グリーグ「ペール・ギュント」【あらすじと解説、名盤】

2020年9月13日

『ペール・ギュント』より「朝」

フルートが奏でる美しく清々しい朝の描写はやがてオーボエからオーケストラへと受け継がれていきます。

ますは有名な『ペール・ギュント第1組曲』第1曲「朝」をダイジェストで聴いてみましょう。

サカリ・オラモ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

作曲の背景

『ペール・ギュント』(Peer Gynt )作品23はノルウェーの作曲家、エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)が1875年に書き上げた同名の戯曲ための劇付随音楽です。

後年、劇付随音楽の中から4曲ずつを抜粋し編曲した管弦楽作品『ペール・ギュント第1組曲、第2組曲』としてよく知られています。

原作はグリーグと同じノルウェーの劇作家、ヘンリック・イプセン(1828-1906)が1867年に書いた戯曲で、ざっくりしたあらすじは後述しますが、かなり奇想天外である意味混沌とした内容です。

1874年、イプセンはこの戯曲を舞台で上演するにあたり、劇のための音楽を同じノルウェーで名を知られていたグリーグに依頼します。

グリーグは『ペール・ギュント』の長大で劇的な内容に戸惑ったようですが、翌1875年には作曲を完成させます。

1876年に行われた舞台上演は大成功を収め、グリーグはその後も再演されるたびにこの作品に改訂を加えました。

有名な組曲として出版されたのは1888年(第1組曲作品46)と1893年(第2組曲作品55)のことでした。

『ペール・ギュント』のあらすじ

物語は主人公のペール・ギュントが奇想天外な旅と冒険をして、最後は年老いて故郷に戻って人生を終えるまでの波乱万丈の生涯を描いた作品です。

かなり長大で混沌とした部分もあるので、ここでは『ペール・ギュント組曲』でピックアップされた場面を中心にご紹介したいと思います。

夢想家で大ぼら吹きのペール・ギュントは母のオーセと二人で貧しく暮らしています。

ペールは仕事も財産も無いのに「いつかは王になる」などと言うとんでもない若者でした。

ペールは、かつての恋人イングリッドが結婚すると聞き、結婚式に乱入しますが、そこで出会ったソルヴェイグという純情な女性に心を奪われます。

しかしかつての恋人の結婚が面白くないペールは結婚式の場からイングリッドを連れ去ります。

イングリッドもペールのことを忘れられずにいたのですが、ソルヴェイグのことが忘れられないペールはこともあろうにすぐにイングリッドのことを捨て去ります。

イングリッドはペールを恨み嘆きながら村に戻ることになります。(イングリッドの嘆き)

村の人々から追われ山奥へ逃げ込んだペールは魔王の娘に出会います。

ペールは魔王の娘に求婚し、自分が魔王になろうとたくらみますが、魔王の出す恐ろしい交換条件を聞いて仰天し、魔物たちに追われながらも命からがら逃げ出します。(山の魔王の宮殿にて)

村の人々からも魔物たちからも追われる身となったペールの元に全てを捨ててソルヴェイグがやってきます。

やがて山の中にあるペールの小屋で一緒に暮らすようになるソルヴェイグでしたが、そこへ魔王の娘が現れ二人を邪魔しようとします。

穢れのない純情なソルヴェイグを守ろうとするペールは、彼女にふさわしい自分になるべく、彼女を一人残したまま旅に出ます。

故郷に帰ると、母のオーセは既に死の淵にありました。ペールは死の不安を取り除いてやるために、オーセに優しく空想話を聞かせてやります。

オーセはペールの腕に抱かれたまま静かに息を引き取ります。(オーセの死)

その後、ペールは世界中を旅しているうちに、怪しげな商売が成功し財を成します。ところが、アフリカのモロッコ海岸で、全財産を積んだ船を奪われ、再び無一文になり砂漠をさまようことになります。(朝)

無一文になったペールですが、今度は盗賊が金品を隠していたところに出くわします。

その金品を丸ごといただいたペールは預言者になりすまします。

砂漠の酋長の元で預言者としてもてなされるペールですが、今度は酋長の娘アニトラが官能的な踊りでペールを誘惑します。(アラビアの踊り)(アニトラの踊り)

すっかりアニトラの魅力に虜にされるペールでしたが、結局はアニトラに騙され、全財産を奪われ再び無一文になります。

ペールがでたらめな人生を過ごす間、故郷ではソルヴェイグがあの山小屋でひたすらペールを待ち続けていました。(ソルヴェイグの歌)

その後もペールは波乱万丈の人生を繰り返しますが、やがて年老いたペールは、再び築いた財産を持って故郷に帰ろうとします。(ペール・ギュントの帰郷)

しかしここでも船が嵐で難破して、全ての財産を失くし着の身着のままで故郷に辿り着きます。

彼を待ちながら年をとり、盲目となってしまったソルヴェイグでしたが、ペールのことを許します。

そしてペールはソルヴェイグの膝の上で、彼女の歌う子守唄を聴きながら安らかに息を引きとり、その波乱に満ちた生涯を終えるのでした。

かなり端折った説明になりましたが、ペールの波乱万丈のドタバタ人生を描いたストーリーとなっています。

そこにはペールの「自分の人生とはいったい何であったのか?」と言う自問自答が繰り返され、結局は無意味な人生であったとの「無常観」とも取れる悲しい答えを導き出しますが、最後はソルヴェイグの許しと愛の中に自分の存在価値を見出すと言う哲学的な内容も含んでいるように感じます。

堂々巡りとも感じられるその人生劇には「キャンディード」と共通する部分も個人的には感じました。

『ペール・ギュント組曲』の解説

『ペール・ギュント第1組曲』作品46

第1曲「朝」

冒頭のダイジェスト動画でもご紹介した大変有名な曲です。フルートのソロで始まるあまりにも爽やかな朝の旋律は第4幕冒頭で全てを失ったペール・ギュントが迎えた朝の表情です。

第2曲「オーセの死」

シンプルに繰り返される3つの音が深い悲しみを湛えたようで印象的です。

ペール・ギュントの腕に抱かれ安らかに旅立つ母オーセの魂の音楽です。

第3曲「アニトラの踊り」

軽快なピチカットに乗って舞踏的な音楽が繰り広げられます。ペール・ギュントを誘惑する酋長の娘アニトラの踊りを表現しています。

第4曲「山の魔王の宮殿にて」

ファゴットの奏でる不気味で少しコミカルにも感じられる旋律に導かれ、魔王の宮殿での喧騒が描かれます。

『ペール・ギュント第2組曲』作品55

第1曲「イングリッドの嘆き」

冒頭の激しい音楽から一転して深く嘆くような旋律が支配します。

ペール・ギュントに捨てられたイングリッドの嘆きを表現した美しくも悲しい旋律がドラマティックに展開されます。

第2曲「アラビアの踊り」

ピッコロが奏でる愛らしく楽しい舞曲風の旋律が印象的です。中間部で現れる弦楽器の優雅な旋律も魅力的です。

原曲ではアニトラの独唱が加わり、やがて「アニトラの踊り」へと続いていきます。

第3曲「ペール・ギュントの帰郷」

冒頭の激しい音楽は帰郷しようとするペール・ギュントの船を襲う嵐でしょうか。

最後は嵐が過ぎ去ったかのように静かな和音で終わります。

第4曲「ソルヴェイグの歌」

自分を置いて旅立ったペール・ギュントを待ち続ける「ソルヴェイグの歌」は哀切な表情に満ち溢れ心を惹きつけます。

この「ソルヴェイグの歌」はペール・ギュントが息を引き取るときにソルヴェイグが歌った子守唄ではなく、第4幕の終盤にペール・ギュントを待ちわびるソルヴェイグが歌う歌です。

『ペール・ギュント』のyoutube動画

今回は『ペール・ギュント組曲』から抜粋してご紹介したいと思います。

グリーグ:『ペール・ギュント第1組曲』作品46
第1曲(0:00) 第2曲(4:03) 第3曲(8:10) 第4曲(11:27)

オットー・タウスク (Otto Tausk)指揮 リンブルフ交響楽団

グリーグ:『ペール・ギュント第2組曲』作品55より
第4曲「ソルヴェイグの歌」

ミッコ・フランク指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

こちらは歌曲版もご紹介しておきます。

Eduardo Strausser指揮 Croatian Radiotelevision Symphony Orchestra
ソプラノ:Evelin Novak

『ペール・ギュント』の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

グリーグ:『ペール・ギュント』第1組曲 Op.46
グリーグ:『ペール・ギュント』第2組曲 Op.55
シベリウス:交響詩『フィンランディア』 Op.26
シベリウス:悲しきワルツ Op.44-1
シベリウス:トゥオネラの白鳥 Op.22-2

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤンならではの美しく抒情的な演奏が印象的な1枚です。カップリングではシベリウスの小品も楽しめます。

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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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