本ページはプロモーションが含まれています

バーンスタイン「キャンディード序曲」【あらすじと解説】

2020年9月21日

「キャンディード」の解説

キャンディード序曲はアメリカの指揮者で作曲家、ピアニストとしても活躍したレナード・バーンスタイン(1918-1990)が作曲した舞台作品「キャンディード」のための序曲です。

フランスの哲学者、文学者のヴォルテール(1694-1778)が書いた小説『カンディード、あるいは楽天主義説』(仏:Candide, ou l’Optimisme)を原作とした舞台作品で、オペラと銘打たれる時もミュージカルとして銘打たれて公演される時もあるため、ここでは単に舞台作品としてご紹介しておきます。

1956年にブロードウェイミュージカルとして初演された時は73公演で打ち切られ興行的には振るいませんでしたが、その後も改訂が重ねられ最終的に1989年に改訂を終えています。

日本でも過去に宮本亜門さんの演出でミュージカルとして公演が行われています。

物語は奇想天外で荒唐無稽なお話がスピーディーに展開されていきますが、作品の根底には哲学的な風刺と主張が貫かれています。

かなり難解で混沌としたストーリーですが、次の項で出来るだけ簡単にあらすじをご紹介したいと思います。

バーンスタインの作風はクラシックの形式にとらわれず自由でクラシック然としていないのが特徴です。

この序曲もエネルギッシュで愉快な楽しい雰囲気を楽しめる作品です。演奏時間も5分前後なので、クラシック初心者の方も気軽にお楽しみいただけると思います。

「キャンディード」のあらすじ

ドイツの片田舎ウェストファリアの城主の甥で物語の主人公キャンディードは城主の娘クネゴンデとひそかに愛を育んでいます。

城主の妹が産んだ私生児であったキャンディードはこのことをクネゴンデの兄、マキシミリアンによって告げ口されると城主から「お前などに娘をやることは出来ない!」と追放されるハメになります。

城を追われブルガリアの軍隊に入ることになるキャンディードはそこでも散々な目に遭い、そこをやっとのことで逃げ出しますが、その間にウェストファリアの城は敵に襲われ最愛の人クネゴンデをはじめ一族全てが皆殺しにされたと告げられます。

「現実世界は可能なすべての世界の中で、最善のものである」楽天主義を説いた家庭教師のパングロスと偶然再会するキャンディードはここから2人で世界を巡る奇想天外な旅に出発することになります。

リスボンへ向かう途中では嵐に遭遇し船は沈没、命からがら辿り着いたリスボンでは大地震に遭い・・・宗教裁判にかけられパングロスが絞首刑に処され、キャンディードもあわやと言うところで何とか死だけは免れます。

やがてパリに向かったキャンディードは死んだと思っていたクネゴンデと再会します。

しかし再会した彼女は金持ちのパトロンたちの妾になり果てて・・・これに激昂したキャンディードは彼女のパトロン2人を殺害。

今度は南米のブエノスアイレスへ逃避行・・・ここでも奴隷として売られそうになっていた死んだはずマキシミリアンたちと再会します。

追っ手に追いつかれ再びクネゴンデとは離れ離れに・・・やがて黄金郷エル・ドラドに辿り着き黄金の羊を手に入れますが、ちょっとした諍いから今度はマキシミリアンを殺害・・・黄金の羊を持ったままヴェニスに逃れ・・・紆余曲折の末に最後は仮面舞踏会で変わり果てたクネゴンデと再会します。

かなり端折った説明ですが、物語は奇想天外なドタバタストーリーです。

死んだと思っていた人が何度も生き返り、一文無しが一夜にして大金持ちになり、また破滅します。

ストーリーの中には残虐な殺害や暴行シーンもありますが、スピーディーな展開の中で一瞬の間に描かれます。

そこには「楽天主義とはどんな目に遭ってもこの世の全ては善であると、気の触れたように言い張ること」と言う皮肉と風刺が含まれています。

最後はキャンディードクネゴンデはめでたく結ばれ、「人生にはいいも悪いもない。人生は人生。善も悪も喜びも悲しみも、全部人生に織り込まれている。」と達観します。

「キャンディード序曲」youtube動画

バーンスタイン:キャンディード序曲

グスターボ・ドゥダメル指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2019より

バーンスタイン:キャンディード序曲

レナード・スラットキン指揮 ガルシア交響楽団

本編をダイジェストで聴いてみよう!

本編からご紹介するのはヒロインのクネゴンデが歌う有名なアリア「Glitter and Be Gay」(きらびやかに華やかに)

貴族の娘だったが彼女が家族も故郷も名誉も失い、ついには金持ちの妾になると言う自分の境遇を嘆きながらも、どうせならとシャンパンやきらびやかな宝石を身に着け、「浅ましく泣いて暮らすのはやめて、私の気高さを知らしめるのよ!朗らかで快活な、この振る舞いで!」「ダイヤモンドのネックレスをいただくわ!そうして私の気高さを知らしめるのよ!苦しみも、恐れも知らぬこの振る舞いで!」と陽気に歌います。

後半の旋律は序曲の中にも現れ、ソプラノがコロラトゥーラと呼ばれる華やかな装飾をふんだんに取り入れた高い技術を駆使しながら歌い上げます。

バーンスタイン キャンディードより Glitter and Be Gay(きらびやかに華やかに)

ジョン・ウィルソン指揮 ジョン・ウィルソン・オーケストラ
クネゴンデ役:Scarlett Strallen

バーンスタイン キャンディードより Glitter and Be Gay(きらびやかに華やかに)

クネゴンデ役:クリスティン・チェノウェス

Scarlett Strallenさんもクリスティン・チェノウェスさんもブロードウェイ・ミュージカルなどで活躍される舞台女優さんです。

音楽のジャンルなどは些細なことと感じさせる素晴らしいパフォーマンスです。

もう1曲ご紹介するのは物語の壮大なエンディングを飾る「Make Our Garden Grow」(僕らの畑を耕そう)

世界を巡る様々な旅路と困難の果てにクネゴンデに再会したキャンディード

「君は愚かだったし 僕もそうだった でも 僕の妻になっておくれ」「僕らは純粋でもないし 賢くも正しくもない でも 僕らは家を建て 森を拓く そして 僕らの畑を耕すんだ」と高らかに歌い上げてエンディングを迎えます。

バーンスタイン キャンディードより Make Our Garden Grow(僕らの畑を耕そう)

ジョン・ウィルソン指揮 ジョン・ウィルソン・オーケストラ

いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

お役に立ちましたらクリックをお願いします。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村