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デュカス「魔法使いの弟子」あらすじと解説、おすすめの名盤

2021年5月30日

作曲の背景

「魔法使いの弟子」(仏:L’apprenti sorcier)はフランスの作曲家、ポール・デュカス(1865-1935)が1897年に作曲した管弦楽作品です。

日本では「交響詩」として紹介されることが多いようですが、原題は「ゲーテのバラードによるスケルツォ」となっています。

1881年、16歳で名門パリ音楽院に入学したデュカスは作曲家の登龍門として有名なコンクール「ローマ賞」に応募しますが、結果は惜しくも大賞に及ばず2位に終わります。

1889年、失意のうちにパリ音楽院を去った24歳のデュカスは兵役に就き、一度は音楽の道を捨てようとします。

しかし、この兵役中に知己を得た軍楽隊の隊長からオペラの上演を手伝うように言われたことをきっかけに、再び音楽の道を志すようになります。

作曲家、そして音楽評論家として活動を再開したデュカスはドイツの文豪ゲーテ(1749-1832)が書いた詩と巡り会います。

それが、2世紀にシリアのサモサタで生まれた風刺作家ルキアノス(120?-180?)が書いた詩「嘘を好む人たち (Philopseudes)」に基づいて書かれたバラード「魔法使いの弟子」(独:Der Zauberlehrling)です。

バラードとは詩の様式のひとつです。

文豪ゲーテの作品と聞くと何かとても哲学的で、敷居が高く感じますが、この作品は詩の中に物語があり、ユーモアの感じる親しみやすい作品です。

詩のあらすじについては後述します。

そして、この作品にインスピレーションを得て1897年、32歳のデュカスが書き上げたのが、今回ご紹介する交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」(仏:L’apprenti sorcier)です。

完璧主義者として知られるデュカスは後年、パリ音楽院の教授となった後に作品の大半を破棄してしまいます。

そんなデュカスが遺したこの「魔法使いの弟子」は彼の自信作であり、また代表作でもあります。

初演は同年、デュカス自身の指揮により行われ、大成功を収めました。

それから約40年後の1940年、ディズニー制作のアニメーション映画「ファンタジア」の中で、この作品がモチーフとして取り上げられます。

ファゴットが奏でるコミカルな旋律にのってミッキーマウスが歩く映像は多くの方の記憶にあるかと思います。

音楽を担当したのは同映画にも出演しているレオポルド・ストコフスキー(1882-1977)、演奏はかつて「ストコフスキー によって作られ、オーマンディによってかき鳴らされる」と讃えられたフィラデルフィア管弦楽団です。

尚、このディズニー映画「ファンタジア」の中で演奏されている「魔法使いの弟子」はストコフスキーによって編曲されたものです。

この作品はそれから60年後の2000年に制作された「ファンタジア2000」の中でも取り上げられ、再び脚光を浴びることとなりました。

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「魔法使いの弟子」あらすじ

ある日、魔法使いの老師は弟子に水汲みの雑用を命じ、出かけてしまいます。

水汲みに飽きだした魔法使いの弟子は、魔法を使ってホウキに水汲みをさせようとひらめきます。

見よう見真似の魔法が功を奏し、ホウキはせっせと水汲みをし出します。

これで言いつけられた雑用も一安心と思ったのも束の間、魔法使いは魔法を解く呪文を知らないことに気づきあせります。

水が溢れ出し、一面は水浸し、慌てた魔法使いの弟子は「それならば!」とホウキをまっぷたつにしますが、今度は2つに分かれたホウキが分身のようにそれぞれ水汲みを始め・・・

やがてあたりは大洪水のようになり、魔法使いの弟子はなすすべもありません。

そこへ帰ってきた老師が呪文を唱えると、あれほど溢れかえっていた水はピタリと止まります。

魔法使いの弟子は老師からこっぴどく叱りつけられ物語は幕を閉じます。



映画「ファンタジア」「ファンタジア2000」では魔法使いの弟子をミッキーマウスが演じ、デュカスの描き出すコミカルな音楽に乗って、水汲みをするホウキを従えたミッキーマウスが歩く姿がとても印象的です。

尚、この「ファンタジア」「ファンタジア2000」では他にも様々なクラシックの名曲がたくさん使われています。みなさんの知っている曲が他にも使われているかも知れませんね?

「ファンタジア2000」予告動画
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「魔法使いの弟子」解説

ここでは先ほどご紹介したディズニー映画「ファンタジア」の映像を参考にしながら、ストーリーに沿って楽曲を解説してみたいと思います。

冒頭、魔法使いが唱える呪文のような神秘的な旋律が弦楽器によって奏でられた後、木管楽器が後に現れる主要な主題をゆったりと提示します。(譜例①②)

譜例①:弦楽器パート冒頭部分
譜例②:木管楽器冒頭部分

その後急速な部分が2回挿まれますが、ディズニー映画「ファンタジア」の中では、この部分で魔法使いの老師が鮮やかな魔法を魅せるシーンと、弟子に扮したミッキーマウスが見よう見まねでホウキに魔法をかけようとするシーンを見事に音楽にオーバーラップさせています。

その後ファゴットのコミカルな行進曲風のリズムにのって奏でらる冒頭の旋律は、これまたミッキーマウスが魔法をかけたホウキを従えながら歩くシーンとして使われ大変有名です。(譜例③)

譜例③:ファゴット譜、演奏動画(02:34)

この水汲みをするホウキを描写するかのようなコミカルな主題は、様々な楽器に引き継がれながら展開されていきます。

木管楽器や弦楽器が奏でる流れるような速いパッセージは、勢いよく注ぎ込まれる水を描写しているのでしょうか。

やがて現れる弦楽器の大きくうねるような音階が、押し寄せてくる水のようです。

金管楽器のファンファーレ風の楽句が、魔法使いの弟子の呪文を、それにかぶせるように覆いつくす弦楽器の旋律が、抗えない力で押し寄せる水を描写しているように感じます。(譜例④、⑤)

譜例④:演奏動画(06:43)
譜例⑤:演奏動画(06:52)

そして、押し寄せてくる水に圧倒されるかのように音楽は一度目のクライマックスを形作り、魔法使いの弟子はついにホウキをまっぷたつにします。

この部分で奏される打楽器を伴った強奏の連打は魔法使いの弟子が斧でホウキを叩き割っているのを描写しているようでとても印象的です。(譜例⑥)

譜例⑥:演奏動画(07:17)

「ファンタジア」の中でもミッキーマウスがホウキを叩き割るシーンと見事にオーバーラップさせてありますが、ここではストコフスキーのアレンジによってさらに打撃の回数が加えられているようです。

これで一度は収まったかのように静けさを取り戻しますが、再びファゴットがコミカルに主題を奏で、2つに分かれたホウキがなおも水汲みを始める様子が描写されます。

音楽は徐々に高揚し、再び2回目のクライマックスへと向かいます。

もはや魔法使いの弟子のなすすべもなく、荒れ狂う水に吞まれながら途方に暮れたその時、ようやく帰ってきた魔法使いの老師が現れ、呪文を唱える様子を金管楽器が描写します。(譜例⑦)

譜例⑦:演奏動画(10:09)

水はたちまち潮が引くように収まり、ホウキは元の姿へと戻るのでした。

冒頭の呪文のような静かで神秘的な旋律が流れた後、最後は映画のエンディングの様に劇的に幕を閉じます。

「魔法使いの弟子」youtube動画

※こちらの作品は10分程度で試聴できます。

デュカス:魔法使いの弟子

ミッコ・フランク指揮:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

「魔法使いの弟子」おすすめの名盤

管理人piccoloおすすめの名盤はこちら!

【フレンチ・コンサート】
シャルル・デュトワ指揮:モントリオール交響楽団

【収録曲】
1.シャブリエ:楽しい行進曲
2.デュカス:交響詩『魔法使いの弟子』
3.シャブリエ:狂詩曲『スペイン』
4.サティ:2つのジムノペディ(ドビュッシー編)
5.サン=サーンス:バッカナール(歌劇『サムソンとデリラ』から)
6.ビゼー:小組曲『子供の遊び』
7.トマ:歌劇『レーモン』序曲
8.イベール:喜遊曲(室内オーケストラのための)

録音:1987年

※こちらのアルバムは「Amazon Music Umlimited」でもお聴きいただけます。「フレンチ・コンサート」で検索していただければヒットします。

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デュトワ&モントリオール交響楽団の描く「魔法使いの弟子」は大仰でデフォルメされた演奏とは対極にある、瀟洒(しょうしゃ)なフランス音楽のエスプリを感じさせる、そんな演奏です。

程よく抑制された強奏と精緻なアンサンブルで、このコミカルで愉快な物語を色鮮やかに、そして軽快に描き出しているように感じます。

「フレンチ・コンサート」のタイトル通り、シャブリエ、サン=サーンス、イベールなどの作品を一緒に楽しめるオススメの1枚です。

デュカス「魔法使いの弟子」
シャルル・デュトワ指揮:モントリオール交響楽団

「Amazon Music Umlimited」で聴く「魔法使いの弟子」

「Amazon Music Umlimited」では次のような指揮者&オーケストラの「魔法使いの弟子」を聴くことが出来ます。

「L’apprenti sorcier」「The Sorcerer’s Apprentice」「魔法使いの弟子」などのキーワードで検索しています。

「ストコフスキー&フィラデルフィア管」「オーマンディ&フィラデルフィア管」「レヴァイン&ベルリン・フィル」「バーンスタイン&ニューヨーク・フィル」「クルト・マズア&ニューヨーク・フィル」「ショルティ&イスラエル・フィル」「ヤンソンス&オスロ・フィル」「アンセルメ&パリ音楽院管」「アンセルメ&スイス・ロマンド管」「アンドレ・プレヴィン&ロサンゼルス・フィル」「スラットキン&フランス国立管」「シャルル・デュトワ&モントリオール響」「ケント・ナガノ&モントリオール響」「シャルル・ミュンシュ&ボストン響」「アルミン・ジョルダン&フランス放送フィル」「ジャン・フルネ&オランダ放送フィル」「ミシェル・プラッソン&トゥールーズ市立管」「トスカニーニ&NBC響」「イーゴル・マルケヴィッチ&フィルハーモニア管」「グィード・カンテッリ&フィルハーモニア管」「イヴァン・マリノフ&ソフィア・フィル」「ヒューゴ・リグノルド&ロンドン・フィル」「カール・ランクル&ウィーン響」「ジャン・マルティノン&コンセール・ラムルー」

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上記の録音は本記事の投稿日現在、「Amazon Music Umlimited」で聴くことのできる「魔法使いの弟子」の一部を例示しています。すべての録音を表示しているわけではありませんのでご了承ください。

オススメのデュトワ&モントリオール交響楽団以外では、歯切れが良く、メリハリの利いた感じのミュンシュ&ボストン響、少し落ち着いたテンポで、個人的にはややふくよかな?雰囲気の魔法使いの弟子をイメージ出来るアルミン・ジョルダン&フランス放送フィルなども良いですね!

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無料体験の登録方法、「Amazon Music Umlimited」で聴くことの出来るクラシック作品についてはこちらの記事でご紹介していますので、合わせてお読みください。

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まとめ

ポール・デュカス作曲の「魔法使いの弟子」、いかがでしたでしょうか?

ゲーテの作品がモチーフになっていると聞くと、とても敷居が高いように感じますが、ユーモアに溢れた気軽に楽しめる短い作品です。

今回、この記事を書くのに際し、改めてディズニー映画「ファンタジア」を見直したのですが、この「魔法使いの弟子」の世界を実に見事に描写しているなと感心させられました。

子供の頃に部分的にみた記憶はあるのですが、本当にところどころしか覚えていませんでした。

小さなお子さんのいらっしゃるご家庭では、気軽にクラシックに触れる良い機会になるのではないでしょうか?

作品のストーリーがイメージ出来るようになったら、今度は音楽だけを聴いてみて、それぞれの描く「魔法使いの弟子」の世界に浸ってみると良いでしょう。

この「ファンタジア」「ファンタジア2000」には他にも多くのクラシックの名曲が使われています。また別の機会にご紹介できればと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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