マーラー「交響曲第1番《巨人》」【解説と名盤】

2020年9月20日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

シンバルが衝撃的な開幕を告げると金管楽器が悲痛な叫び声をあげたかのように咆哮します。

「嵐のような動きで」と作曲者が指示した通り弦楽器が激しい楽句をかき鳴らすと再び金管楽器が咆哮します。

まずは第4楽章の冒頭部分をダイジェストで聴いてみましょう。

サイモン・ラトル指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

交響曲第1番ニ長調「巨人」はオーストリアの作曲家、グスタフ・マーラー(1860-1911)が1888年に書き上げた最初の交響曲です。

20代の前半から指揮者としてのキャリアをスタートさせたマーラーは並行して作曲活動にも取り組みます。

交響曲第1番以前の主要な作品の中に1885年に書き上げた4曲からなる歌曲「さすらう若人の歌」がありますが、この作品の第2曲と第4曲の旋律が交響曲第1番の中でも主題として使われています。

マーラー:「さすらう若人の歌」より第2曲「朝の野を歩けば」

バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル

1884年頃から作曲に着手され、1888年に書き上げられた交響曲第1番の第1稿は5楽章からなり、第1楽章から第3楽章を第1部、第4楽章と第5楽章を第2部とする交響詩として発表されました。

その後改訂が加えられ1893年に上演されるに際して「巨人」と言う標題が付されるとともに、各楽章にも次のような副題が付されました。

第1部 青春の日々から、若さ、結実、苦悩のことなど

第1楽章 春、そして終わることなく
第2楽章 花の章
第3楽章 順風に帆を上げて

第2部 人間喜劇

第4楽章 座礁、カロ風の葬送行進曲
第5楽章 地獄から天国へ

これらの標題、副題はドイツの小説家、ジャン・パウル(1763-1825)が1802年に著した小説「巨人」に由来しています。

この作品に限らず自作に度重なる改訂を加えることが常であったマーラーは1896年に上演するに際して、第2楽章「花の章」を削除して各楽章に付けていた標題もすべて取り払い4楽章からなる交響曲として演奏しました。

この時の改訂稿が後に「交響曲第1番」として出版され、今日の交響曲としての位置づけに繋がっています。

「巨人」の標題もマーラーによって削除されていることから、作曲者の真意としては付けるべきではないのかも知れませんが、演奏会やCD等のタイトルには表記されていることが一般的ではないかと思います。

尚、複数回にわたる改訂が加えられていることから様々な出版譜が存在し、中には削除された「花の章」を挿入して演奏されている録音もあります。

花の章

ここで削除されてしまった「花の章」をダイジェストで少し聴いてみたいと思います。

美しい曲なので削除されてしまったのは少し残念な気もします。

興味のある方は「花の章」を含んだ録音を探してみるのも面白いかもしれませんね。

ズービン・メータ指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

マーラー「交響曲第1番《巨人》」の解説

第1楽章 Langsam. Schleppend( ゆっくりと、引きずるように)

冒頭、弦楽器がフラジオレットと呼ばれる奏法で静かな響きを奏でる様は朝もやの森の中で佇んでいるかのような錯覚に陥ります。

やがて聴こえてくる音は鳥の声のようでもあり、遠くから聴こえてくるのは軍楽隊のファンファーレのようでもあります。

かっこうの鳴き声のようなフレーズが何度か反復された後、朝もやが晴れたように爽やかな旋律が演奏されます。

後半にあらわれる金管楽器のファンファーレは終楽章にもあらわれ全曲に統一感を出しています。

第2楽章 Kräftig bewegt, doch nicht zu schnell (力強い動きをもって、しかし速すぎないように)

低音弦楽器が3拍子で刻むリズムにのって舞踏的な旋律が展開されます。ひとしきり盛り上がった後は優美で穏やかな旋律を奏でた後、最初の旋律に戻り終止します。

第3楽章 Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen (荘厳に、威厳をもって、しかし引きずらないように)

改訂前の交響詩の段階では「座礁、カロ風の葬送行進曲」と副題が付けられていた楽章です。

カロはフランスの銅版画家、ジャック・カロ(1592-1635)のことです。

ジャック・カロ 戦争の惨禍

冒頭、コントラバスが奏でる重々しくもの悲しい旋律は「フレール・ジャック」と言う名で知られるフランスの民謡から取られています。

この曲はフランスのみならず世界各国、もちろん日本でも様々な歌詞があてられ親しまれている曲なので聞き覚えがあることと思います。

フレール・ジャック

Mundwerk a cappella

第4楽章 Stürmisch bewegt( 嵐のような動きで)

嵐のように激しく動き回る弦楽器の旋律と雄々しく咆哮するかのような金管楽器群が印象的なフィナーレです。

2台のティンパニを含む打楽器群も劇的な終楽章の演出に効果的に使われています。

大規模なオーケストラによる音響効果に注意が行きがちですが、個人的には終楽章中盤にあらわれるような静かな弦楽器の旋律が徐々に大きくうねっていくかのような深みのある部分も大好きです。

終結部は圧倒的なパワーで金管楽器群が咆哮しクライマックスを迎えます。最後にホルンが立ち上がって演奏する場面がありますが、これはマーラーの指示によるものです。

マーラーの交響曲はどれも長大なので慣れない方は楽章ごとに聴いてみるのも良いと思いますよ!

マーラー「交響曲第1番《巨人》」のyoutube動画

※こちらの動画は埋め込みが出来ません。下記のタイトルをクリックしていただき、リンク先のyou tubeでご覧ください。

マーラー 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
第1楽章(00:30) 第2楽章(17:17) 第3楽章(24:50) 第4楽章(36:25)

クラウディオ・アバド指揮:ルツェルン祝祭管弦楽団

クラウディオ・アバド(1933-2014)はカラヤン亡き後のベルリンフィルの芸術監督を引き継いだイタリアの指揮者です。

演奏会が始まる前の客席にはアバドの後任のサイモン・ラトルの姿も見えます。

動画は既にベルリンフィルを退任された後の2009年、病気を経てずいぶん痩せられたアバド76歳の時のコンサートの様子ですが、まさしく生気あふれる渾身の演奏です。

マーラー「交響曲第1番《巨人》」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

マーラー
交響曲第1番ニ長調《巨人》
クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1989年

録音された1989年はアバドがベルリン・フィルの芸術監督に選ばれた年で、その後にベルリン・フィルの指揮台に初めて立った時に選んだプログラムもこのマーラーの「巨人」でした。

奇しくもこの年はベルリンの壁が崩壊した年でもあり、ドイツとベルリン・フィルの新しい歴史のページを開く記念すべき録音です。

若き日の情熱的なアバドとこの動画の円熟期のアバドを聴き比べるのも楽しいかもしれませんね!

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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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