ラヴェル「道化師の朝の歌」【解説と無料楽譜】
目次
作曲の背景
「道化師の朝の歌」(Alborada del gracioso)はフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(1875-1937)が1905年に作曲した5曲から成るピアノのための組曲「鏡」の第4曲です。
この1905年はラヴェルがフランスの作曲家の登竜門として有名なローマ大賞に5回目となる最後の挑戦をした年で、既に新進の作曲家として頭角を現し始めていたラヴェルが予備審査にも通らなかったことが大きなスキャンダルとなった年でした。
「ラヴェル事件」と呼ばれるこのスキャンダルについてはこちらの記事で詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
原題はスペイン語で記され、「ボレロ」や「スペイン狂詩曲」と同じくスペイン風の情緒を感じさせる作品です。
これはラヴェルがスペインに近いバスク地方の生まれで、父親はスイス出身ですが、母親はスペインとフランスに跨るバスク地方の人であるのと深い関係があるようです。
「gracioso」(グラシオーソ)の「道化師」と言う日本語訳はかなりの意訳のようですが、スペイン語特有のニュアンスがあるようで、他国語でも翻訳に苦心しているようです。
「Alborada」(アルボラーダ)はリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の中にも同じタイトルの曲がありますので、聴き比べてみるのも面白いかも知れませんね。
ラヴェルはこの作品を1918年に管弦楽版に編曲していますが、この頃には第1次世界大戦の兵役中に受けた心身の傷と、この前年の1917年に最愛の母を亡くした悲しみなどから極端に創作意欲が衰え、新作にはほとんど手を付けていない時期でもありました。
組曲「鏡」の全曲はこちらの記事でご紹介しています。
ラヴェル「道化師の朝の歌」解説
冒頭から刻まれる印象的なリズムが管弦楽版では弦楽器のピチカート(弦を指で弾く)と木管楽器に割り振られていて、ギターをつま弾いているかのような雰囲気を感じさせます。
そのリズムに乗って奏でられる旋律はスペインの舞曲風で管弦楽版ではオーボエからコールアングレ、クラリネットへと引き継がれていきます。(譜例①)
管弦楽版ではリズムを刻む三連符にカスタネットが加わり、スペインの雰囲気をさらに醸し出します。
三連符が続く場面ではピアノ版でも管弦楽版でも高速の連打を要求されますが、これもギターのトレモロを模倣しているのでしょうか。(譜例②)
楽曲は前半部を終え、中間部では気怠く漂うような雰囲気の旋律が奏でられます。
管弦楽版ではファゴットのソロで奏でられ、それに続く和音の響きは幻想的でもあります。(譜例③)
旋律はドラマティックに高揚した後、中間部を終え、再び冒頭のリズムを刻み始めますが、ここでは旋律はさらに自由に発展します。
最後は熱狂的な盛り上がりを見せた後、華やかに終曲します。
ピアノ版も管弦楽版もそれぞれに響きの違いがあり、ぜひ聴き比べて楽しんでみてください。
ラヴェル「道化師の朝の歌」youtube動画
ラヴェル:道化師の朝の歌(ピアノ版)
ピアノ:ベルトラン・シャマユ
ラヴェル:ピアノ・ソロ作品集
ピアノ:ベルトラン・シャマユ
ラヴェル:道化師の朝の歌(管弦楽版)
パブロ・エラス=カサド指揮:hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
ラヴェル「道化師の朝の歌」の無料楽譜
※「道化師の朝の歌」は組曲「鏡」の第4曲です。
上記のリンク先から無料楽譜をダウンロード出来ます。ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。
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