モーツァルト「クラリネット五重奏曲」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
美しく柔らかい弦楽器の短い序奏に続きクラリネットが優美に旋律を奏でます。
まずは第1楽章の冒頭部分をダイジェストで聴いてみましょう。
Omega Ensemble
クラリネット:David Rowden
作曲の背景
クラリネット五重奏曲イ長調K.581はオーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1789年に作曲したクラリネットと弦楽四重奏のための室内楽曲です。
1787年、父レオポルトを亡くしたモーツァルトは生活にも困窮していたのかこの頃から借金依頼の手紙が多数遺されるようになります。
しかし創作面ではこの年に「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を、翌1788年には三大交響曲と呼ばれる「第39番」「第40番」「第41番」など代表作を次々と作曲します。
そして翌1789年にはこの「クラリネット五重奏曲」をモーツァルトの友人でもあったウィーン宮廷楽団で活躍したクラリネット奏者のアントン・シュタードラー(1753-1812)の為に作曲しました。
本来はシュタードラーが改良を加えて用いていたバセットクラリネットを想定して作曲されたものですが、後年モーツァルトの死後に出版される際に通常のクラリネットでも演奏できるように書き換えられています。
バセットクラリネットについては「クラリネット協奏曲」の記事に詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。
モーツァルト自身が手紙の中で「シュタドラー五重奏曲」と書き残していることもあり、そのような愛称で呼ばれることもあります。
いずれにしてもアントン・シュタードラーと言う名手の存在がなければ、「クラリネット五重奏曲」「クラリネット協奏曲」と言う2つの名作は誕生しなかったかも知れませんね。
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」の解説
第1楽章:Allegro
弦楽四重奏が奏でる優しく美しい序奏に続き、クラリネットが柔らかい音色で鮮やかなアルペジオ(分散和音)を奏します。
弦楽四重奏とクラリネットは時には明るく朗らかな表情で、時には短調の憂いを帯びながら、常に対話をするかのように旋律を交差させます。
第2楽章:Larghetto
晴れた空に真っ白な雲がゆったりと流れているかのような澄み切った美しさを感じさせる楽章です。
クラリネットは大きな弧を描くようにゆったりとした旋律を歌ったり、美しい装飾音符を散りばめながら優雅に音階を駆け上がったりします。
第3楽章:Menuetto
漂うような雰囲気の前楽章とは雰囲気が変わり、しっかりとした感じのメヌエットです。
メヌエットに続く最初のトリオは弦楽四重奏のみの短調で演奏され、メヌエットに回帰した後の2回目のトリオはクラリネットを交え長調で雰囲気を変えて演奏されます。
第4楽章:Allegretto con variazioni
弾むような軽快な主題が印象的な変奏曲形式の楽章です。
第1変奏では弦楽四重奏が奏でる主題の上でクラリネットが自由にいきいきと変奏をします。
第2変奏は弦楽器の刻む三連符の上で第1ヴァイオリンが優雅に変奏します。
第3変奏は短調に転じ、陰影を帯びながら弦楽器中心の変奏を奏でます。
第4変奏はクラリネットと第1ヴァイオリンが交互に五線譜の上を忙しく駆け巡ります。
第5変奏はアダージョでゆったりと優しく歌われる旋律が魅力的です。
最後は冒頭の主題がアレグロでいきいきと演奏され終曲します。
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」のyoutube動画
モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調K.581
第1楽章(00:00) 第2楽章(09:03) 第3楽章(14:50) 第4楽章(21:41)
Armida Quartet
クラリネット:ザビーネ・マイヤー
ザビーネ・マイヤーは1959年生まれドイツ出身のクラリネット奏者です。
シュトゥットガルト音楽院で学んだあとバイエルン放送交響楽団に入団しますが、この人の名を一躍有名にしたのはその後にベルリン・フィル入団を巡って芸術監督のカラヤンとオーケストラが対立する騒動に発展したいわゆる「ザビーネ・マイヤー事件」です。
その後はソリストや室内楽、指導者として幅広い分野で活躍する現代を代表するクラリネット奏者です。
「ザビーネ・マイヤー事件」に関しては「カラヤン」の記事で詳しく書いていますので、関心のある方はこちらをご覧ください。
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」の名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
【収録曲】
モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調 K.581
ブラームス:クラリネット五重奏曲変ロ長調 op.115
クラリネット:アルフレート・プリンツ
ウィーン室内合奏団
録音時期:1979年、1980年
アルフレート・プリンツ(1930-2014)はウィーンに生まれ名手レオポルト・ウラッハに学び、その師の後を継いでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者として活躍したクラリネット奏者です。
プリンツの奏でるクラリネットの音色はとても上品で美しく、演奏スタイルも自然で全く誇張した部分のない上質な名演です。
ウィーン室内合奏団は1970年、当時のウィーン・フィルのコンサートマスターであったゲルハルト・ヘッツェルの提唱で創設された、ウィーン・フィルのトップ奏者たちによる合奏団です。
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