ベートーヴェン「交響曲第7番」【解説とおすすめの名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
弦楽器が奏でる同じ音型が執拗に繰り返されながら徐々に高揚し、熱狂的なクライマックスへと導きます。
まずは第4楽章のクライマックスをダイジェストで聴いてみましょう。
サイモン・ラトル指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
作曲の背景
交響曲第7番 イ長調 作品92はドイツの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1812年に書き上げた交響曲です。
1808年、38歳のベートーヴェンは中期を代表する交響曲第5番「運命」、第6番「田園」を完成させます。
1809年4月、オーストリアがフランスの同盟国バイエルンに侵攻を開始しますが、これはナポレオン率いるフランス軍の反撃にあい、5月にはウィーンはフランス軍に占領され、街は荒廃します。
そしてこの占領下のウィーンで、かつてベートーヴェンが師事をしたハイドンが77歳でこの世を去ります。
この年にベートーヴェンは一人の女性と知り合います。彼女の名前はテレーゼ・マルファッティ(1792-1852)、有名な「エリーゼのために」を献呈した相手とも言われる女性で(諸説あり)、ベートーヴェンは熱を上げますが、この恋は残念ながら実ることはありませんでした。
翌1810年にベートーヴェンは彼女に宛てて次のような手紙を書き送っています。
いざさらば、敬愛するテレーゼ。あなたにこの人生にあらゆる素晴らしい、美しい事物のあらんことを。私のことを心に留めておいてください – 私よりもあなたに明るい、幸福な人生を望める者などおりません – 万一、あなたがそんなことを気にも留めていなかったとしても。
引用:「テレーゼ・マルファッティ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1811年、ベートーヴェンは心身の疲れを癒すためにボヘミアにあるテープリッツと言う温泉地に出かけて英気を養い、いよいよ新しい交響曲の作曲に着手します。
1812年には一応の完成をみた交響曲第7番は、翌1813年12月8日、ベートーヴェン自身の指揮でウィーンで初演されました。
それは1813年10月にナポレオン率いるフランス軍を破ったオーストリアを含む連合国が祝賀ムードに湧く中開催された、ウィーン大学講堂における「戦争傷病兵のための慈善コンサート」でのことでした。
ベートーヴェン「交響曲第7番」解説
第1楽章:Poco Sostenuto-Vivace
冒頭、力強く響き渡る一音に続きオーボエが牧歌的な旋律を奏でます。序奏は穏やかな旋律を何度も挿み、16分音符の上昇音型が反復されながら高まっていきます。
テレビドラマ「のだめカンタービレ」で使われた有名な第1主題がフルートによって軽やかに奏でられ、オーケストラのトゥッティー(総奏)へと発展していきます。(譜例①)
第1主題に現れるスキップするかのような付点のリズムは全曲を通して執拗に反復され、作品に生き生きとした躍動感を与えています。
ワーグナーが「舞踏の聖化」と称賛したこの作品は反復され強調されるリズムの中で、圧倒的な躍動感と高揚感を生み出しています。
第2楽章:Allegretto
この楽章でも重く足を引きずりながら歩を進めるかのような印象的なリズムが執拗に繰り返されます。(譜例②)
奏でられる旋律は悲しみに満ちているようでもあり、何かの重荷を背負って歩いているかのようにも聴こえます。
中間部ではイ短調からイ長調に転調し、弦楽器の刻む三連符に乗って明るい光が射しこんだかのような旋律が奏でられますが、再び元のイ短調に転じ重苦しい曲想が支配し、最後は静かに終わります。
初演時にアンコールを求められたこの楽章はワーグナーが「不滅のアレグレット」と呼んだそうですが、私には葬送の行進曲のようにも聴こえます。
第3楽章:Presto, assai meno presto
スタッカートで奏でられる旋律が実に軽快で躍動感に満ち溢れたスケルツォです。(譜例③)
中間部では優美で穏やかなトリオが奏でられますが、その旋律がやがて壮大に展開されると再び冒頭の軽快なスケルツォ主題が反復されます。
第4楽章:Allegro con brio
力強く躍動感あふれる短いファンファーレ風の4小節に導かれ、同じ音型の第1主題が何度も反復されながらどんどんと高揚していきます。(譜例④)
この楽章でも印象的なリズムが執拗に繰り返され、躍動感とドライブ感を生み出しています。
最後はまさしく疾風怒涛の熱狂の中、圧倒的なフィナーレを迎えます。
ベートーヴェン「交響曲第7番」youtube動画
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
第1楽章(00:00)
第2楽章(14:30)
第3楽章(24:20)
第4楽章(33:55)
イヴァン・フィッシャー指揮:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
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ベートーヴェン「交響曲第7番」おすすめの名盤
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ベートーヴェン
交響曲第5番ハ短調 Op.67「運命」
交響曲第7番イ長調 Op.92
カルロス・クライバー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1974年(第5番)1975年-1976年(第7番)
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