ヴィヴァルディ|フルート協奏曲「ごしきひわ」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
トゥッティ(総奏)で刻まれる力強い付点のリズムに合いの手を入れるかのようにフルートが輝かしい音色で飛翔します。
それに続くフルートのソロは伸びやかで輝かしく、まさしく「ごしきひわ」の美しい鳴き声のようです。
まずは第1楽章をダイジェストで聴いてみましょう。
フルート:ジェームズ・ゴールウェイ
ジェームズ・ゴールウェイは1939年生まれ、イギリスは北アイルランド、ベルファスト出身のフルート奏者です。
1969年から1975年までカラヤン率いるベルリン・フィルの首席フルート奏者を務めた後、ソリストとして世界各地で活躍する「黄金のフルートをもつ男」の異名を持つ現代最高のフルート奏者の一人です。
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作曲の背景
フルート協奏曲ニ長調「ごしきひわ」作品10-3 RV.428はイタリアの作曲家、アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)が作曲したフルート協奏曲です。
この作品は全6曲から成る「フルート協奏曲集作品10」の第3番にあたり、『第1番ヘ長調「海の嵐」RV.433』『第2番ト短調「夜」RV.439』とともに演奏される機会の多い作品です。
タイトルの「ごしきひわ(伊:Il Cardellino)」は聞きなれない名前ですが、スズメの仲間の鳥の名前です。
「五色ひわ」と漢字で表記する方がわかりやすいかも知れませんね?
その標題のとおり独奏フルートがこの「ごしきひわ」の鳴き声を模倣していることから付けられたとされています。
実際の「ごしきひわ」の鳴き声がyoutubeにアップされていましたのでご紹介したいと思います。
いかがですか?確かに美しい鳴き声ですね。
18世紀の美しい自然の中でヴィヴァルディがこの美しい鳴き声にインスピレーションを受けてペンを走らせたかと思うとそれだけで曲を聴くのが楽しみになります。
この作品10のフルート協奏曲の大半は原曲となる別編成の楽曲が存在し、ヴィヴァルディが新たにフルートのための協奏曲集を出版するにあたり、それまでに作曲した作品の中から編曲しなおしたものと見られています。
この作品の原曲、室内協奏曲ニ長調RV.90「ごしきひわ」はフルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン・ソロと通奏低音という編成の作品です。(リコーダーを含む異稿もあり)
原曲はヴィヴァルディが若い頃に作曲されたものと見られていますが、この作品10のフルート協奏曲集が出版されたのは50歳を過ぎた1729年頃のことです。
ヴィヴァルディが活躍したのはバロック音楽が栄えた18世紀の前半、当時一般的に「フルート」と言う楽器の呼称は現在の横型のフルートではなく、縦型のリコーダーのことを指していました。
横型のフルートは国によって呼称は若干異なりますが、一般的にはフラウト・トラヴェルソと呼ばれ区別されていました。
ヴィヴァルディの時代は丁度リコーダー(イタリアではflauto dolce)からトラヴェルソへと流行が変わっていく過渡期にもあたり、ヴィヴァルディの作品の中にはリコーダーの為に書かれた作品とトラヴェルソの為に書かれた作品が共存しています。
この作品10のフルート協奏曲集は横型のフラウト・トラヴェルソのために書かれた作品ですが、バロック・アンサンブルなどの演奏ではリコーダーで演奏されているケースも見られます。
木製のフラウト・トラヴェルソは金製や銀製のモダン・フルートに比べると音色も素朴でダークな感じがするので、より明朗で輪郭のはっきりしたリコーダーでの演奏も個人的には面白いと思っています。
ヴィヴァルディ|フルート協奏曲「ごしきひわ」解説
第1楽章:Allegro
トゥッティ(総奏)で刻まれる力強い付点のリズムにフルートがさえずるように合いの手を入れます。
それに続き独奏フルートが「ごしきひわ」の美しく伸びやかな鳴き声を模倣したかのようなカデンツァ(伴奏を伴わない即興的な独奏箇所)を奏でます。
冒頭のトゥッティが繰り返される中、その間を独奏フルートがヴァイオリンと絡み合いながらソロを展開していくリトルネロ形式で書かれています。
第2楽章:cantabile
cantabile(カンタービレ、歌うように)と指示された通り、ゆるやかな8分の12拍子で書かれたシチリアーナです。
ヴィヴァルディの育ったヴェネツィアでゴンドラに揺られながら聴いているような感覚になるのは私だけでしょうか?
第3楽章:Allegro
軽快に音階を駆け巡る独奏フルートが樹々の周りを飛び回る「ごしきひわ」のようです。
付点のリズムと16分音符が1小節ずつ繰り返され、音楽に躍動感と推進力を与えているように感じます。
ヴィヴァルディ|フルート協奏曲「ごしきひわ」youtube動画
ヴィヴァルディ:フルート協奏曲ニ長調「ごしきひわ」作品10-3 RV.428
第1楽章(00:12)第2楽章(04:04)第3楽章(06:45)
Orchestra da Camera di Perugia
フルート:ディーター・フルーリー
草津国際音楽アカデミー&フェスティバル2018より
ディーター・フルーリーは1952年生まれ、スイス、チューリッヒ出身のフルート奏者です。
1981年からウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者を務め、2017年に退団してからはソロ活動や教育活動を中心に活躍されています。
フルーリーが使用しているのはヤマハ製の14金フルートですが、次の動画では木製のフラウト・トラヴェルソを使用した演奏を聴いてみましょう。
モダン・フルートのような輝かしさはありませんが、素朴でより自然に近い音色を楽しむことが出来ます。ぜひ聴き比べてお楽しみください。
第1楽章(00:22)第2楽章(04:12)第3楽章(06:50)
Ensemble Tramuntana
フラウト・トラヴェルソ:チャールズ・ゼブリー (Charles Zebley)
ヴィヴァルディ|フルート協奏曲「ごしきひわ」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
ヴィヴァルディ:フルート協奏曲集 Op.10
協奏曲 第1番 ヘ長調 RV433 《海の嵐》
協奏曲 第2番 ト短調 RV439 《夜》
協奏曲 第3番 ニ長調 RV428 《ごしきひわ》
協奏曲 第4番 ト長調 RV435
協奏曲 第5番 ヘ長調 RV434
協奏曲 第6番 ニ長調 RV437
フラウト・トラヴェルソ:リサ・ベズノシウク(Lisa Beznosiuk)
イングリッシュ・コンサート
指揮、チェンバロ:トレヴァー・ピノック
録音:1987年11、12月 ロンドン
フラウト・トラヴェルソの第一人者としてはまずフランス・ブリュッヘンやバルトルト・クイケンの名前があがると思いますが、作品解釈と言う点でより癖がなく自然なスタイルのトレヴァー・ピノック&イングリッシュ・コンサート盤が私のおすすめです。
リサ・ベズノシウクの透明感のある自然なトラヴェルソの表現が魅力的な1枚です。
「Amazon Music Unlimited」ならバロック音楽作品も膨大な数の録音から聴き放題で楽しめますよ!
いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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参考資料:「ごしきひわ (フルート協奏曲)」『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』2019年10月5日 (土) 10:05 URL:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ごしきひわ_(フルート協奏曲)
「アントニオ・ヴィヴァルディ」『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』2020年5月5日 (火) 02:39 URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/アントニオ・ヴィヴァルディ
『スタッフのおすすめ「フルートと他の楽器」』『The Muramatsuflute』URL:http://www.muramatsuflute.com/shop/c/c100208/