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オーケストラに2種類のトランペット?

2つのオーケストラのトランペットを比べてみよう!

静寂の中、響き渡るトランペットの響きは宇宙の黎明を告げるかのように神秘的で、1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」で使われたことでも知られています。

ご紹介するのはリヒャルト・シュトラウス作曲の「ツァラトゥストラはかく語りき」の有名な冒頭部分です。

2つのオーケストラの動画をご紹介しますので、トランペットのパートに注目して聴き比べてみてください。

リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」より

グスターボ・ドゥダメル指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ファンホメナ指揮:BBCフィルハーモニック

いかがでしたか?

最初にご紹介したのはドイツが誇る世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィル、次にご紹介したのはイギリスの伝統ある音楽祭、BBCプロムスで演奏する英国放送協会(BBC)傘下のオーケストラ、BBCフィルの演奏ですが、2つのオーケストラのトランペット・パートを比べていただいて、お気づきになられましたか?

そう!・・・トランペットの形が違いますよね!?

同じ曲の同じ部分なのに・・・この違いって何でしょうか?

今回の記事ではオーケストラで使われる2つのトランペットの種類について解説していきたいと思います。

ピストン式とロータリー式のトランペット

唇の振動を伝えて音を出すトランペットは、ベルまでの管の長さをバルブと呼ばれるシステムで管の迂回経路を変化させることにより、管の長さを変え、全ての半音階を滑らかに演奏することを可能にしています。

もし、このバルブシステムがなく、管の長さが常に一定であれば、昔のナチュラル・トランペットのように唇と息の圧力、スピードのコントロールにより限られた音しか出すことが出来ません。

これは息をコントロールすることにより倍音列と呼ばれる元の音の周波数の整数倍の音が鳴る現象を利用していて、基本的には他の管楽器にも共通して言えることです。

次の譜例には第16倍音まで表記されていますが、実際には楽器によって出せる倍音の上限はおおよそ決まっていて、それは奏者の力量によっても異なります。

倍音列

次の動画はバルブシステムのないナチュラル・トランペットの演奏ですが、トリルを含めその自在な演奏テクニックには驚嘆させられます。

ジェレマイア・クラーク:デンマーク王子の行進

ナチュラル・トランペット:Julian Zimmermann

話が少し横道にそれましたが、このトランペットの管長をコントロールするバルブシステムには、楽器の発展の歴史によってピストン式とロータリー式の2種類があり、それが先ほどご覧いただいた外観の違いに繋がっています。

ピストン式のバルブシステムはピストンを押し下げることにより、延長管を迂回し管長を長くしています。

一般的にトランペットと言うとこのピストン式のトランペットを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

ジャズやポップスで使用されているのはピストン式のトランペットですね。

次の動画ではピストンを押し下げることで管長が長くなる構造をわかりやすく図解しています。

How Brass Instrument Valves Work

対してロータリー式のバルブシステムは横に平たく、右手でレバーを押し下げることでロータリーが90度回転し、延長管を迂回することで管長をコントロールしています。

演奏中の外観は乱暴な言い方をすればハンバーガーを両手で握っているかのようなイメージです。

ロータリー式はドイツ、オーストリアなどを中心に盛んになり、ピストン式はそれ以外のイギリス、フランス、アメリカ、それに日本のオーケストラなどで盛んになりました。

そのためドイツのオーケストラであるベルリン・フィルではロータリー式のトランペットを用い、イギリスのオーケストラであるBBCフィルではピストン式のトランペットを使っていると言う訳です。

もちろんこれは厳格なルールによって縛られているわけではありませんので、ドイツのオーケストラでピストン式が使用されても、アメリカのオーケストラでロータリー式が使用されても何ら問題はありませんし、指揮者の裁量で指定されることもあるようです。

機能性としてはロータリー式は、他の楽器と調和する柔らかい音が特徴で、ピストン式は華やかで動きも軽いとされていますが、聴き分けるのはかなり難しいのではないでしょうか。

次の動画では同じフレーズをピストン式とロータリー式で吹き比べています。みなさんも音色の違いに注目しながら聴いてみてください。

トランペット:Jack Burt

次にご紹介するのはカーネギーホールのトランペット・マスタークラスで指導するベルリン・フィル首席トランペット奏者のガボール・タルケヴィの動画です。

タルケヴィはロータリー式のトランペットを、受講生はピストン式のトランペットを使用しています。

レッスンに使われているのはレスピーギ作曲「ローマの松」の一節です。

カーネギーホール:トランペット・マスタークラスより

トランペット:ガボール・タルケヴィ

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まとめ

いかがでしたか?

今回の記事ではオーケストラで使われる2つの種類のトランペットについて解説してみました。

トランペットの歴史についても、また別の機会にもう少し触れてみたいと思います。

こうした違いに注目してクラシック作品を視聴するのも面白いかも知れませんね。

それでは最後にもう一曲、同じ作品を演奏する2つのオーケストラの動画を比べてみたいと思います。

ロータリー式のトランペットを使用しているオーケストラとピストン式のトランペットを使用しているオーケストラでは響きにどのような違いがあるか注目しながら聴いてみてください。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」より

佐渡裕指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

サカリ・オラモ指揮:ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事でご紹介したトランペットの魅力が存分に楽しめるこちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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