ホルスト「惑星」【解説と名盤】

2020年9月20日

ホルスト「木星」

沸き立つような弦楽器の調べに導かれ、ホルンが壮大なテーマを演奏します。

時には力強く、時には華麗な姿で演奏される旋律はローマ神話の主神ジュピターを彷彿とさせる堂々とした雰囲気です。

まずは第4曲「木星」を聴いてみましょう!

リッカルド・ムーティ指揮 シカゴ交響楽団

我は汝に誓う、我が祖国よ

最初にご紹介した「木星」の中間部の有名な旋律は日本では平原綾香さんがアレンジして「Jupiter(ジュピター)」と言うタイトルで発表してポップスの世界でも有名になりましたが、ホルスト自身も管弦楽付きのコラールとして編曲し、1926年に出版されました。

歌詞はイギリスの外交官、セシル・スプリング=ライス(1859-1918)によるもので、「I vow to thee, my country」(我は汝に誓う、我が祖国よ)と名付けられた歌詞の内容は愛国的なもので、ホルストの母国イギリスでは愛唱歌としてリメンブランス・デーと呼ばれる戦没者追悼記念日に歌われることが恒例となっています。

ここで歌詞の一部を引用しておきます。

I vow to thee, my country, all earthly things above,
Entire and whole and perfect, the service of my love;
The love that asks no question, the love that stands the test,
That lays upon the altar the dearest and the best;
The love that never falters, the love that pays the price,
The love that makes undaunted the final sacrifice.

我は汝に誓う、我が祖国よ、地上のあらゆるものよ、
あまねく、すべてのものにして完全なるもの、我が愛への奉仕。
何も問わない愛、試練に耐える愛、
すなわち最愛にして最良のものをも祭壇に差し出す愛、
怖気づかない愛、贖う愛、
すなわち、究極の犠牲をも不屈のものにする愛。

引用:「我は汝に誓う、我が祖国よキリスト教」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

「I vow to thee, my country」(我は汝に誓う、我が祖国よ)

Festival of Remembrance Royal Albert Hall

作曲の背景

組曲「惑星」作品32はイギリスの作曲家、グスターヴ・ホルスト(1874-1934)が1916年に書き上げた管弦楽曲です。

7つの曲にはローマ神話の神々にも相当する太陽系の惑星の名前が付けられていて、それぞれに占星術から着想を得た短い副題が付いています。

当初は「7つの管弦楽曲」として作曲がはじめられ、ホルスト自身も標題音楽と言うわけではないと語っているそうですが、個人的な感想としては各タイトル及び副題からのイメージを強く感じる作品のように思います。

ロンドンの王立音楽院でトロンボーンを学んだホルストらしく金管楽器が華やかに活躍するのが印象的です。

ちなみに海王星が発見されたのは1846年、冥王星が発見されたのはこの作品の完成から10年以上を経た1930年のことでした。

ホルストはこの新しく発見された惑星(現在は準惑星に分類)を8曲目に加えるべく作曲を始めたそうですが、残念ながら未完のまま1934年に他界しています。

※現在「冥王星」を含んだ形で録音、演奏されているものは他の作曲家により書き加えられたものです。

ホルスト「惑星」の解説

1.火星、戦争をもたらす者(0:40)
弦楽器が5拍子で緊張感のあるリズムを刻むと金管楽器群が低音で地の底を這うような不気味なテーマを奏でます。

音楽は徐々に大きくなるリズムとともにどんどん高揚していき、クライマックスに達すると破滅を迎えたかのように強烈な不協和音を残し終わります。

火星は戦争をもたらすといわれる軍神マルスが司ると言われています。

2.金星~平和をもたらす者(8:28)
遠くから風に乗って聴こえてくるかのようなホルンの調べ、木管楽器の美しく柔らかい響き、弦楽器の美しい旋律に導かれソロ・ヴァイオリンが繊細な音色で歌います。

オーボエやチェロのソロも美しく、愛と美の女神ヴィーナスの星にふさわしい優しく美しい曲です。

3.水星~翼のある使者~(16:21)
木管楽器があちらこちらと駆け回り、ソロ・ヴァイオリンで演奏される旋律がオーボエ、フルート、チェレスタ、クラリネットとリレーされていきます。最後はオーケストラ全体で演奏された後、冒頭の木管楽器の駆け回る姿が再び現れます。

占星術では火星と金星の間を駆け回るメッセンジャーの役割だそうです。落ち着きなく駆け回る雰囲気が印象的な曲です。

4.木星~快楽をもたらす者~(20:26)
ローマ神話の主神ジュピターに例えられた木星は「歓喜」「快楽」を表しているそうですが、ホルスト自身は官能的なものを表現しようとしたのではなく、それよりは祝祭的な喜びを表現したかったようです。

冒頭のダイジェスト動画でもご紹介した通り、堂々として壮大、壮麗な曲です。

5.土星~老いをもたらす者~(28:50)
フルートとハープの神秘的な響きに乗ってコントラバスが静かに語り出します。

終始ゆったりと歩みを進めるような同じリズムが反復されながら徐々に力強さを増し高揚していきます。

6.天王星~魔術師~(38:14)
金管楽器が響かせる力強い冒頭の4つの音はティンパニによって断ち切られとファゴットが少しおどけたような旋律を奏でます。

このおどけたような旋律とトリッキーなリズムは不思議な魔術師の雰囲気を表現しているのでしょうか。

音楽は徐々に高揚して力強さを加えていきますが、最後は冒頭の4つの音がいろんな楽器によって奏でられながら終わります。

7.海王星~神秘主義者~(44:15)
フルートをはじめとした木管楽器群が静かに神秘的な響きを奏でます。
きらめくように聴こえてくるチェレスタの音がまるで星屑のように感じられ、さらに幻想的な雰囲気を醸し出します。

舞台裏から聴こえてくる女声合唱の神秘的な声はまるで瞑想の世界に入り込んだかのような錯覚に陥ります。

その声はやがて徐々に遠ざかり静かに終曲します。

ホルスト「惑星」のyoutube動画

ホルスト:組曲「惑星」作品32

ディーマ・スロボデニューク指揮:ガリシア交響楽団

ホルスト「惑星」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

ホルスト:組曲『惑星』 op.32
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1981年

1960年代に行ったウィーン・フィルとの演奏会と録音でこの作品を一躍有名にしたカラヤンですが、今回ご紹介するのはそれから20年後の1981年に手兵ベルリン・フィルと行った録音です。

カラヤンならではのベルリン・フィルの華麗な響きを最大限に引き出した力強く、色彩感溢れる輝かしいサウンドによるダイナミックな演奏が楽しめる1枚です。

「木星」では御年73歳の録音とは到底思えない、瑞々しく生気に満ち溢れた心が沸き立つような演奏を聴かせてくれています。

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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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