ショスタコーヴィチ「祝典序曲」解説とおすすめの名盤

2021年5月30日

ショスタコーヴィチ「祝典序曲」解説

「祝典序曲」 イ長調 作品96は旧ソビエトの作曲家、ドミートリイショスタコーヴィチ(1906-1975)が作曲した管弦楽曲です。

この作品は1954年にモスクワのボリショイ劇場で行われたロシア革命(十月革命)37周年記念演奏会で披露されました。

ボリショイ劇場管弦楽団からの委嘱により、1947年にロシア革命(十月革命)30周年を記念して既に作曲されていたものを改作したとされていますが、1952年のヴォルガ・ドン運河の開通を記念して作曲されたとの説もあり、作曲の経緯に関しては不明な部分も多いようです。

ショスタコーヴィチは演奏会の数日前になって急遽作曲を依頼され、わずか3日で書き上げたと伝えられていることからも、既に出来上がっていた作品を改作したと考えるのが妥当なような気もします。

この作品ではショスタコーヴィチが過去に作曲した作品のモチーフが取り上げられています。

作品は冒頭、トランペットの晴れやかで爽快なファンファーレで幕を開けます。

この旋律はショスタコーヴィチが1944年頃に長女ガリーナの誕生日のために作曲した、ピアノのための7つの小品『子供のノート 』作品69の第7曲「誕生日」(露:День рождения)から取られています。

とても短い作品なので、少し聴いてみましょうか。
※動画は第7曲「誕生日」から再生されるように設定しています。

この晴れやかなファンファーレに続き、クラリネットから弦楽器へと受け継がれる第1主題が、颯爽と駆け抜けていきます。

この第1主題も1949年に作曲されたオラトリオ「森の歌」作品81の第5曲「スターリングラード市民は前進する」(露:Сталинградцы выходят вперёд)の中から引用されたものです。

ショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」作品81より
第5曲「スターリングラード市民は前進する」

このオラトリオ「森の歌」作品81は1948年に旧ソビエト共産党によって行われた「ジダーノフ批判」によって西洋モダニズムの悪影響を受けていると糾弾され、厳しい立場に置かれたショスタコーヴィチが、当局からの批判をかわすために作曲した作品です。

これは当時のソビエトの最高指導者、スターリンが推し進めていた植林事業を褒め称える内容の作品で、特にこの第5曲ではスターリンの名前を冠したスターリングラード市民があらゆる困難に打ち勝って前進する姿を描いています。

中間部に現れるホルンとチェロによる第2主題はとても流麗で抒情的ですが、ここでもその旋律はスピード感を失うことなく演奏され、終始ドライブ感を失わないままクライマックスへと向かいます。

最後は再び冒頭のファンファーレが「バンダ」と呼ばれる金管楽器の別動隊を加えて華やかに響き渡り、クライマックスを迎えます。

演奏時間は10分にも満たない短い作品ですが、終始スピード感とドライブ感を失わない颯爽とした魅力に溢れる作品です。

その疾走感は同じロシアの作曲家、ミハイル・グリンカ(1804-1857)がこの作品のおよそ100年前に作曲した歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲を彷彿とさせるものがあり、その影響を指摘する声もあります。

尚、この「祝典序曲」は後年、吹奏楽用に編曲されて大変な人気を博し、吹奏楽のコンサートでも演奏機会の多い作品です。日本国内で演奏される機会は原曲のオーケストラ版よりも圧倒的に多いと思います。

ご紹介するYouTube動画では吹奏楽版もご紹介していますので、ぜひオリジナルのオーケストラ版と聴き比べてお楽しみいただければと思います。

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ショスタコーヴィチ「祝典序曲」YouTube動画

ショスタコーヴィチ「祝典序曲」(オリジナル版)

ショスタコーヴィチ「祝典序曲」イ長調 作品96

パブロ・エラス=カサド指揮:hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)

ショスタコーヴィチ「祝典序曲」(吹奏楽編曲版)

ショスタコーヴィチ(上埜孝編曲):「祝典序曲」

若林義人指揮:龍谷大学吹奏楽部

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ショスタコーヴィチ「祝典序曲」おすすめの名盤

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【収録曲】
ショスタコーヴィチ
・交響曲第6番ロ短調 Op.54
・劇付随音楽『リア王』組曲
・祝典序曲 イ長調 Op.96
・交響曲第7番ハ長調 Op.60『レニングラード』

アンドリス・ネルソンス指揮
ボストン交響楽団
録音時期:2017年、2018年

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ショスタコーヴィチの交響曲などのカップリング曲として収録されることの多い「祝典序曲」ですが、このアルバムはネルソンスが音楽監督を務めるボストン交響楽団とのショスタコーヴィチ交響曲全曲録音シリーズ第4弾となる作品です。

「祝典序曲」の録音は旧ソ連出身の指揮者とオーケストラによるものも多いですが、1978年、当時まだソ連領だったラトヴィアに生まれたアンドリス・ネルソンスは、ソビエトの音楽的伝統のもとで教育された、最後の指揮者の一人でもあります。

冒頭とクライマックスに現れる印象的なファンファーレは重厚で大仰に感じる録音も多いですが、ネルソンスはすっきりと明瞭でシャープな印象のアプローチをしているように感じます。

テンポアップしてからの主部では勢いに任せて超快速に演奏される録音も面白いかも知れませんが、ここでは快適なテンポにコントロールされ勢いと言うよりも軽快さとクリアさが心地よいドライブ感を生み出しているように感じます。

ショスタコーヴィチ「祝典序曲」イ長調 作品96
アンドリス・ネルソンス指揮:ボストン交響楽団

大仰なファンファーレと「イケイケ」の勢いのある演奏が好みの方は【スヴェトラーノフ&ロシア国立交響楽団盤】【ネーメ・ヤルヴィ&スコティッシュ・ナショナル管弦楽団盤】あたりがオススメです。

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【オリジナル版】

「リッカルド・ムーティ&フィラデルフィア管」「アンドリス・ネルソンス&ボストン響」「ドゥダメル&シモン・ボリバル・ユース・オケ」「アシュケナージ&フィルハーモニア管」「マキシム・ショスタコーヴィチ&ロンドン響」「グジェゴシュ・ノヴァーク&ロイヤル・フィル」「チャールズ・マッケラス&ロイヤル・フィル」「カレル・アンチェル&チェコ・フィル」「ジェームズ・デプリースト&ヘルシンキ・フィル」「トゥガン・ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル国立管」「ネーメ・ヤルヴィ&ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管」「アンドリュー・リットン&ダラス響」「アーサー・フィードラー&ボストン・ポップス・オケ」「札幌交響楽団」他

【吹奏楽編曲版】

「ベルギー・ギデ・ロイヤル・シンフォニック・バンド」「陸上自衛隊中央音楽隊」「東京佼成ウインドオーケストラ」「武蔵野音大ウインドアンサンブル」「近畿大吹奏楽部」他

「Amazon Music Unlimited」「ショスタコの祝典」を聴くなら、おすすめの名盤のコーナーでご紹介した「アンドリス・ネルソンス&ボストン響」「ネーメ・ヤルヴィ&ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管」の他、作曲者の長男「マキシム・ショスタコーヴィチ&ロンドン響」も軽快なタッチと快速なテンポで面白いですよ!

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まとめ

ショスタコーヴィチ作曲の「祝典序曲」、いかがでしたでしょうか?

奇しくもこの作品が発表された前年の1953年、ショスタコーヴィチの人生に大きな影響を及ぼしたスターリンがこの世を去ります。

スターリンの独裁体制下で硬直していく社会主義リアリズムの風潮はショスタコーヴィチの創作活動を左右するものであり、もしショスタコーヴィチが違う時代に生まれていたら、その作風はまた違うものになっていたかも知れません。

ショスタコーヴィチがこの「祝典序曲」の中に織り込んだオラトリオ「森の歌」作品81の第5曲「スターリングラード市民は前進する」は後年「コムソモールは前進する」と言うタイトルに変更され、スターリンを称える歌詞も変更されます。

スターリンの死の翌年に発表されたこの「祝典序曲」のファンファーレに「誕生日」と言うタイトルの曲がモチーフとして使われ、華やかなオーケストレーションで描かれていることに、ショスタコーヴィチの真意を深読みしようとする向きもあるようです。

そんな作曲の背景は別としても、実に爽快でスピード感に満ちた魅力あふれる作品です。

私自身も中学生の時、吹奏楽を始めたばかりの頃に先輩方が演奏をするのを聴き、心奪われた記憶が今でも鮮明に残っています。

華やかな冒頭のファンファーレ、疾走する第1主題と美しく流麗な第2主題、圧巻は冒頭のファンファーレが回帰する場面です。

バンダが加わり、より壮麗となったファンファーレの主題に木管楽器が装飾するように絡みつき、バスドラムの裏打ちが心を打つように響きます。

あれから40年が経った今でもその魅力は変わることなく、この曲を聴くと思わず鳥肌が立ってしまいます。

それはまるで雲ひとつない青空の下で腰に手を当てて飲むコーラの爽快感に似ています。(笑)

クラシック初心者の方も気軽に楽しめる作品ですので、ぜひ聴いてみて下さいね!

最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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