ウェーバー「クラリネット協奏曲第1番」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
軽やかに五線譜の上で踊る独奏クラリネット、その主題は躍動感に溢れ聴いている人の心も浮き立つようです。
まずは第3楽章をダイジェストで聴いてみましょう。
マリス・ヤンソンス指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
クラリネット:アンドレアス・オッテンザマー
アンドレアス・オッテンザマーはわずか21歳でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者に就任したクラリネット奏者です。
ウィーン・フィルの首席クラリネット奏者として活躍したエルンスト・オッテンザマーを父に持ち、兄ダニエル・オッテンザマーもウィーン・フィルの首席クラリネット奏者として活躍しています。
作曲の背景
クラリネット協奏曲第1番 ヘ短調 作品73はドイツの作曲家、カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786-1826)が1811年に作曲したクラリネット協奏曲です。
1811年4月5日、ウェーバーは自作のコンサートでクラリネット小協奏曲 ハ短調 作品26を初演します。
この作品は当時活躍したドイツの有名なクラリネット奏者ハインリヒ・ヨーゼフ・ベールマン(1784-1847)の依頼によるものと伝えられ、この初演のコンサートに臨席していたバイエルン国王、マクシミリアン1世は大変感動し、ウェーバーに新たに2曲のクラリネット協奏曲を依頼しました。
こうして作曲された2つの協奏曲の内の1つが今回ご紹介するクラリネット協奏曲第1番 ヘ短調 作品73です。
曲は短期間で仕上げられ2か月後の6月13日にはウェーバー自身の指揮、ベールマンのクラリネット独奏で初演が行われています。
1人の名手の演奏が作曲家に大いなるインスピレーションを与えた事例は他にも数多くありますが、モーツァルトにとってアントン・シュタードラーがそうであったように、またブラームスにとってリヒャルト・ミュールフェルトがそうであたように、ベールマンと言う名手の存在がなければウェーバーの一連のクラリネットのための作品は生まれなかったことでしょう。
ウェーバー「クラリネット協奏曲第1番」解説
第1楽章:Allegro
力強く重厚な響きの序奏に続き、独奏クラリネットが憂いに満ちた表情で主題を奏でます。(譜例①)
独奏クラリネットは技巧を凝らしながらドラマティックに幅広い音階を駆け巡り高揚した後、最後は消え入るように終わります。
19世紀初めのクラリネットは現在使われているものに比べ、キイシステムなどに様々な改良が加えられる前のシンプルなものでしたが、既にこの作品のような幅広い音域と機能性を備えていたのは驚きです。
そして、それを可能にしたベールマンの演奏技術はよほど素晴らしかったのでしょうね。
第2楽章:Adagio Ma Non Troppo
オーケストラの静かな伴奏に乗って、独奏クラリネットがゆったりと息の長い旋律を歌います。
その主題は静かに何かを物語っているように穏やかで心を落ち着かせます。(譜例②)
中間部では短調に転じ、オーケストラの奏でる力強い旋律を縫うように16分音符のアルペジオ(分散和音)で装飾的に絡んでいきます。
曲は再び独奏クラリネットの穏やかな旋律に戻りますが、ホルンの奏でる柔らかい音色との調和も聴きどころです。
クラリネットの持つ温かく柔らかい音色の魅力を存分に引き出した楽章です。
第3楽章:Rondo. Allegretto
終楽章は独奏クラリネットの技巧がふんだんに散りばめられたロンドです。軽やかに五線譜を飛び回るクラリネットはとても自由で躍動感に溢れています。(譜例③)
オーケストラの響きはまるでオペラの序曲のようで、その後オペラ作家として名を馳せるウェーバーの片鱗を覗かせるようです。
曲は途中であたかも終止したかのように思わせますが、引き続き哀愁を帯びた旋律をクラリネットが歌い上げます。
その後、冒頭のロンド主題が回帰するたびに独奏クラリネットの妙技が華やかに繰り広げられ、輝かしく終曲します。
ウェーバー「クラリネット協奏曲第1番」youtube動画
ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番 ヘ短調 作品73
第1楽章(00:08)
第2楽章(09:08)
第3楽章(16:20)
指揮・クラリネット:イェルク・ヴィトマン
WDR交響楽団(ケルン放送交響楽団)
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ウェーバー「クラリネット協奏曲第1番」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
ウェーバー:
クラリネット協奏曲 第1番 ヘ短調 op.73
クラリネットと管弦楽のための小協奏曲 ハ短調 op.26
クラリネット協奏曲 第2番 変ホ長調
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
クラリネット:ザビーネ・マイヤー
録音時期:1985年
管理人のオススメはドイツのクラリネットの名手ザビーネ・マイヤーの若かりし日の録音です。録音された1985年と言えば、世をにぎわしたいわゆる「ザビーネ・マイヤー事件」からまだ数年しか経っていない頃の録音ですが、この件に関しては余談ですので興味のある方はこちらの記事でお読みください。
若かりしマイヤーのクラリネットの響きは力強く太いイメージとは正反対のクリアで美しく、少しクールにも感じられるほど透明感に溢れるものです。
その演奏技術は素晴らしく、演奏の難しさなど微塵も感じさせない自由で伸びやかなものです。
ウェーバーの遺したクラリネットの協奏的作品が全て収録されている魅力的なアルバムです。
最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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