ショパン「24の前奏曲」【解説と名盤、無料楽譜】
目次
作曲の背景
「24の前奏曲 作品28」はポーランドの作曲家、フレデリック・ショパン(1810-1849)が1839年に完成させたピアノのための作品です。
前回の記事ではこの中から最も有名な「第15番 変ニ長調《雨だれ》」をご紹介しました。
今回の記事では他の曲も聴いてみたいと言う方のために24曲全てを簡単にご紹介したいと思います。
作曲に至る背景については前回の記事に詳しく書いていますのでそちらをご覧ください。
ショパン「24の前奏曲」解説
第1番 ハ長調(00:00)
優美で柔らかいアルペジオ(分散和音)に乗って奏でられる曲です。
大変短い作品ですが、これからどんな作品が聴けるのか期待感を膨らませるような、まさしく前奏曲のようにも感じられます。
第2番 イ短調(00:47)
やや重苦しい雰囲気の和音が八分音符で進む中をゆったり漂うような旋律が流れます。
時代的にショパンより、もう少し後の作品と言われても違和感がないような雰囲気の作品です。ある意味ショパンらしくないのが個人的には面白いと感じる作品です。
第3番ト長調(03:03)
左手が目まぐるしく16分音符を駆け巡る中、右手が明朗な旋律を奏でます。
第2番からの表情の違いがさらに魅力を感じさせているような気がします。
第4番 ホ短調(04:06)
まるでショパンの苦悩と悲しみが表出したかのような印象的な曲です。
ショパンの葬儀に際し演奏されたことでも知られています。
第5番 ニ長調(06:20)
両手で色鮮やかなアルペジオ(分散和音)の速いパッセージが展開されます。
悲しみに包まれた第4番と第6番に挟まれた生き生きとした小品です。
第6番 ロ短調(06:57)
第4番と同じくショパンの葬儀で演奏された作品です。右手が断続的に刻む八分音符の音型から、この曲ももう一つの「雨だれ」だと言われています。(譜例①)
第7番 イ長調(08:47)
曲のタイトルはご存じなくても日本では大変有名な曲で、おそらく多くの方が聞き覚えのある作品ではないでしょうか?
とても穏やかで気品あふれる小品です。
さて、何に使われている曲でしょうか?答えは譜例②の後で!
答えは「太田胃散」のCM曲です!「胃腸」と「イ長調」を掛けているとか言うお話しも聞きますが、単なる都市伝説でしょうか?
第8番 嬰へ短調(09:32)
繰り返される付点のリズムの中に宝石を散りばめたようなショパンらしい美しい細かい音符を詰め込んだ技巧的な作品です。(譜例③)
第9番 ホ長調(11:26)
厳かな雰囲気の中、ゆっくりと高揚していく三連符の響きが印象的です。
第10番 嬰ハ短調(13:08)
滑らかに美しい音の粒たちが転がり落ちてくるかのような細かい音型が印象的な曲です。
第11番 ロ長調(13:39)
穏やかで明るく心地よい曲想の作品です。
第12番 嬰ト短調(14:18)
半音階で上昇していく音型が緊張を高めながら情熱的な雰囲気を醸し出しています。
第13番 嬰へ長調(15:27)
左手の優美なアルペジオ(分散和音)に乗って優しく抒情的な旋律が奏でられます。
とても美しく穏やかな作品です。
第14番 変ホ短調(19:17)
両手のユニゾンで奏でられる三連符が、地の底で何かが蠢くような、どこか不気味な雰囲気を感じさせます。
第15番 変ニ長調(19:54)
「雨だれの前奏曲」として有名なこの前奏曲を代表する作品です。
詳しくは前回の記事をご覧ください。
第16番 変ロ短調(25:28)
激しく叩きつけられる6つの和音に続き、16分音符がまるで疾風のように駆け巡ります。
第15番がしとしとと降りしきる雨だとすれば、この第16番は突然訪れた嵐のような曲想です。(譜例④)
第17番 変イ長調(27:00)
穏やかな雰囲気の中にショパンの歌心と言うか詩情のようなものを感じさせる作品です。
終盤、低音に繰り返されるA♭音が現れるたびに心が深く落ち着いていくように感じます。(譜例⑤)
第18番 へ短調(30:27)
細かい音符で描かれる激しく即興的な雰囲気が印象的です。
第19番 変ホ長調(31:26)
美しくとても流麗な作品ですが3拍子で描かれるその旋律の裏には絶え間なく三連符が幅広い音域を駆け巡っています。
それはあたかも美しく泳ぐ白鳥が水面下では足を忙しく動かしているかのようです。
第20番 ハ短調(32:50)
重厚な和音の響きの中に悲痛な叫びを感じさせる作品です。悲しみ、絶望、そうした言葉が自然と頭に浮かびます。
第21番 変ロ長調(34:37)
優しく優美で歌心を感じさせる作品ですが、左手の和音の響きが幻想的な雰囲気を醸し出しているようにも感じます。
第22番 ト短調(36:27)
激しく情熱的なエネルギーを持った作品です。左手のオクターブで演奏される下降音型が繰り返されるたびに力強い何かが蓄積されていくような雰囲気を感じます。
第23番 ヘ長調(37:08)
流麗な16分音符の調べが滑らかで清らかな水の流れのようです。
第24番 ニ短調(38:04)
24の前奏曲の最後を締めくくるのに相応しい情熱的でドラマティックな作品です。
繰り返される左手の音型からは前へと進む強い推進力のようなものを感じます。
右手が奏でる情熱的な旋律はショパンらしい美しい連符を織り込みながらクライマックスへと向かっていきます。
最後は閉幕を告げる鐘が打ち鳴らされるかのように一番低いD音が力強く繰り返されて終曲します。(譜例⑥)
24の作品はいずれも独創性に溢れ、様々なキャラクターの作品が絶妙な配列で並び全作品を構成しています。
1曲ずつはとても短い作品ですので、ぜひ一度全曲を通して聴いてみてください。
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ショパン「24の前奏曲」youtube動画
ショパン:24の前奏曲 作品28
ピアノ:チョ・ソンジン
チョ・ソンジンは1994年、韓国に生まれ、2009年浜松国際ピアノコンクール最年少優勝、2011年チャイコフスキー国際コンクール第3位受賞、2015年ショパン国際ピアノコンクール優勝を経て、現在は国際的に活躍するピアニストです。
チョ・ソンジンさんの演奏動画はこちらの記事でもご紹介しています。ぜひご覧ください。
ショパン「24の前奏曲」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
ショパン:24の前奏曲 作品28
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
録音:1974年
マウリツィオ・ポリーニは1942年イタリア生まれ、15歳でジュネーブ国際コンクール第2位、18歳でショパン国際ピアノコンクールで優勝と言う輝かしいキャリアを持つ、現代最高のピアニストの1人です。
ショパン「24の前奏曲」無料楽譜
上記のリンク先から無料楽譜をダウンロード出来ます。ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。
いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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