シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
ティンパニと弦楽器の刻むリズムに乗って独奏ヴァイオリンが付点のリズムが印象的な舞曲風のフレーズを活き活きと奏でます。
まずは第3楽章をダイジェストで聴いてみましょう!
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
リサ・バティアシュヴィリは1979年生まれ、ジョージア(グルジア)出身のヴァイオリニストです。
1995年シベリウス国際コンクールに史上最年少の16歳で出場し、第2位を受賞。
世界中の主要オーケストラへソリストとして客演する他、ソロ、室内楽でも活躍されています。
作曲の背景
ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47はフィンランドの作曲家、ジャン・シベリウス(1865-1957)が1903年に作曲した協奏曲です。2年後の1905年に改訂され、これが現行の版となっています。
10代の頃は偉大なヴァイオリニストになるのを夢見て、ひたすらヴァイオリンの練習に打ち込んだシベリウスでしたが、結局は挫折し作曲家としての道を歩み始めます。
そんなシベリウスが遺した唯一のヴァイオリン協奏曲である本作品は30代の後半、交響曲第2番(1901年)と交響曲第3番(1907年)の間に作曲されています。
1904年2月にシベリウス自身の指揮で行われた初演の評価はあまり芳しいものではありませんでした。
この年の9月シベリウスはヘルシンキを離れ、自然豊かなトゥースラ湖のほとりに建てた「アイノラ(妻アイノの居場所の意)」と名付けた新居に移住します。
翌1905年、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の演奏を聴いたシベリウスはその作風に大いに刺激を受けこの作品の改訂に踏み切ります。
ヴァイオリンと言う楽器を熟知したシベリウスならではの高い技巧が求められる場面でも、初稿でのヴィルトゥオーゾ風の華やかな雰囲気から、より内面的なものへと進化した改訂稿では、美しさと共に北欧の厳しい自然を感じさせるような雰囲気の作品に仕上がっています。
そこにはシベリウス自身の生活環境の変化も影響しているのかも知れませんね。
シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」の解説
第1楽章:Allegro moderato
冒頭、独奏ヴァイオリンが北欧の自然を俯瞰するかのような仄暗い雰囲気の旋律を奏でます。
シベリウス自身この部分を「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」と表現しています。
若いころにヴァイオリニストを目指したシベリウスらしく独奏ヴァイオリンが技巧的に活躍する箇所もありますが、個人的には華やかと言うよりは内省的で重厚な印象が強い楽章です。
独奏ヴァイオリンの長いトリルに続くオーケストラの旋律(6:00)は緊張感があり重厚でドラマティックです。
その後展開されるヴァイオリンのカデンツァ(オーケストラ伴奏のない独奏部分)が本当に素晴らしく印象的です。
第2楽章:Adagio di molto
木管楽器が奏でる幻想的な導入に続き、独奏ヴァイオリンが息の長い旋律を静かに美しく奏でます。
まるで溢れる情感を内に秘めたように静かにゆっくり高揚していく様が印象的です。
第3楽章:Allegro ma non troppo
ティンパニと弦楽器の刻むリズムに乗って独奏ヴァイオリンが付点のリズムが印象的な舞曲風のフレーズを活き活きと奏でます。
力強くエネルギッシュな主題がオーケストラから独奏ヴァイオリンへと受け渡され、華やかな技巧を駆使しながら高揚していきます。
最後はドラマティック且つ華やかに盛り上がってクライマックスを迎えます。
シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」のyoutube動画
シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
第1楽章 Allegro moderato(00:25)
第2楽章 Adagio di molto(17:00)
第3楽章 Allegro ma non troppo(26:30)
マレク・ピヤロフスキ指揮 ポズナン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:ユン・ソヨン
2011年 第14回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールより
ユン・ソヨンは1984年生まれ、韓国出身のヴァイオリニストです。
メニューイン国際コンクールをはじめ数々のコンクールで優勝、今回ご紹介する動画は2011年に開催された第14回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝された時の演奏の様子です。
ユン・ソヨンの演奏動画はこちらの記事でもご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください!
シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」の名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
シベリウス ヴァイオリン協奏曲
ウォルトン ヴァイオリン協奏曲
サカリ・オラモ指揮 バーミンガム市交響楽団
ヴァイオリン:諏訪内晶子
録音:2002年 バーミンガム
ヴァイオリンは1990年、チャイコフスキー国際コンクールを最年少で優勝すると言う鮮烈なデビューを飾った諏訪内晶子。
個人的にはオーケストラが華やかに響きすぎかなとも感じますが、独奏ヴァイオリンはとても端正でしなやかな美しい演奏です。
諏訪内さんは演奏する姿も非常にしなやかで美しいので、機会があればぜひコンサートホールで聴くことをおすすめします!
こちらの音源はレーベルがyou tubeにアップしているのでリンクを貼っておきます。
シェーンベルク ヴァイオリン協奏曲
シベリウス ヴァイオリン協奏曲
エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
録音:2007年 ストックホルム
ヴァイオリンは10代の頃からソリストとして活躍する、1979年生まれ、アメリカ出身のヒラリー・ハーン。
先ほどご紹介した諏訪内晶子の盤と同様に美しく端正な演奏ですが、より若々しく瑞々しい印象を受けます。
シベリウスに若々しく瑞々しいと言う印象は相応しくないのかも知れませんが、個人的にはそのように感じます。
2枚とも個性と言う点では物足りなく感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、奇をてらうことのない美しい演奏だと思います。
録音もオーケストラが上手く抑制され、独奏ヴァイオリンが明瞭に聴こえるよう工夫されているように感じます。
こちらの音源もヒラリー・ハーンの公式チャンネルにアップされていますのでリンクを貼っておきます。
「Amazon Music Unlimited」ならご紹介した2枚のアルバム以外にもリサ・バティアシュヴィリ、チョン・キョンファ、ダヴィッド・オイストラフ、フランク・ペーター・ツィンマーマン、ヴィクトリア・ムローヴァ、アイザック・スターン、ワディム・レーピン、クリスティアン・テツラフ、マキシム・ヴェンゲーロフ、ギドン・クレーメル、ナイジェル・ケネディ、ギル・シャハム、ヤッシャ・ハイフェッツ、イツァーク・パールマン、などの様々な新旧のアーティストによる「シベリウスのヴァイオリン協奏曲」を聴き比べできますよ!
いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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