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ショパン「英雄ポロネーズ」解説と無料楽譜、おすすめの名盤

まずはダイジェストで聴いてみよう!

華麗で優美かつ堂々とした風格を感じる主題はクラシックファンならずとも、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

ご年配の方の中には、水谷豊さん主演のドラマ『赤い激流』で、主人公がこの曲を弾いていたシーンを思い出される方も多いと思います。

ピアノ:ラン・ラン

作曲の背景

ポロネーズとは?

『英雄ポロネーズ』の通称で親しまれているポロネーズ第6番 変イ長調 作品53は、ポーランド出身の作曲家、フレデリック・ショパン(1810-1849)が1842年、32歳の時に作曲したピアノのための作品です。

ポロネーズはフランス語で「ポーランド風の」という意味で、その名のとおりポーランドの民族舞踊を起源に持つ舞曲です。

ゆったりとした4分の3拍子が特徴で、典型的なリズムは次の譜例で示される、「タンタタ、タンタンタンタン」というリズムです。

ポロネーズのリズム 譜例

もとは16世紀後半にポーランド王国の宮廷貴族の行進に使われていたものといわれ、やがてヨーロッパ各国の宮廷に舞曲として取り入れられ、広まっていったとされています。

その後は本来の舞踊のための音楽としてだけでなく、クラシック音楽のひとつの形式としても用いられ、多くの作曲家が作品に取り入れています。

中でもとりわけ有名なのが、この英雄ポロネーズでしょう。

ショパンにとってのポロネーズ

ショパンが7歳の時に作曲したとされる現存する最初の作品もポロネーズで、彼にとっていかにポロネーズが幼い頃から親しんだ曲であったのかがうかがえます。

piccolo
piccolo

これが最初の作品とされる「ポロネーズ第11番」だよ!

ショパン:ポロネーズ第11番 ト短調 (遺作)
ピアノ: ヤロスラフ・ジェヴィエツキ

ショパンは没後に出版されたものも合わせると、全部で16曲のピアノのためのポロネーズを作曲しており、他にピアノ独奏以外のポロネーズも2曲書いています。

ショパンの祖国ポーランドは他国に侵略・分割統治され、圧政への不満が募っていました。

ショパンは20歳の時に新たな活躍の場を求めて祖国を旅立ちますが、その最中にポーランドで武装蜂起が勃発します。

しかし、この武装蜂起はロシアによって鎮圧され失敗に終わりました。

混乱を極める祖国に帰ることが出来なくなったショパンは、紆余曲折を経てパリに居を構え、音楽活動を始めます。

以来、39歳で亡くなるまで祖国ポーランドに帰ることはありませんでした。

故郷から遠く離れた地で作曲したポロネーズには、ショパンにとって特別な想いがあったのかも知れませんね。

ポーランド

円熟期を迎えたショパン

ショパンがこの英雄ポロネーズを作曲した1842年は、1838年以来、交際していたフランスの作家、ジョルジュ・サンド(1804-1876)と暮らしていた時期で、夏はノアンにあるサンドの別荘で、それ以外の時期はパリのサンドの家で暮らす生活を送っていました。

ジョルジュ・サンド
ジョルジュ・サンドの肖像画(1838年)PD

この年は幼少期の恩師ヴォイチェフ・アダルベルト・ジヴヌィ(1756年-1842年)やワルシャワ時代からの親友ヤン・マトゥシンスキ(1809年-1842年)の訃報に接するなど、ショパンにとってショックな出来事もありました。

ジヴヌィは先ほど触れたショパンの処女作のポロネーズを書き残して浄書した人物で、マトゥシンスキはパリに出てからも親交のあった生涯の友人で、ショパンと同じように結核を患い、先に旅立ってしまいました。

ヴォイチェフ・アダルベルト・ジヴヌィ
ジヴヌィの肖像(アンブロジイ・ミェロシェフスキ画)PD

私生活では悲しいことの続いたこの年ですが、作曲の面ではこの英雄ポロネーズの他にも、バラード第4番 作品52スケルツォ第4番 作品54即興曲第3番 作品51といった傑作を生み出すなど円熟期を迎えています。

英雄ポロネーズのタイトルは日本のみならず広く親しまれている通称ですが、ショパン本人が名付けたものではなく、その由来については諸説あるようです。

作品はパリ時代のショパンに経済的な援助をした銀行家のオーギュスト・レオに献呈され、翌1943年にはフランスとドイツで出版されています。

英雄ポロネーズ自筆譜
英雄ポロネーズの自筆譜(1842年)PD

傑作ぞろいのショパンの作品の中でも人気の名曲で、ピアノ愛好家の方なら有名な主題を一度は弾いてみたことがあるのではないでしょうか。

演奏時間は6~7分程度ですので、クラシック初心者の方も気軽にお楽しみください!

フレデリック・ショパン
フレデリック・ショパン(1849年)PD

ショパン「英雄ポロネーズ」YouTube動画

ショパン:英雄ポロネーズ(ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53)

ピアノ:チョ・ソンジン
第17回ショパン国際ピアノコンクール(2015)より

チョ・ソンジン(1994年-)は韓国出身のピアニスト。2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクールで優勝。こちらの動画はそのショパンコンクールの第2次予選の演奏で、チョ・ソンジンはこの演奏で最優秀ポロネーズ賞も併せて受賞しています。

ショパン「英雄ポロネーズ」おすすめの名盤

マウリツィオ・ポリーニ


【収録曲】
ショパン
①ポロネーズ 第1番 嬰ハ短調 作品26の1
②ポロネーズ 第2番 変ホ短調 作品26の2
③ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40の1 《軍隊》
④ポロネーズ 第4番 ハ短調 作品40の2
⑤ポロネーズ 第5番 嬰ヘ短調 作品44
⑥ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 《英雄》
⑦ポロネーズ 第7番 変イ長調 作品61 《幻想》

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
録音:1975年11月 ウィーン

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2024年に82歳で亡くなられたイタリアの巨匠・マウリツィオ・ポリーニが33歳の時に録音したものです。

1960年、第6回ショパン国際ピアノコンクールにおいて18歳の若さで審査員全員一致で優勝したポリーニですが、さらに研鑽を積むためか、8年もの間、国内などの限定的な活動に留め、1968年に満を持して国際ツアーに復帰しています。

1971年からはドイツ・グラモフォンで録音作品の発売を開始。このアルバムもそのうちの一つです。

演奏家としてはまだ若い33歳ながら、実に堂々とした風格漂う演奏で、奇をてらった部分は一つもありません。

力強く端正な演奏で、初めてこの作品を購入する方にもおすすめです。

ラファウ・ブレハッチ


【収録曲】
ショパン
1. ポロネーズ第1番嬰ハ短調 Op.26-1
2. ポロネーズ第2番変ホ短調 Op.26-2
3. ポロネーズ第3番イ長調 Op.40-1『軍隊』
4. ポロネーズ第4番ハ短調 Op.40-2
5. ポロネーズ第5番嬰へ短調 Op.44
6. ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53『英雄』
7. ポロネーズ第7番変イ長調 Op.61『幻想』

ピアノ:ラファウ・ブレハッチ
録音:2013年1月 ハンブルク

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2005年の第15回ショパン国際ピアノコンクールで30年ぶりにポーランド出身の優勝者となったブレハッチが27歳の時に録音したものです。

ポリーニの演奏に比べると、よりピアニストの個性を楽しめる演奏に感じました。

かなり緩急のある序奏に続き、第1主題はとても軽やかで、やや溜めのある音符のさばき方も特徴的です。

テンポ設定は快速で颯爽とした雰囲気。ピアニスト泣かせの左手の16分音符連打の部分もとても推進力があり、前へ前へと進んで行きます。

弱奏部分はしなやかかつ繊細で、誰が弾いているか知らずに聞けば女性ピアニストが弾いているようにも聞こえます。

レビューは個人的な感想ですので、先入観にとらわれず、参考音源を聞いてみて下さい。

マルタ・アルゲリッチ


【収録曲】
ショパン
ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op.58
マズルカ第36番イ短調Op59-1
マズルカ第37番変イ長調Op.59-2
マズルカ第38番嬰へ短調Op.59-3
夜想曲第4番ヘ長調Op.15-1
スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39
ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄」

ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
録音:1965年6月 ロンドン

1965年の第7回ショパン国際ピアノコンクールで優勝した当時23歳のアルゲリッチが、3か月後の24歳の誕生日を迎えた直後にロンドンのアビー・ロード・スタジオで録音したものです。

アルゲリッチはその後、急遽ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだため、この録音は長くお蔵入りとなっており、収録後34年を経て初めてCDとして世に出た、まさに「幻のレコーディング」です。

そのグラモフォンからは1967年に録音したものが発売されています。

個人的にはアルゲリッチの演奏といえば、とても情熱的で自由奔放なイメージがあるのですが、この演奏ではそこまで大胆な雰囲気も感じませんでした。

テンポ設定も1967年の録音より落ち着いていて、英雄ポロネーズのタイトルにふさわしい堂々とした雰囲気を感じます。

タッチは男性のブレハッチより力強く、随所にアルゲリッチらしい情熱的なエネルギーも感じました。

ショパン:英雄ポロネーズ
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ

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※下記の検索結果は本記事の投稿日現在、「Amazon Music Unlimited」で「Chopin polonaise」などのキーワードで検索した例です。すべての録音を表示しているわけではありませんのでご了承ください。

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「マウリツィオ・ポリーニ」「ラファウ・ブレハッチ」「ヤロスラフ・ジェヴィエツキ」「アルトゥール・ルービンシュタイン」「アルフレッド・ブレンデル」「ウラディーミル・アシュケナージ」「サンソン・フランソワ」「フランソワ=ルネ・デュシャーブル」「ロジェ・ムラロ」「カール=アンドレアス・コリー」「ラザール・ベルマン」「ジョルジュ・シフラ」「ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ」「エリーザベト・レオンスカヤ」「ピョートル・アンデルシェフスキ」「オメロ・フランセシュ」「アダム・ハラシェヴィチ」「スタニスラフ・ブーニン」「エミール・ギレリス」「ウラディミール・ホロヴィッツ」「ジャン=イヴ・ティボーデ」「マルタ・アルゲリッチ」「ネルソン・フレイレ」「イリーナ・メジューエワ」「辻井伸行」他

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ショパン「英雄ポロネーズ」楽譜

ショパン「英雄ポロネーズ」無料楽譜(IMSLP)

IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)パブリックドメイン(知的財産権が消滅した状態)になった楽譜などを無料で利用できる、バーチャル図書館のようなプロジェクトです。

上記のタイトルをクリックすれば、リンク先からパブリックドメインとなった楽譜を無料でダウンロード出来ます。

ご利用方法がわからない方は下記の記事を参考にしてください。

こちらは「英雄ポロネーズ」の販売用楽譜です。

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エディション(版)によって細部が微妙に異なるので、先生に師事されている方は、相談の上、購入されることをおすすめします。

まとめ

今回の記事ではショパンの「英雄ポロネーズ」を紹介しましたが、お楽しみいただけたでしょうか?

誰が名付けたのかわかりませんが、曲の雰囲気にふさわしいタイトルだと思いませんか?

年齢がバレてしまいますが、筆者が小学生の頃に山口百恵さん出演のテレビドラマ「赤いシリーズ」が大ヒットし、第5作「赤い激流」では山口百恵さんはほとんど出演しなかったものの、主演の水谷豊さんがこの曲を弾くシーンが大きな話題となりました。

ピアノを習っていた同級生が音楽教室のピアノで主題の部分を弾く姿を見て憧れたものです。

余談はさておき、演奏時間も6~7分と短く、クラシック初心者やショパン入門の曲としてもぴったりの曲です。

ぜひ気軽にお楽しみください。

piccolo
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