ドビュッシー「子供の領分」【解説と名盤、無料楽譜】

2020年9月13日

ゴリウォーグのケークウォーク

軽快なシンコペーションのリズムの乗ってピアノが愉快な旋律を奏でます。

まずは最も有名な第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」を聴いてみましょう。

ピアノ:チョ・ソンジン

作曲の背景

子供の領分(Children’s Corner)はフランスの作曲家、クロード・ドビュッシー(1862-1918)が1908年に書き上げた6曲から成るピアノのための組曲です。

この作品は当時3歳だったドビュッシーの娘クロード・エマのために作曲されました。

1904年、銀行家の夫人で歌手でもあったエンマ・バルダックと不倫関係に陥ったドビュッシーは同年7月にエンマと駆け落ち同然の逃避行に旅立ちます。

9月にパリに戻った後の10月には正妻マリー=ロザリー・テクシエ(愛称リリー)がピストルによる自殺未遂を図り、この不倫関係は世間にも知られることになります。

大きなスキャンダルに発展し、世間の批判を一身に浴びたドビュッシーでしたが、結局は翌1905年にリリーとの離婚が成立します。

この時、既にドビュッシーの子を身ごもっていたエンマは同年10月に女の子を出産します。

この子がクロード・エマで、43歳にして初めて授かった娘を 「シュシュ(キャベツちゃんの意)」と言う愛称で呼び、溺愛します。

1908年にこの愛娘のために書かれた作品は同年出版、初演され、1911年にはドビュッシーの友人でもあった作曲家で指揮者のアンドレ・カプレ(1878-1925)によって管弦楽版にも編曲されています。

英語の原題「Children’s Corner」がどのような経緯で「子供の領分」と邦訳されたのかはわかりかねますが、フランス人で英語も得意ではなかったドビュッシーがこの作品に限り英語のタイトルを付けたのは、この作品の完成した1908年に晴れて正式に結婚したエンマ・バルダックのイギリス趣味と深い関係があるようです。

ドビュッシーの家族に対する深い愛情が作曲の背景に見え隠れする心温まる楽しい作品です。

ドビュッシー「子供の領分」解説

第1曲 「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」(Doctor Gradus ad Parnassum)

「グラドゥス・アド・パルナッスム」「パルナッソス山への階梯(はしご段)」という意味のラテン語ですが、ギリシャにあるパルナッソス山が神話の中では詩、音楽、学問の発祥の地とされていることから、芸術の教則本のタイトルとしてよく用いられています。

ここではイタリアの音楽家、ムツィオ・クレメンティ(1752-1832)が著したピアノのための練習曲集「グラドゥス・アド・パルナッスム」のパロディとしてタイトルが用いられています。

曲はまさしく指のための練習曲の様に16分音符のアルペジオ(分散和音)が連続しますが、そこから聴こえてくる響きはとても柔らかく優しくドビュッシーらしさを感じます。

第2曲 「象の子守歌」 (Jumbo’s Lullaby)

低音で奏でられるゆったりとした主題と静かにぶつかり合う不協和音の響きが象のゆっくりした行進を見ているようで微笑ましい1曲です。

第3曲 「人形のセレナード」 (Serenade of the Doll)

この楽曲のみ1906年に作曲され、単独で楽譜も出版されている作品で、8分音符の軽やかなリズムに乗って、人形が踊っているかのような愛らしい旋律が奏でられます。

第4曲 「雪は踊っている」 (The Snow is Dancing)

スタッカートで演奏される16分音符が静かな夜にしんしんと降り積もる雪のようです。

ピアノ譜はまるでグラフィック・アートのようで、楽譜を読めない方でも「雪を表現している」と言われればそのように感じるのではないでしょうか。

第4曲「雪は踊っている」冒頭部分

中間部からはより自由で幻想的な調べが奏でられます。

第5曲 「小さな羊飼い」 (The Little Shepherd)

宙を漂うように、気ままに踊るように・・・そんな雰囲気の楽曲です。

とても短い楽曲ですが、個人的にはこの6曲の中では最もドビュッシーらしい雰囲気を感じる作品です。

第6曲 「ゴリウォーグのケークウォーク」 (Golliwogg’s Cakewalk)

ゴリウォーグ」はイギリスの挿絵画家、フローレンス・ケイト・アプトン(1873-1922)の絵本のシリーズに登場する黒人の男の子の人形のキャラクターの名前で、「ケークウォーク」は2拍子の軽快なリズムが印象的な黒人のダンスの一種です。

絵本表紙「The Golliwog in War!(1899)」

中間部ではリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の楽劇「トリスタンとイゾルテ」の冒頭部分が引用されていますが、曲を聴いただけでそれと気づく方はまずいないのではないでしょうか?

ドビュッシーはワーグナーに大きな影響を受けていたようで、それは単に作品への傾倒と言うだけではなく、畏怖と尊敬、そして反発、影響からの脱却と複雑な感情を持っていたことが遺された書面などからうかがえます。

その引用箇所には「avec une grande émotion(感情たっぷりに)」の指示があり、それに続き少しコミカルな応答が続いています。

「ゴリウォーグのケークウォーク」ピアノ譜

わかりやすいように「トリスタンとイゾルテ」のピアノ編曲版の楽譜を見てましょう。原曲ではチェロで演奏される部分です。

ワーグナー「トリスタンとイゾルテ」冒頭部分(ピアノ譜)

曲を聴くにあたってはあまり難しいことは考えずに、先ほどの画像で紹介した「ゴリウォーグ」が踊っている姿をイメージしながら聴いてみると良いでしょう。

ドビュッシー「子供の領分」youtube動画

ドビュッシー:子供の領分
第1曲(0:00)第2曲(2:36)第3曲(5:58)第4曲(8:49)第5曲(11:45)第6曲(14:02)

ピアノ:アラン・プラネス

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ドビュッシー「子供の領分」無料楽譜

ドビュッシー「子供の領分」(IMSLP)

リンク先から無料楽譜をダウンロード出来ます。ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。

ドビュッシー「子供の領分」名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

【収録曲】
ドビュッシー
「映像」第1集
「映像」第2集
「子供の領分」


ピアノ:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920-1995)はイタリア出身の20世紀を代表するピアニストです。

妥協を許さない完璧主義者として知られ、そのために録音嫌いとしても有名でした。

また、コンサートのキャンセルも多く、ピアノの調律にもひときわ神経質で、世界中どこのコンサートにも、愛用のスタインウェイと、専属の調律師を同伴したことで知られています。

いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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