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金の笛?銀の笛?フルートは木管楽器?

フルート奏者は個性的?

次にご紹介する動画はいずれもドイツが誇る世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルの演奏動画です。

いずれも3分程度のダイジェスト動画ですが、今回はフルート・パートに注目してお聴きください。

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

アダム・フィッシャー指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

シューベルト:交響曲第7番「未完成」

サイモン・ラトル指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」より

クラウディオ・アバド指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

いかがでしたか?

同じオーケストラのフルート・セクションでも、使用されているフルートの材質は金製、銀製、木製と実に色とりどり!?

オーケストラの同じパート内でこれほど見た目の異なる楽器を使っているのはフルートくらいではないでしょうか?

ちなみに「新世界より」では1番を担当している首席奏者のエマニュエル・パユ氏は金製のフルートを2番を担当しているイェルカ・ヴェーバー氏は銀製のフルートを使用されています。(演奏動画:01:42参照)

次の「未完成」では1番担当の首席奏者、アンドレアス・ブラウ氏(2014退団)は木製のフルートを、2番奏者は先ほどと同じで銀製のフルートを(01:43参照)、最後の「英雄」では1番を担当しているのは同じくアンドレアス・ブラウ氏ですが、この当時は銀製のフルートを使用されていて、2番奏者のミヒャエルハーゼル氏は木製のフルートを使用されています。(01:32参照)
※「未完成」は2012年、「英雄」は2001年の演奏動画です。

それにしても個性豊かですね?同じパート内でこんな風に違う材質の楽器を使って、演奏に支障はないのでしょうか?上手く調和できるのでしょうか?

金のフルート、銀のフルート、違いと特徴を解説

金製のフルートと銀製のフルート、そして木製のフルートの一番大きな違いとは?

それは・・・ズバリ!

お値段!!(笑)

冗談のように聞こえるでしょうが、個人的には大まじめに一番大きな違いだと思っています。

まぁ、そのお話は次にするとして、そもそもバッハの時代には今よりもっとシンプルな構造の木製であったフルートが、洋銀と呼ばれる合金や銀を中心とする金属製に徐々に変わっていったのは19世紀の半ばから後半にかけてのこと。

様々な改良が加えられると共に、後期ロマン派の作品に代表されるオーケストラの大規模化に伴い、より大きな音量が求められるようになったこともあり、徐々に台頭していった金属製のフルートはやがて木製のフルートにとって代わり、20世紀の半ばにはすっかり主流になりました。

銀製の楽器よりさらにパワフルで豊かなボリュームが得られるとされる金製のフルートは20世紀の後半にはオーケストラを席巻し、果てはプラチナ製のフルートまで登場しますが、今では一時ほど使っている奏者は少ないのではないのでしょうか?

逆に20世紀の後半から現在にかけては木製のフルートを使う奏者が増えてきたように感じますが、これには古楽器による演奏の流行と無縁ではないように思います。

現在では金製、銀製のフルートを愛用される奏者を中心に若干の木製フルートを愛用される奏者が混在していると言うのが現状ではないでしょうか。

大規模な管弦楽曲の場合、フルートは4人以上になる場合もありますので、一つのオーケストラに金、銀、木製のフルートをそれぞれ持った奏者が並ぶこともそう珍しいことではありません。

冒頭の動画でご紹介したアンドレアス・ブラウ氏の様にキャリアの途中で、金属製の楽器から木製の楽器へ変えられる方もいらしゃいますし、中には曲によって違うメーカーや違う材質のフルートを吹き分けられる奏者の方もいらっしゃいます。

ちなみに「英雄」で木製のフルートを吹いていたミヒャエルハーゼル氏も若い頃は金属製のフルートを吹いていらっしゃいました。

音色の違いは一般的には銀製のフルートに比べて金製のフルートはより華やかで大きな音量が得られるとされ、木製の楽器はより素朴で柔らかく温かい音が得られるとされています。

ただこれには科学的な根拠は見出されていないそうで、管体の材質によって音が変わることはないとされる文章も見かけますが、個人的には材質による音色の違いは絶対にあると思っています。

これは管理人の私見で恐縮ですが、材質による音色の違いよりは奏者の個性や奏法による音色の違いの方が圧倒的に影響力が大きく、特定の奏者が金のフルートと銀のフルートを吹き比べたのを聴き分けるのはなかなか困難なことだと思っています。

もし仮に材質の違いによる音色の違いがそんなに大きなものであれば、オーケストラのフルート奏者は既に楽器の材質を統一しているはずですし、指揮者もそのように指示していることでしょう。

実際、オーケストラのレパートリーの中には1番奏者と2番奏者がリレーして1つのフレーズを作る箇所が無数にあります。

次の楽譜と演奏動画はラヴェル作曲「ダフニスとクロエ」の有名なフルートソロに続き、1番フルートと2番フルートが華麗に音階をリレーしていく場面です。(譜例:演奏動画01:57)

このリレーはさらにこの後、ピッコロとアルトフルートにもリレーされて行きます。

譜例:ラヴェル「ダフニスとクロエ」より(上段=1番フルート、下段=2番フルート)

ラヴェル「ダフニスとクロエ」より

チョン・ミュンフン指揮:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団
フルート:マガリ・モニエ

動画を見る限り、1番奏者は金のフルートを2番奏者は銀のフルートを使用しているように見えます。

このような場面で1番奏者と2番奏者の音色や音量に明らかな違いがあれば、かなり違和感がありませんか?

フルートの材質によって音色に大きな違いがあり、音楽表現に大きな影響を及ぼすようであれば材質を統一しているでしょうが、実際にはそんなことはありません。

ただ、聴き手以上に演奏しているフルート奏者にとっては吹いた感覚が異なり、こだわりの出る部分なのだと思っています。

次の動画では1892年製の銀製の楽器と2019年製の金製(10金)の楽器を吹き比べています。

演奏されているのはブラームス「交響曲第4番」ドヴォルザーク「交響曲第8番」の有名なフルートのソロの部分です。
※2曲とも1880年代の作品ですので、このフルートの製作年代と同時代です。

100年以上前のヴィンテージの銀製フルートと最新の金製のモダンフルート、みなさんもよく耳を澄まして聴き比べてみてください。音色の違いはいかがでしょうか?

Old Louis Lot Flute vs. Modern Brannen Flute [19th vs. 21st Century Flute]

フルート:Lance Suzuki

金のフルート、銀のフルート、気になるお値段は?

この記事をお読みの方の中には「金のフルート?いったい、いくらくらいするのだろう?」と興味をお持ちの方や、「憧れのフルート、いつか習ってみたいけど?」などとお考えの方もいらっしゃるかも知れません。

そこでそんな方のためにフルートのお値段をザックリと解説してみたいと思います。

いろんな種類の管楽器の中で、部活で活動する中高生、社会人の愛好家から、音楽を専門に学ぶ方、プロの奏者まで、最も演奏される人口は多いのがフルートではないでしょうか?

そんなフルートに使われる材質は最も多いであろう銀製の他、先ほどの記事でご紹介したようにプロ奏者にも愛用される方の多い、金製、木製、プラチナ製など多岐に渡っており、その材質によりお値段もピンキリで大きく違います。

中でも金、プラチナなどの希少金属が使われているフルートは他の管楽器に比べると、ちょっと「お求めやすいお値段で・・」とはいかないようです。

まず銀製のフルートについてですが、キイなどの部分も全てが銀で出来たいわゆる「総銀製」のモデルで、大手国内メーカー(ムラマツ、サンキョウ、ヤマハ等々)の製品なら50万円100万円前後で販売されています。

同じ「総銀製」のフルートの中でも大きな価格差があるのはいわゆる「ハンドメイド」の楽器であるかどうかと言う点とメカニックな部分など細部の作りの違いが影響していますが、かなり専門的なお話になりますのでここでは割愛させていただきます。

同じ「総銀製」のフルートでも、これが海外の有名メーカー(パウエル、ヘインズ等々)のフルートとなるとお値段もグンと跳ね上がり、「総銀製」&「ハンドメイド」となると為替相場にも影響されますが、200万円前後で販売されています。

これらの「総銀製」の楽器はフルート専攻の学生からプロの奏者、アマチュア愛好家の方まで広く使われています。

「やっぱり結構なお値段が・・・」とお思いの方もいらっしゃると思いますが、「総銀製」のモデル以外にも、「※管体のみ銀製」「※頭部管のみ銀製」「洋銀(洋白)と呼ばれる合金製」のモデルだと大手国内メーカーのものでも10万円40万円くらいで販売されています。
※フルートは3分割されたパーツを継いで組み立てるため、息を吹き込む部分(唄口)を含む部分を頭部管と言います。管体のみとはキイなどについては銀製でないと言う意味です。

この価格差は管体に占める銀製の部分が多くなるにつれて、お値段も上がると考えていただければ結構です。
※洋銀製のフルートであれば10万円前後で購入可能です。

「趣味でフルートをはじめてみたい!」「部活で頑張る子供に新しいフルートを買ってあげたい!」などとお考えの方や、「フルート=高い!」と先入観をお持ちの方も、材質にこだわらなければ10万円~20万円でも新品のフルートを購入することは可能だと言うことを知っていただければと思います。

これも私見で恐縮ですが、プロのフルート奏者が10万円の洋銀製フルートを吹いてみせて「このフルートは200万円で購入したものです!」と言っても誰も不思議に思わないでしょうし、逆に初心者の方があまりに高価なフルートを購入しても、その違いがわかるまでには相当な年月がかかるのではないでしょうか?

少し話が横道にそれましたが、次は金製のフルートのお値段について解説したいと思います。

金の純度は24分率で表され、24K=24金が純金です。

フルートに使用される金はメーカーによっても異なりますが、9Kから24Kまで実に様々な純度の金が使用されていて、また管体=金製、キイ=銀製などの様々な組み合わせやメカニズムのオプションによって幅広い価格帯になっています。

かなりザックリした話になりますが、大手国内メーカーのもので管体のみ9K、10Kのフルートなら200万円弱で販売されています。

24Kのフルートも販売されていますが、純金は硬度が柔らかいため熱に弱く、型崩れしたり傷がついたりしやすいという特徴もあるため若干の金属が混ぜられてあり、お値段も高額で使用されている方はそんなに多くないように思います。

プロ奏者の方が多く使用されているのは14Kもしくは18Kのフルートではないかと思います。

この14K、18Kのフルートでお値段は300万~900万程度、これも管体以外のキイなどの部分が金製かどうかによって大きく価格が異なります。海外のメーカー製でもよく似た価格帯ですね。

ちなみに24Kのフルートなら1000万円前後!

一時期、流行ったプラチナ製のフルートも700万円~1000万円前後で販売されています。

これらの高額なフルートは個別に受注生産される場合もあるので「時価」なんていうお寿司屋さんみたいな表示がされているケースもあります。(笑)

いずれにしてもまるでソロバンを入れたような小さなフルートケースの中に高級車が買えるくらいの楽器が入っていると思うと持ち運びにも気を遣いそうですね?

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フルートは木管楽器?

「フルートは金属製なのに木管楽器?」と言う疑問をよく耳にします。

ウィキペディアには「木管楽器は奏者の唇の振動によらない方法で発音する管楽器の総称」と書かれています。

なるほど上手く説明したもので、奏者の唇の振動で音を出す金管楽器との発音構造の違いによって分類していると言うことですね。

これなら明らかに金属製のサクソフォンも木管楽器に分類されている説明が付きますね。

ただ、発音構造と言う点ではオーボエ、クラリネット、ファゴットと言ったオーケストラで活躍する他の木管楽器がリードと呼ばれる薄い木製の板を振動させるのに対し、フルートは奏者によってコントロールされた息が楽器の吹き込み口(唄口)のエッジに当たって発音していると言う点では、他の木管楽器とは異なり、音色も特徴的だと言えます。

発音原理としてはコーラの瓶のエッジに息を当てて音を出しているような感じですね。

ここまでは発音構造の点から木管楽器に分類されていると言うお話でしたが、そもそも歴史的にみても19世紀半ばまで、金属製のフルートが普及するまではフルートと言えば木製であって、冒頭の動画でご紹介したように、現在でも木製のフルートを愛用されているプロ奏者の方も少なからずいることを考えると木管楽器に分類されていることに何ら違和感を感じないようにも思えます。

ただ一つ説明を付け加えると動画でご紹介した木製のフルートはあくまでキイシステム等のメカニズムは現代の仕様になっており、いわゆる「モダンフルート」ですが、キイシステム等の改良が加えられる前のバッハなどが活躍したバロック時代に使用されていたスタイルのフルートに関しては「フラウト・トラヴェルソ」と呼んで、区別されていることをご理解ください。

フラウト・トラヴェルソは音量も音色もモダンフルートとは大きな違いがありますが、それに関してはまた別の機会にご紹介したいと思っています。

最後に冒頭にご紹介したベルリン・フィルで活躍されたアンドレアス・ブラウ氏の木製のフルートの音色を聴いてみましょう。

ご紹介する動画は2014年にベルリン・フィルを退任される際の「お別れ公演」として演奏された協奏曲のダイジェスト動画とアンコールとして演奏された無伴奏のソロ曲です。

会場のベルリン・フィルの本拠地、「ベルリン・フィルハーモニー」の大ホールは2440人収容の大きなホールです。

その大きなホールに響き渡るフルートの音色はとても「木の笛」とは思えない柔らかく豊かな音で魅了されます。

ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調より

ヤニック・ネゼ=セガン指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フルート:アンドレアス・ブラウ

ドビュッシー:シランクス

フルート:アンドレアス・ブラウ

まとめ

いかがでしたか?

今回の記事ではオーケストラで使われる様々なフルートの材質の違いとその特徴について解説してみました。

個人的な意見としては材質による音色の違いはあると考えていますが、それはフルート同士でアンサンブルをする上で違和感を感じる程の違いではなく、その音色を決定づけるものは、むしろフルート奏者の奏法に大きく依存していると考えています。

ただこうしたフルートの材質の違いに注目してオーケストラ作品を視聴するのも面白いかも知れませんね?

特にソロの曲や協奏曲などで自分の好きなアーティストを見つけるのもクラシックの楽しみ方のひとつです。

機会があればフルートの歴史フラウト・トラヴェルソについても触れてもみたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事でご紹介したフルートの魅力が存分に楽しめるこちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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