バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
分散和音で奏されるチェロの豊かな響きが心に残る冒頭部分は大変有名で、曲名は知らずとも多くの方が聞き覚えのある旋律だと思います。
まずは第1曲「プレリュード(前奏曲)」をダイジェストで聴いてみましょう。
チェロ:オフェリー・ガイヤール
作曲の背景
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007はドイツの作曲家、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)が作曲した無伴奏チェロのための作品です。
第1番から第6番までの全6曲からなり、6つの組曲はそれぞれ前奏曲に始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグで構成されています。
そしてサラバンドとジーグの間に、第1番、第2番ではメヌエット、第3番、第4番ではブレー、第5番、第6番ではガヴォットが加えられています。
これらの作品はバッハがケーテンの宮廷楽長であった時代(1717-1723)に作曲されたと考えられていますが、この作品にはバッハの自筆譜が残っておらず、複数の筆者譜が遺されていますが、その中でも最も信頼性の高いものとしてバッハの後妻のアンナ・マグダレーナ・バッハによるものがあります。
この作品を巡る様々な議論の中には、そもそもこの作品が本当にチェロのために書かれたものかどうかを疑問視する声もあります。
特に第6番は5弦の楽器のために書かれていて(チェロは4弦)、肩からかけるタイプのヴィオロンチェロ・ダ・スパッラのために書かれたのではないかと言う説があります。
ただチェロの音域に相当する5弦の楽器には複数の呼称が存在しており、呼称だけでなく形状にも若干の相違点が見られるために様々な解説を読んでも混乱するばかりです。
個人的な意見としてはバッハの活躍した時代にはあらゆる楽器が様々な改良を加えられている過程であり、チェロと言う言葉が示す楽器も今日のように一義的なものではなく、類似した複数の形態があったと言うことだと考えています。
実際にどのような楽器を想定した作品かは別として、バッハが時を超えて現代のモダンチェロのために書いた作品だと言われても違和感のないほど、チェロの魅力を存分に引き出す作品であることは異論のないところでしょう。
パブロ・カザルスの功績
今日ではチェロの旧約聖書とも言われるこの無伴奏チェロ組曲ですが、バッハの他の作品同様にその死後は長い間日の目を見ることはありませんでした。
この作品に再びスポットライトを当てたのは20世紀を代表するチェロの巨匠、パブロ・カザルス(1876-1973)でした。
1890年、スペイン、バルセロナの店で当時13歳のカザルスは偶然にこの曲の楽譜を手にします。
1904年にはパリで全曲演奏会を開き、1936~39年にはレコーディングをするなど、その価値を再発見し広く世に紹介したことでも有名です。
カザルスは生涯をかけて無伴奏チェロ組曲と向き合い続けた音楽家で、彼の存在なくしてこの作品が今日の認知度を得られたかどうかは甚だ疑問です。
バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」の解説
1. Prelude
Prelude(プレリュード)は前奏曲と訳され、冒頭のダイジェスト動画でもご紹介した通りこの無伴奏チェロ組曲を象徴するような大変有名な1曲です。
バッハの楽譜はまるで美しい幾何学模様のようで、1つの旋律が奏でる複数の声部(ポリフォニー)がチェロの豊かな響きとともに独特の奥深い空間を生み出します。
2. Allemande(02:39)
Allemande(アルマンド)はフランス語で「ドイツ風」の意味で元々は舞曲の種類を指しますが、この曲を聴く限りは既に自由な音楽作品として踊りための曲からは離れたものになっているように感じます。
3. Courante(06:25)
Courante(クーラント)は3拍子の舞曲ですが、ここではテンポの速い流麗な1曲になっています。
4. Sarabande(09:17)
Sarabande(サラバンド)は荘重なリズムが印象的な舞曲です。
所々に現れる重音(複数の音を同時に響かせる)が重厚感を出しています。
5. Menuet(12:05)
Menuet(メヌエット)も3拍子の舞曲ですが、ここでは2つのメヌエットが使われています。
生き生きとした優雅なメヌエットですが、底抜けに明るい雰囲気でもないところがバッハらしいと個人的には感じます。
6. Gigue(15:39)
Gigue(ジーグ)はテンポの速い8分の6拍子(8分の9拍子)の舞曲ですが、ここでは生き生きとした雰囲気の終曲にふさわしい舞曲となっています。
バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」のyoutube動画
バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番ト長調 BWV1007
チェロ:Lucia Swarts
バッハ「無伴奏チェロ組曲」の名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
1. 第1番ト長調 BWV1007
2. 第2番ニ短調 BWV1008
3. 第3番ハ長調 BWV1009
4. 第4番変ホ長調 BWV1010
5. 第5番ハ短調 BWV1011
6. 第6番ニ長調 BWV1012
J.S.バッハ:チェロ・ソナタ
7. 第1番ト長調 BWV1027
8. 第2番ニ長調 BWV1028
チェロ:ヤーノシュ・シュタルケル
録音時期:1963年、1965年
20世紀を代表するハンガリー出身のチェリスト、ヤーノシュ・シュタルケル(1924-2013)の録音です。
シュタルケルは全集録音だけで生涯に4回もの録音を行っていますが、今回ご紹介するのは壮年期の録音です。
後年の録音に比べるとテンポ設定も少し早めで録音もやや古いですが、それを補って余りある生気みなぎる名演です。
1992年の録音も落ち着いた巨匠の風格で甲乙つけがたい録音なので一緒にご紹介しておきます。(※こちらはカップリングのチェロ・ソナタはありません。)
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いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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