レスピーギ「ローマの松」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
金管楽器が奏でる勇壮な響きが悠久の時をさかのぼり、古代ローマ軍の進軍を髣髴(ほうふつ)とさせます。
まずは第4曲「アッピア街道の松」をダイジェストで聴いてみましょう。
ケント・ナガノ指揮 モントリオール交響楽団
作曲の背景
ローマの松(伊:Pini di Roma)はイタリアの作曲家、オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)が1924年に作曲した交響詩です。
1913年、サンタチェチーリア国立アカデミア作曲科教授の職を得てローマに移住したレスピーギは、歴史あるローマの景観からインスピレーションを受け、1916年に交響詩「ローマの噴水」を作曲します。
これが好評を博したレスピーギは1924年に今度はローマの4つの松を舞台にした交響詩を作曲します。
それは単なる風景描写だけではなく、何世紀にも渡ってローマの歴史を見守ってきた4つのローマの松の姿を通して、古代ローマへと時間を遡る幻想的な空間に私たちを誘ってくれます。
レスピーギは後年、自身が指揮をした演奏会のプログラムに次のように記したそうです。
『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすために出発点として自然を用いた。極めて特徴をおびてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人となっている。
引用:ウィキペディア
レスピーギ「ローマの松」の解説
第1曲 ボルゲーゼ荘の松(00:17)
ミュート(弱音器)を付けたトランペットに導かれ華やかに躍動するホルンの響き、休みなく動き回る木管楽器に活き活きとした弦楽器の旋律。
ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる様子を色彩感たっぷりに描写しています。
ボルゲーゼ荘は古代ローマ時代には有名な庭園があった場所で、現在はボルゲーゼ公園と呼ばれる広大な庭園となっています。
第2曲 カタコンベ付近の松(02:52)
突然の静寂が訪れ、弦楽器とホルンが低く静かに私たちを地下深くの世界へ導きます。
カタコンベは古代ローマの地下墓所のことで、その深い地の底からトランペットによる聖歌が遠く響いてきます。(4:57)
執拗に繰り返しながら高揚する旋律は死者への祈りなのでしょうか。高揚しきった旋律は再び地の底へ帰っていくかのように静かに幕を閉じます。
ムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」の中にもカタコンベを描写した部分がありますので聴き比べてみるのも面白いかも知れませんね。
第3曲 ジャニコロの松(10:12)
きらめくようなピアノの調べに乗って、クラリネットが静かに美しい旋律を奏でます。
ジャニコロはローマを一望できる丘で、月光の中に浮かび上がる幻想的なジャニコロの松が描かれます。
ヴァイオリンとチェロで演奏される神秘的な響きはフランス音楽のような繊細さを感じます。
曲の最後には再びクラリネットのソロが現れ、ナイチンゲール(夜鳴きウグイス)の鳴き声が流れますが(16:36)、これは録音したものを再生しています。
第4曲 アッピア街道の松(17:35)
まだ夢の中にいるかのようなはっきりしない感覚の中、遠くから進軍ラッパの音が聴こえてきます。
それはまるで古代ローマ軍が遠くから堂々とした行軍で間近に近付いてくるかのような迫力の中クライマックスを迎えます。
レスピーギ自身は次のように解説しています。
アッピア街道の霧深い夜あけ。不思議な風景を見まもっている離れた松。果てしない足音の静かな休みないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮べる。トランペットがひびき、新しく昇る太陽の響きの中で、執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく。
引用:ウィキペディア
アッピア街道は古代ローマの進軍道路として使われた街道です。

レスピーギ「ローマの松」のyoutube動画
レスピーギ 交響詩「ローマの松」
ディーマ・スロボデニューク指揮 ガリシア交響楽団
レスピーギ「ローマの松」の名盤
管理人のおすすめ盤はデュトワ&モントリオール交響楽団盤で!
この手の音響効果抜群の大規模な管弦楽作品はややもすると表現が誇大になりがちですが、デュトワは精緻で繊細な部分も表現が素晴らしく個人的にお気に入りです。
ローマ三部作の他2曲も収録されていて楽しめる1枚です。壮大でド派手な演奏が好みの方には向いていないかも?
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最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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