モーツァルト「ピアノソナタ第11番《トルコ行進曲付き》」【解説と無料楽譜】

まずはダイジェストで聴いてみよう!

伝統的なトルコの軍楽隊の打楽器を模した左手の伴奏に乗って、とても有名な生き生きとした旋律が奏でられます。

まずは「トルコ行進曲」として有名な第3楽章をダイジェストで聴いてみましょう。

ピアノ:Tzvi Erez

作曲の背景

ピアノソナタ第11番 イ長調 K. 331はオーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が作曲したピアノソナタです。

作曲年代については諸説あるようですが、1783年頃と考えられています。

第3楽章は冒頭に「Alla Turca(トルコ風に)」と指示されたロンドで、これがその曲想から俗に「トルコ行進曲」として親しまれているため、作品タイトルには「トルコ行進曲」「トルコ行進曲付き」などの副題が付くことが多いようです。

また「モーツァルトのトルコ行進曲」とはこの「ピアノソナタ第11番」の第3楽章のことで、あまりにも有名なこの楽章は単独で演奏される機会も多い作品です。

モーツァルトが生まれるさらに半世紀以上前、17世紀の後半にはトルコ系の君主を戴くオスマン帝国は中東からアフリカに至る大きな領域を支配していました。

版図を拡大するオスマン帝国は1683年にオーストリアの首都、ウィーンにも攻撃の手を加えます。

オスマン帝国軍は「メフテル(Mehter)と呼ばれる伝統的なトルコの軍楽を演奏する「メフテルハーネ (Mehterhane)と言う軍楽隊を引き連れていて、彼らの演奏する異国情緒溢れる音楽は西欧の人たちにも大きな影響を与えたようです。

その音楽は特徴的な民族楽器による活気あふれる音楽で、ベートーヴェンもその影響を受けた音楽を書いていますし、モーツァルトもこの作品の他にもヴァイオリン協奏曲第5番などの中に、「トルコ風」の影響を受けた作品を遺しています。

youtubeに実際にこの「メフテル(Mehter)」の演奏動画がアップされていますので、少し聴いてみましょうか。

Hane-i Hakani Marşı(軍隊行進曲)

勇壮な雰囲気が特徴的なので、「モーツァルトのトルコ行進曲」とはイメージが結びつかないかも知れませんが、今日演奏されているテンポよりも少しゆっくりと、歩くぐらいのテンポで足踏みしながらトルコ行進曲を口ずさんでみて下さい。少し近いイメージになりませんか?

オスマン帝国はモーツァルトがこの作品を書いた頃にはロシアとの戦争にも負けて縮小の一途をたどっているわけですが、文化的な影響は依然として色濃く残っていたのですね。

私が不思議に感じるのはオーストリアにとっては侵略者であるはずのオスマン帝国を象徴する軍楽が、敵国で流行すると言うのはどういう文化的、歴史的背景によるものなのでしょうか?

機会があればゆっくり勉強してみたいものです。

ちなみに作曲されたとされる1783年は「第二次ウィーン包囲」と呼ばれるオスマン帝国との戦いに勝利してから丁度100年の節目に当たる年で、そうした世相を反映して作曲されたとも言われています。

モーツァルト「ピアノソナタ第11番《トルコ行進曲付き》」解説

第1楽章:Andante grazioso

第1楽章はとても優雅に揺れ動く舟歌風の主題と6つの変奏からなっています。

モーツァルトの活躍した古典派のピアノソナタでは、通常、速いテンポのソナタ形式の楽章を第1楽章に配置するのが普通でしたが、この作品ではゆっくりとした舞曲風の主題と変奏を配置すると言う、当時としては極めて異例な構成で書かれているのも大きな特徴です。

「Andante grazioso」「歩くような速さで、優雅に、気品をもって」と言った意味です。

冒頭の主題はとても有名なので、聴いたことのある方も多いかも知れませんね。(譜例①)

譜例①:第1楽章主題

この主題が様々な表情と色彩を帯びながら次々と変奏されていきます。

第1変奏、第2変奏と巧みにリズムを変えながら、生き生きとした変奏が展開されますが、第3変奏ではガラッと雰囲気を変えて短調で哀愁を帯びた変奏が奏でられます。

第4変奏では落ち着いた雰囲気で優雅な変奏が奏でられ、続く第5変奏では「Adagio(ゆるやかに)」となり、美しい装飾音符を纏った流麗な変奏が奏でられます。

終曲となる第6変奏では再び、「Allegro(快活に速く)」にテンポが上がり、リズミカルで生き生きとした変奏で第1楽章を終えます。

第2楽章:Menuetto

第2楽章はいかにもモーツァルトらしい優雅で美しいメヌエットです。

中間部のトリオで奏でられる短い前打音の付いた四分音符が、小さなベルの音のようにも聴こえ、愛らしく印象的です。(譜例②)

譜例②:演奏動画(09:47)

第3楽章:Rondo Alla turca

第3楽章は冒頭に「Alla Turca(トルコ風に)」と指示されたロンドで、「モーツァルトのトルコ行進曲」として親しまれている有名な楽曲です。(譜例③)

譜例③:第3楽章冒頭部分

左手の伴奏がトルコ軍楽の中の打楽器風であると言われていますが、先ほどご紹介したトルコの伝統的な軍楽と聴き比べていかがですか?

冒頭のイ短調からイ長調に転調してからは左手の伴奏の強拍に分散和音の前打音が付き、よりトルコ軍楽風の雰囲気が強く感じられます。

右手の旋律部分が親しみがあり、耳に残っている方も多いかと思いますが、参考譜例をみながら左手の部分に耳を澄ませて聴いてみるのも面白いかも知れませんね。(譜例④)

譜例④:演奏動画(14:07)

さらにこの譜例④の部分では右手の旋律はオクターブで奏でられることによって、より豊かな音量で力強い響きを醸し出しています。

作曲の背景でも触れましたが「トルコの軍楽隊風」と言う観点では、もう少し落ち着いたテンポで演奏される方がより雰囲気を強くイメージ出来るように個人的には感じます。

楽曲はこれらの主題を交えながら繰り返された後、最後は譜例④のイ長調のオクターブの主題が16分音符に分解されて奏された後、コーダに入り華やかに終曲します。(譜例⑤)

譜例⑤:演奏動画(15:41)

モーツァルト「ピアノソナタ第11番《トルコ行進曲付き》」youtube動画

モーツァルト:ピアノソナタ第11番 イ長調 K.331「トルコ行進曲付き」
第1楽章(00:51)
第2楽章(08:13)
第3楽章(13:22)

ピアノ:ネルソン・フレイレ

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モーツァルト「トルコ行進曲」ジャズアレンジ動画

あまりにも有名なこの作品はクラシックのみならず、ポップスなどの幅広いジャンルでアレンジされて演奏されていますが、ここでは著名なピアニストによってジャズ風、即興風にアレンジされた演奏動画をご紹介したいと思います。

どれもとても楽しめる演奏ですので、こちらもぜひご覧ください!

ファジル・サイ編曲:モーツァルト「トルコ行進曲」

ピアノ:ファジル・サイ

この楽曲はこの演奏動画そのままではありませんが、ファジル・サイ編曲「トルコ行進曲に基づくトルコ風ジャズ」として楽譜が出版されていますので、ピアノを弾かれる方はアンコールピースなどに最適かもしれませんね。

アルカーディ・ヴォロドス編曲:モーツァルト「トルコ行進曲」

ピアノ:オルガ・シェプス

ヴォロドス、サイ、ワン編曲:モーツァルト「トルコ行進曲」

ピアノ:ユジャ・ワン

人気のピアニスト、ユジャ・ワンは自身のコンサートのアンコールとして、いろんなバージョンの「トルコ行進曲」を演奏して、観客を喜ばせているようですが、ご紹介したyoutube動画のコメント欄にはファジル・サイアルカーディ・ヴォロドスユジャ・ワンの3人の名前が並記したあったので、先のお二人のアレンジに自身のアイデアも取り入れてアレンジされたものかと思っています。

モーツァルト「ピアノソナタ第11番《トルコ行進曲付き》」無料楽譜

モーツァルト「ピアノソナタ第11番《トルコ行進曲付き》」無料楽譜(IMSLP)

上記のタイトルをクリックして、リンク先から無料楽譜をダウンロード出来ます。ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。

まとめ

モーツァルト作曲のピアノソナタ第11番、いかがでしたでしょうか?

第3楽章が「トルコ行進曲」として知られる有名な作品ですが、他の楽章は聴いたことがないと言う方も多いのではないでしょうか?

全曲を通して聴くと、「トルコ行進曲」以外の様々な表情も楽しむことが出来、そのフィナーレとして聴く「トルコ行進曲」もまた違う味わいがあるのでしょうか?

トルコの伝統的な軍楽「メフテル(Mehter)」と聴き比べてみるのも楽しいので、ぜひ試してみて下さいね!

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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