チャイコフスキー「交響曲第4番」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
オーケストラがフィナーレの開幕を爆発的に告げると弦楽器がエネルギッシュに旋律をかき鳴らします。
まずは第4楽章の冒頭部分をダイジェストで聴いてみましょう。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
この映像はこちらのDVDに収録されています。
作曲の背景
交響曲第4番へ短調作品36はロシアの作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1878年に書き上げた交響曲です。
1877年、ロシアの鉄道王の未亡人メック夫人から資金の援助を受け始め作曲に専念することが出来るようになったチャイコフスキーでしたが、私生活の面では7月に短い交際期間にもかかわらずアントニナ・イワノヴナと突然の結婚をしたものの、わずか20日ばかりで彼女のいるモスクワを逃げ出してしまいます。
この結婚はチャイコフスキーを精神的に追い詰めたようで、9月にモスクワに戻ってきたチャイコフスキーはついにはモスクワ川で自殺を試みるまでに至っています。
再びモスクワを単身離れたチャイコフスキーは生涯妻と顔を合わせることはありませんでした。
その後、メック夫人から提供を受けた資金でヨーロッパを巡ったチャイコフスキーは12月にはイタリアのヴェネツィアを訪れます。
この風光明媚な都市のホテルに2週間の間滞在し、作曲したのが今回ご紹介する交響曲第4番です。
1878年2月、サンクトペテルブルクでチャイコフスキーの友人、ニコライ・ルビンシテイン(1835-1881)の指揮で初演されたこの作品は、その後14年にわたってチャイコフスキーを経済的に支援し続けたメック夫人に献呈されています。
チャイコフスキー「交響曲第4番」解説
第1楽章:Andante sostenuto – Moderato con anima
冒頭、ホルンからトランペットへと引き継がれる重厚なファンファーレが強い印象を残します。
チャイコフスキーはメック夫人に宛てた手紙の中で「交響曲全体の核となる示導楽想、『運命』。われわれが幸福に向かおうとしてもその実現を阻む、運命の力」と書き残しています。
ファンファーレが終わると弦楽器から木管楽器へと陰鬱な旋律が受け継がれていきます。重苦しくどこか憂いを湛えたような旋律が徐々に発展していき、途中少し安らげる旋律が現れ明るい陽ざしが差し込みそうになりますが、再び暗雲が立ち込めるかのように冒頭のファンファーレが鳴り響きます。
「かくして人生は、幸福のはかない夢や幻影と、苛酷な現実との果てしない交代なのである。」とチャイコフスキーが書き残しているように、はかない夢を夢想するかのような淡い旋律が何度もあらわれますが、冒頭のファンファーレにより再び苛酷な運命に引き戻されます。
第2楽章:Andantino in modo di canzona
疲れ切った足を引きずりながら歩いているかのようなオーボエの旋律ではじまります。
チャイコフスキーは「仕事に疲れ、本を手に一人座っているが、知らぬうちに落としてしまう、そんな夕暮れに感じるメランコリー」と書き残しています。
もの悲しい雰囲気に支配されるこの楽章も終盤に明るい兆しを垣間みせますが、再び深く沈み込むように静かに終わっていきます。
それはまるでいつの間にか疲れて眠りにつくかのような印象です。
第3楽章:Scherzo. Allegro
雰囲気はがらりと変わり弦楽器のピチカート(弦を指ではじく奏法)で軽快にはじまります。
途中から木管楽器の軽やかな旋律が加わり、加速度を増しながら最後は再び弦楽器のピチカートで静かに曲を終えます。
第4楽章:Finale. Allegro con fuoco
これまでの重苦しくのしかかってくる運命を払拭するかのような華やかなフィナーレです。
チャイコフスキーは「再び運命の力でわれに返らされても、誰もあなたの悲哀には気づかない。この世の全てが悲しいなどと言ってはいけない。他人の喜びのなかで喜びなさい。そうすれば生き続けることができる。」と書き残しています。
弦楽器が激しく駆け巡るかのような旋律が印象的です。終盤では第1楽章冒頭のファンファーレが再び姿をあらわし、曲をクライマックスへと導きます。
チャイコフスキー「交響曲第4番」youtube動画
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調作品36
第1楽章(00:25) 第2楽章(20:00) 第3楽章(30:40) 第4楽章(36:38)
カルロス・ミゲル・プリエト指揮:フランクフルト放送交響楽団
チャイコフスキー「交響曲第4番」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
チャイコフスキー
交響曲第4番へ短調 作品36
序曲《1812年》 作品49
幻想序曲《ロメオとジュリエット》
ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
録音:1984,86年
数多くの録音を遺している巨匠ショルティですが、不思議なことにチャイコフスキーの「運命の交響曲」と呼ばれるこの第4番だけは長らく録音されることがありませんでした。
71歳のショルティが遺した唯一の録音となった本作品は引き締まった筋肉質なブラス・セクションの響きがいかにもシカゴ響と言う感じで魅力的です。
終楽章はかなりアグレッシブなテンポで攻めている印象で、テンポの緩急が実に巧みで運命を感じさせる金管楽器の咆哮が心に残る1枚です。
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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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参考資料:「作曲家別名曲解説ライブラリー、チャイコフスキー」音楽之友社編1993年4月
「兵庫芸術文化センター管弦楽団第68回定期演奏会PROGRAMNOTE」