍国際的な知名度を上げることになります。
ベネズエラの奇跡:エル・システマ EL SISTEMA 2015
バーンスタイン:『ウェストサイドストーリー』より「マンボ」
ユース・オーケストラの枠組みを超え、すっかりメジャー・オーケストラとして知名度を得たこのオーケストラはその後シモン・ボリバル交響楽団として発展し、ベネズエラ国内にはテレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ、カラカス・シンフォニー・ユース・オーケストラなどエル・システマが産んだ新しい世代のメンバーによるユース・オーケストラが誕生します。
またドゥダメルの他にもベルリン・フィルのコントラバス奏者エディクソン・ルイス、指揮者のクリスティアン・バスケスやサイトウ・キネン・オーケストラのゲストコンダクターとしても度々指揮台に立っているディエゴ・マテウスなどの著名な音楽家が次々と育っていっています。
今やベネズエラ国内のみならず世界の60を超える国や地域へ波及し展開しているエル・システマですが、本拠地のベネズエラでは政治的な混乱とハイパーインフレによる深刻な経済危機から数百万人の国民が国境を越えて難民化していると伝えられています。
この問題はもちろんエル・システマとオーケストラにも無縁ではなく、一部報道によると「シモン・ボリバル交響楽団の演奏家の3分の1が国外に出た」(lapatilla)との報道もありました。
エル・システマの理念が結実するような、豊かで平穏な日々がベネズエラに訪れると良いのですが・・・・
ブラームス:「ハンガリー舞曲第5番」練習風景
ロサンゼルス・ユース・オーケストラ
グスターボ・ドゥダメルのyoutube動画
グスターボ・ドゥダメルのその情熱的な指揮ぶりは、ベルリン・フィルをはじめとするオーケストラの公式チャンネルや、ドゥダメル自身の公式チャンネルを通じてyoutubeで楽しむことが出来ます。
ここではその中からいくつかのダイジェスト動画をご紹介したいと思います。楽曲の詳しい解説はリンク先の記事をご覧ください。
マーラー:交響曲第2番「復活」より
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
ヨハン・シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ
シモン・ボリバル交響楽団
モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」より
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」より
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー
ロサンゼルス・フィルハーモニック
ピアノ:ハービー・ハンコック
おまけのyoutube動画はベルリン・フィルのホルン奏者、サラ・ウィリスの求めに応じホルンの演奏にチャレンジするお茶目なドゥダメルの動画です。
「サラ・ウィリス」youtubeチャンネルより
「Amazon Music Unlimited」ならドゥダメル&シモン・ボリバル響、ロサンゼルス・フィル、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、エーテボリ響などの録音が聴き放題で楽しめます。まずは無料体験から!
「もっとドゥダメルの動画が見たい!」と言う方はこちらの記事でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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参考資料:太田和敬「エル・システマの研究(上)」『人間科学研究』文教大学人間科学部 第37号 2015 年
太田和敬「エル・システマの研究(下)-刑務所におけるオーケストラ活動の矯正教育的側面を中心に」『人間科学研究』文教大学人間科学部 第36号 2014 年