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サン=サーンス|交響曲第3番「オルガン付き」解説とおすすめの名盤

まずはダイジェストで聴いてみよう!

ホールに響き渡る壮麗なパイプオルガンの響き、4手のピアノが奏でる水面のきらめきのような繊細な響きに乗って弦楽器が美しい調べを紡ぎます。

まずはフィナーレの部分をダイジェストで聴いてみましょう!

ズービン・メータ指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

交響曲第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」はフランスの作曲家、カミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1886年、51歳の時に作曲した交響曲です。

作曲家の他にピアニスト、オルガニスト、指揮者としても活躍したサン=サーンスは1871年にフランクフォーレらとともに国民音楽協会を設立し、フランス音楽の振興に努めます。

オルガンの即興演奏で高い評価を受けていたサン=サーンスは、1857年から1877年にかけて、当時のパリのオルガニストの最高峰といわれたマドレーヌ教会のオルガニストも務めています。

余談ですがこのマドレーヌ教会のオルガニストには1896年からはフォーレも務めています。

マドレーヌ教会
マドレーヌ教会
wagner51 – wagner51, CC BY-SA 2.0 fr, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=913855による

サン=サーンスは生涯に3つの番号付き交響曲と2つの番号なし交響曲を完成させていますが、残りの作品はいずれも10代の後半から20代の前半にかけて書かれた若書きの作品で、演奏機会はあまり多いとは言えません。

今回ご紹介する交響曲第3番 「オルガン付き」サン=サーンスのまさに円熟期の作品で、サン=サーンスの代表作とも言える傑作交響曲です。

「オルガン付き」のタイトル通り、パイプオルガンや4手のピアノなどを編成に加えるなど、ピアノやオルガンの特性を知り尽くしたサン=サーンスならではの壮麗で美しい交響曲です。

楽曲の構成も独創的で、通常の4楽章構成のようですが、大きな2つの楽章から構成されるとも見られ、CDなどの録音媒体ではチャプターが4つに分かれているものと、2つに分かれているものが見られます。

4つに分けられているケースでも第1楽章(前半・後半)第2楽章(前半・後半)と表記されていることが一般的です。

作品はロンドン・フィルハーモニック協会の委嘱により作曲され、初演は作曲者自身の指揮により1886年5月19日にロンドンで行われています。

作品は初演の2か月後、1886年7月31日に亡くなった、友人でもあったフランツ・リストに献呈されています。

オルガン

サン=サーンス|交響曲第3番「オルガン付き」解説

第1楽章:Adagio – Allegro moderato

冒頭、朝もやのような雰囲気の弦楽器の響きに木管楽器が呼応する短い序奏が奏でられた後、弦楽器が心のざわつきを音にしたかのような細かい音型で第1主題を奏でます。(譜例①)

サンサーンス交響曲第3番第1主題
譜例①:演奏動画(01:39)

この主題はグレゴリオ聖歌「ディエス・イレ(怒りの日)」から引用されていて、全曲を統一する循環主題にもなっています。(譜例②)

譜例②:グレゴリオ聖歌「ディエス・イレ(怒りの日)」

このグレゴリオ聖歌「ディエス・イレ(怒りの日)」は同じフランスの作曲家、ベルリオーズの幻想交響曲の中でも引用されていますので聴き比べてみるのも面白いかも知れませんね。

弦楽器と木管楽器によって刻まれるこの循環主題は緊張感を持続しながら、大きくうねる別の主題を導きます。(譜例③)

サンサーンス交響曲第3番
譜例③:演奏動画(02:33)

このもの悲しい旋律の裏で絶えず第1主題が細かい音型を刻みながら音楽は展開されていきます。

木管楽器の柔らかいブリッジを経て弦楽器が穏やかな表情で第2主題を歌います。(譜例④)

サンサーンス交響曲第3番第2主題
譜例④:演奏動画(04:24)

音楽はその後、序奏部が再現されて展開部に入り、徐々に劇的な表情を見せてきます。第1主題がよりドラマティックに再現され、穏やかな第2主題が再現され後、再び序奏部が現れ、「Poco adagio」へと続きます。

Poco adagio

第1楽章後半は静かなオルガンの響きに導かれ、弦楽器が穏やかで美しい調べを奏でます。(譜例⑤)

サンサーンス交響曲第3番
譜例⑤:演奏動画(12:20)

神秘的なオルガンの響きと美しく調和したこの主題は絶妙の組み合わせで、オルガンの魅力を知りつくしたサン=サーンスならではのオーケストレーションです。

主題を管楽器にバトンタッチしてからの弦楽器の対旋律も実に美しく、まさに鳥肌ものです。

オルガンのブリッジに続く中間部では2つのヴァイオリンパートが見事な掛け合いをみせながら、主題が変奏され音楽が紡ぎ出されていきます。(譜例⑥)

サンサーンス交響曲第3番
譜例⑥:演奏動画(16:40)

この変奏が終わると弦楽器のピチカット(弦を指ではじく)で循環主題が再現され、不安気な曲想が一瞬支配しますが、それを覆すかのように「Poco adagio」の主題が再現され、クライマックスへ向けて昇り詰めていきます。

クライマックスを迎えた後はゆっくりと下降音型を繰り返しながら減衰し、最後は静かに魂が昇天するかのように上昇し終曲します。

第2楽章:Allegro moderato – Presto

第2楽章前半部分はスケルツォに相当する部分です。弦楽器が力強く主題を奏でます。(譜例⑦)

サンサーンス交響曲第3番
譜例⑦:演奏動画(22:40)

「Presto」に入りテンポを速めると跳ね回る木管楽器の裏でピアノが軽やかに走句を奏でます。中間部では心地よく揺れるような木管のリズムと共に弦楽器が終楽章につながるコラール(賛美歌)を感じさせる旋律を奏でます。(譜例⑧)

サンサーンス交響曲第3番
譜例⑧:演奏動画(25:05)

音楽は再び冒頭のスケルツォ主題に戻り三部形式を形成し、最後は美しい弦楽器の調べが静かに奏でられる中、低弦楽器が循環主題を再現し、消え入るように終曲します。

Maestoso – Allegro

壮麗なパイプオルガンの主和音の響きに続き、弦楽器が力強く先ほど現れたコラールの旋律を奏でます。

繰り返されるパイプオルガンの響きに続き、4手のピアノが奏でる水面のきらめきのような繊細な響きに乗って弦楽器が美しい調べを紡ぎます。

この旋律は作品冒頭から不安気な焦燥感を感じさせていたような「ディエス・イレ(怒りの日)」から引用された循環主題から出来ています。(譜例⑨)

サンサーンス交響曲第3番終楽章
譜例⑨:演奏動画(31:03)

同じ循環主題をパイプオルガンと弦楽器が今度は力強く奏でると、金管楽器のファンファーレがこれに呼応します。

フィナーレの主部Allegroは循環主題をモチーフとしたフーガで構成されています。(譜例⑩)

サンサーンス交響曲第3番終楽章主部
譜例⑩:演奏動画(32:27)

途中に挿入される木管楽器の牧歌的な旋律も印象的です。(譜例⑪)

サンサーンス交響曲第3番終楽章
譜例⑪:演奏動画(33:05)

緊張感のあるフーガと牧歌的な主題が交互に現れながら、その中を循環主題が壮大なコラールのように奏でられます。

最後は急速にテンポを速め、輝かしくそして壮麗な響きの中で終曲します。

サン=サーンス|交響曲第3番「オルガン付き」YouTube動画

サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」
第1楽章:Adagio – Allegro moderato(00:30)
Poco adagio(12:06)
第2楽章:Allegro moderato-Presto(22:40)
Maestoso – Allegro(30:30)

リッカルド・ミナージ指揮:hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
オルガン:イヴェタ・アプカルナ

piccoloのツボ!ここを聴いて!

このコーナーでは今回ご紹介した作品の中から「是非ここを聴いて欲しい!」と言う管理人piccoloの独断と偏見によるツボをご紹介しています。

「全曲聴くのは長すぎて・・・」と感じられるクラシック初心者の方はぜひここだけでも聴いてみて下さい。

今回のpiccoloのツボは第1楽章後半部分、「Poco adagio」の主題が再現されドラマティックに昇り詰めていく部分です。(譜例⑫)

サンサーンス交響曲第3番
譜例⑫:演奏動画(19:26)

「Poco adagio」の冒頭部分からお聴きいただくと良いのですが、中でも弦楽器が何度もこの主題を繰り返しながらどこまでも高みに昇っていくようなフレーズが何とも言えず魅力的です。

静かな夜にリクライニングチェアにゆっくりと身をゆだね、お好みのお酒でも傾けながら心静かに聴いていただけると最高だと思います。

※下記の動画をクリックしていただければ該当箇所から再生できるように設定しています。

ネーメ・ヤルヴィ指揮:ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

サン=サーンス|交響曲第3番「オルガン付き」おすすめの名盤

管理人piccoloおすすめの名盤はこちら!

【収録曲】
サン=サーンス作曲
交響曲第3番『オルガン』:モントリオール交響楽団
交響詩『死の舞踏』:フィルハーモニア管弦楽団
組曲『動物の謝肉祭』:ロンドン・シンフォニエッタ


指揮:シャルル・デュトワ
オルガン:ピーター・ハーフォード

録音:1982年(オルガン)1980年(他2曲)

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「サン=サーンスの3番」と言えば重厚で荘重、圧倒的なオルガンの響きを前面に押し出した録音も多いですが、個人的にはあまりにもデフォルメされた不自然なオルガンの響きには違和感を感じます。

このデュトワ&モントリオール響盤はそんな録音とは対極にある録音です。

精緻なアンサンブルは木管楽器や弦楽器が刻む循環主題を鮮明に浮き彫りにし、少し速めのテンポ設定でドライブ感あふれる演奏は重厚と言うよりはフランス音楽的な瀟洒なアプローチをしているように感じます。

フィナーレも颯爽とした雰囲気で重厚な演奏を期待している方には不向きかと思いますが、自然なオルガンの響きと音楽の運びを感じさせる名演です。

サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」より
シャルル・デュトワ指揮:モントリオール交響楽団

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※下記の検索結果は本記事の投稿日現在、「Amazon Music Unlimited」「Saint Saens Symphony 3」などのキーワードで検索した例です。すべての録音を表示しているわけではありませんのでご了承ください。

サンサーンス交響曲第3番

「レヴァイン&ベルリン・フィル」「ズービン・メータ&ベルリン・フィル」「カラヤン&ベルリン・フィル」「ジョルジュ・プレートル&ウィーン響」「マリス・ヤンソンス&バイエルン放送響」「ジャン・マルティノン&フランス国立放送管」「ミシェル・プラッソン&トゥールーズ・キャピトル国立管」「アントニオ・パッパーノ&サンタ・チェチーリア管」「チョン・ミュンフン&パリ・バスティーユ管」「ヤニック・ネゼ=セガン&ロンドン・フィル」「エド・デ・ワールト&ロッテルダム・フィル」「ズービン・メータ&イスラエル・フィル」「マリス・ヤンソンス&オスロ・フィル」「バーンスタイン&ニューヨーク・フィル」「オーマンディ&フィラデルフィア管」「バレンボイム&シカゴ響」「シャルル・ミュンシュ&ボストン響」「エド・デ・ワールト&サンフランシスコ響」「ロリン・マゼール&ピッツバーグ響」「ポール・パレー&デトロイト響」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」

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オススメの名盤でご紹介した「シャルル・デュトワ&モントリオール響」以外では、その対極にあるような「カラヤン&ベルリン・フィル」はかなりやり過ぎ感の強い圧倒的なオルガンの響きと、カラヤンならではのモルトレガートの弦楽器が印象的なカラヤン劇場とも言える録音を聴くことが出来ます。

同じベルリン・フィルでも「レヴァイン&ベルリン・フィル」では歯切れのよい颯爽とした音さばきを聴かせてくれます。テンポもやや速めで個人的にはカラヤン盤よりはこちらの方が好みです。

「アントニオ・パッパーノ&サンタ・チェチーリア管」はライヴ収録とは思えない完成された演奏で、オルガンの響きも自然ですが、フレージングがやや短めで録音もごまかしのないドライな雰囲気の録音を楽しめます。

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まとめ

サン=サーンス作曲の交響曲第3番「オルガン付き」、いかがでしたでしょうか?

20代の前半で前の交響曲を書いて以来30年近くの年月を経て、円熟の境地に達したサン=サーンスが書いた交響曲第3番、全曲を統一する循環主題が形を変えながら紡がれる旋律が、オルガンとピアノの壮麗で神秘的な音に彩られながら壮大な交響曲を形成しています。

第1楽章の中で短調により焦燥感を感じるように奏でられた循環主題は、フィナーレでは長調に転じ、力強く壮麗にクライマックスを迎え、ベートーヴェンから通じる「暗から明へ」と言う構図を作っています。

作品は壮麗なオルガンの響きで始まるフィナーレに注目されがちですが、繊細な細かい音型で刻まれる第1楽章の循環主題や弦楽器で美しく紡ぐ出される「Poco adagio」の主題など聴きどころ満載の作品です。

個人的な話で恐縮ですがこの作品は管理人が中学生の時に生まれて初めて全曲通して聴いた交響曲です。FMラジオから録音したN響の演奏をテープが擦り切れるまで聴いたことを懐かしく思い出します。

ベートーヴェンやブラームスとはまた違うフランスの香りを味わえる交響曲、ぜひお聴きいただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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