ショパン「幻想即興曲」【解説と名盤、無料楽譜】
目次
作曲の背景
「幻想即興曲(Fantaisie-Impromptu)」のタイトルで有名な即興曲第4番 嬰ハ短調 作品66はポーランドの作曲家、フレデリック・ショパン(1810-1849)が作曲したピアノのための作品です。
ショパンは生涯に4曲の即興曲を作曲していますが、生前に出版されたのは第1番から第3番までの3曲で、これらの作品は1837年から1842年にかけて作曲されました。
今回ご紹介する即興曲第4番(以下幻想即興曲)はショパンの死から6年後の1955年に友人で法律家、作曲家でもあったユリアン・フォンタナ(1810-1869)によって出版されました。
「幻想即興曲(Fantaisie-Impromptu)」のタイトルはその際に付けられたもので、ショパン自身が付けたものではありません。
ショパンは遺言で自身の未出版作品を破棄するように希望したと伝えられていますが、実際にはフォンタナはこの幻想即興曲以外にも複数の未出版作品を出版しています。
この作品は複数の筆者譜が遺されていましたが、ショパン自身の自筆譜は長い間見つかっていませんでした。
1962年、20世紀を代表するポーランド出身のピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)がエステ公爵夫人に1835年に献呈された自筆譜を発見します。
つまり1835年には完成されていたこの幻想即興曲は他の3曲の即興曲より先に作曲されていたことになり、何らかの理由により出版されていなかったことになります。
初版を出版したフォンタナによればこの曲が作曲されたのは1834年とのことであり、それが事実であればフォンタナはエステ公爵夫人に献呈されたショパンの自筆譜より以前に筆写、もしくは自筆された資料に基づいて初版を出版したことになります。
このフォンタナによる初版には作曲家でもあったフォンタナの手によって強弱記号などが加えられています。
ショパンがこの作品を出版しなかった理由としては、同時代の作曲家、イグナーツ・モシェレス(1794-1870)の作品に似ていること、同様の理由としてベートーヴェンの「月光ソナタ」に似ている箇所があること、エステ公爵夫人に献呈した作品であったため、などの説がありますが、いずれも真偽のほどは定かではありません。
楽譜はフォンタナが出版した初版に基づくものと、ルービンシュタインが発見した自筆に基づくものが複数の出版社から出版されています。
ショパン「幻想即興曲」解説
冒頭、力強いオクターブの響きに続き、左手が流麗に奏でるアルペジオ(分散和音)にのって右手が幻想的で即興的なフレーズを奏でます。(譜例①)
楽曲は3つに分かれた部分がさらに複数の部分に分けられる複合三部形式の形式を取っていて、中間部ではがらりと曲想を変え、ショパンらしい詩情を伴った美しく繊細な旋律に魅了されます。(譜例②)
楽曲は再び冒頭の部分に戻り、最後は中間部の美しい旋律が回想され、静かに終曲します。
ショパン「幻想即興曲」youtube動画
ダニール・トリフォノフ
ショパン:即興曲第4番 嬰ハ短調 作品66「幻想即興曲」
ピアノ:ダニール・トリフォノフ
ダニール・トリフォノフは1991年生まれ、ロシア出身のピアニストです。
2010年、第16回ショパン国際ピアノコンクールで3位入賞、2011年、ルービンシュタイン国際ピアノコンクール優勝、第14回チャイコフスキー国際コンクールでも優勝と言う輝かしい経歴を持つピアニストです。
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ショパン:即興曲第4番 嬰ハ短調 作品66「幻想即興曲」
ピアノ:アナスタシア・フプマン
アナスタシア・フプマンは1988年生まれ、ロシア出身のピアニストです。
ショパン「幻想即興曲」無料楽譜
リンク先から無料楽譜をダウンロード出来ます。ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。
ショパン「幻想即興曲」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
『キーシン・プレイズ・ショパン』
ショパン
ポロネーズ第1番嬰ハ短調 Op.26-1
ポロネーズ第2番変ホ短調 Op.26-2
即興曲第1番変イ長調 Op.29
即興曲第2番嬰へ長調 Op.36
即興曲第3番変ト長調 Op.51
即興曲第4番嬰ハ短調 Op.66『幻想即興曲』
ポロネーズ第4番ハ短調 Op.40-2
ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53『英雄ポロネーズ』
ピアノ:エフゲニー・キーシン
録音:2004年7月24日 スイス、ヴェルビエ音楽祭[ライヴ]
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エフゲニー・キーシンは1971年、モスクワ生まれのピアニストです。
10歳でピアノ協奏曲を弾き、11歳の時にはモスクワでリサイタル・デビューをするほどの神童ぶりを発揮。12歳でキタエンコ指揮モスクワ・フィルとの共演で、ショパンのピアノ協奏曲2曲をモスクワ音楽院大ホールで弾き、一躍世界の注目を集めました。
1988年にカラヤンの招きで、ベルリン・フィルとチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏したことが、国際的な名声と評価を決定付けます。以後、世界の一流オーケストラと共演を重ね、まさに世界のトップ・ピアニストとして活躍を続けています。
今回ご紹介するアルバムは2004年、当時32歳のキーシンがスイスのヴェルビエ音楽祭で行ったリサイタルのライヴ・レコーディング盤です。
キーシンの奏でる「幻想即興曲」は超絶技巧を繰り広げる演奏と言うよりは、繊細で幻想的なタッチが印象的な演奏です。
弱音が美しく、フレーズが頂点を迎える部分でもとても繊細なタッチで演奏されているように感じます。
ライブ録音ならではの音楽の自然な揺らぎも感じられ魅力的な演奏です。
即興曲全4曲の他に「英雄ポロネーズ」をはじめとしたポロネーズのカップリングも魅力的な1枚です。
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「エフゲニー・キーシン」「ウラディーミル・アシュケナージ」「マレイ・ペライア」「ユンディ・リ」「クラウディオ・アラウ」「タマーシュ・ヴァーシャリ」「マリア・ ジョアン・ピリス」「アルトゥール・ルービンシュタイン」「スタニスラフ・ブーニン」「ダニール・トリフォノフ」「ダン・タイ・ソン」「イリーナ・メジューエワ」「サンソン・フランソワ」「フレディ・ケンプ」「ルース・スレンチェンスカ」「ニキタ・マガロフ」「アナスタシア・フプマン」「ベンノ・モイセイヴィチ」「エヴァ・ポブウォツカ」「イシュトヴァーン・セーケイ」「ナターシャ・マリン」「ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ」「バラーシュ・ソコライ」「フジ子・ヘミング」「仲道郁代」「清塚信也」他
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まとめ
ショパン作曲の「幻想即興曲」、いかがでしたでしょうか?
楽曲は幻想的で極めて即興的な雰囲気の細かい楽句が鍵盤の上を駆け巡る印象的な出だしに始まり、甘く美しくそして胸に迫るような感傷的な旋律が展開する大変魅力的な曲です。
ショパンが生前、なぜこの作品を出版しなかったのかについては判然としない部分もあり、ショパンの遺志とは異なったかも知れませんが、フォンタナが出版することがなければ、今日ショパンの最も有名な作品の一つとも言ってもよいこの「幻想即興曲」が世に知られることはなかったかも知れませんね。
大変短い作品ですので、いろんなピアニストの演奏を聴き比べるのも楽しいですよ!
いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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参考資料:「幻想即興曲」『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』2019年12月25日 (水) 21:06 URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/幻想即興曲/
「ショパン :幻想即興曲 (遺作) Op.66 CT46 嬰ハ短調」『ピティナ・ピアノ曲辞典』URL:https://enc.piano.or.jp/musics/473
松本由美子著『フレデリック・ショパン 「幻想即興曲」ショパンの作品と背景について』白鴎大学発達科学部論集第3巻第1号