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モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」【解説と名盤】

2020年9月14日

まずはダイジェストで聴いてみよう!

独奏ヴァイオリンの奏でる瑞々しく颯爽とした旋律は気品に満ち溢れ、聴く人の心を惹きつけてなりません。

まずは第1楽章をダイジェストで聴いてみましょう。

ワレリー・ゲルギエフ指揮 マリインスキー劇場管弦楽団
ヴァイオリン:アレクサンドラ・コヌノヴァ

アレクサンドラ・コヌノヴァは1988年、モルドバ共和国生まれのヴァイオリニストです。

2012年、ヨーゼフ・ヨアヒム・ヴァイオリンコンクールで優勝、2015年のチャイコフスキー・コンクールで第3位入賞などの経歴を持つ、これからの活躍が期待されるヴァイオリニストです。

作曲の背景

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216はオーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1775年に作曲したヴァイオリン協奏曲です。

1772年、16歳のモーツァルトはザルツブルク宮廷楽団のコンサートマスターの職に就きます。

宮廷楽団の同僚にはヴァイオリンの名手として知られたアントニオ・ブルネッティ(1744-1786)もいました。

1775年6月にヴァイオリン協奏曲第2番を完成させたモーツァルトは、3か月後の9月にこの第3番を、翌10月に第4番、そして12月に第5番と、モーツァルトが遺した真作とされる5曲のヴァイオリン協奏曲の内、実に4曲をこの1775年のうちに立て続けに作曲しています。

しかもこの時モーツァルトはわずか19歳と天才ならではの早熟ぶりをみせています。

これらのヴァイオリン協奏曲が作曲されたきっかけや経緯については詳しいことはわかっていませんが、ブルネッティと言う名手の存在や、職務上モーツァルト自身もヴァイオリンの独奏を務める機会があったことと無縁ではないようです。

2年後の1777年、ザルツブルク宮廷楽団のコンサートマスターの職を辞したモーツァルトは9月には母と2人でパリへ向かいザルツブルクを旅立ちます。

モーツァルトは翌10月に途中のアウクスブルクから父、レオポルトに宛てて「シュトラスブルク協奏曲を弾いて聴衆の好評を得た。」と言う内容の手紙を書き送っています。

同月、父からモーツァルトに宛てた手紙の中にも「ブルネッティがシュトラスブルガーのついたモーツァルトの曲を弾いて、上手く弾いていたが両端のアレグロで時折間違っていた。」と言った内容の記述が見られます。

これらのことからモーツァルト父子の間では「シュトラスブルク協奏曲」の通称で通じていた自作の協奏曲が、ブルネッティの独奏でもモーツァルト自身の独奏でも演奏されていたことがうかがえます。

これまでこの「シュトラスブルク協奏曲」はヴァイオリン協奏曲第4番のことを指すと思われていましたが、その後の研究で今日ではこのヴァイオリン協奏曲第3番を指していると言う説が有力となっています。

いずれにしてもヴァイオリン協奏曲の独奏者まで務めたモーツァルトが、その最晩年まで27曲ものピアノ協奏曲を書いているのに対し、ヴァイオリン協奏曲はこの19歳の年を最後に書いていないのが不思議に思えてなりません。

モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」の解説

第1楽章 Allegro

オーケストラの奏でる爽やかな第1主題は曇り一つない晴れやかな旋律です。

オーボエとホルンが奏でる第2主題に続き、独奏ヴァイオリンが気品高く冒頭の第1主題を美しく奏でます。

独奏ヴァイオリンが奏でる旋律はどこまでも晴れやかで瑞々しく、短調に移行し陰を見せる部分でも美しさを忘れることはありません。

青年期の作品らしい清涼さも感じますが、美しく気品に満ち溢れた素晴らしい楽章です。

第2楽章 Adagio

静かにゆったりと漂うようなオーケストラの響きの中から、美しく響く独奏ヴァイオリンの調べが聴こえてきます。

オーケストラの穏やかな伴奏の上で奏でられる独奏ヴァイオリンの響きが浮き立つように感じられ印象的です。

時折、旋律に呼応するかのようなフルートの澄んだ音色も美しく心に響きます。

モーツァルトの作品の緩徐楽章はどの曲でも天上の美しさに満ち溢れていると改めて感じさせられます。

第3楽章 Rondeau Allegro

生き生きとした雰囲気に満ちたフランス風の軽快なロンドです。

途中で現れる独奏ヴァイオリンの陰影を感じさせる旋律も魅力的です。

曲は独奏ヴァイオリンの短いカデンツァ(オーケストラ伴奏を伴わない即興的な独奏箇所)を挟み、ロンド主題に戻った後、弦楽器のピチカート(指で弾く奏法)に乗って少し郷愁を感じさせる調べが聴こえてきます。

この旋律が小休止すると、ここでシュトラスブルガーと呼ばれる民謡が現れます。(21:23)

再びロンド主題が現れた後、最後は余韻を残すかのように柔らかく終曲します。

モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」のyoutube動画

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216

第1楽章 Allegro(00:00)
第2楽章 Adagio(09:38)
第3楽章 Rondeau Allegro(17:40)

オタワ・ナショナル・アーツ・センター管弦楽団(NACO)
指揮・ヴァイオリン:ピンカス・ズーカーマン

ピンカス・ズーカーマンは1948年、イスラエル生まれのヴァイオリニストです。

12歳の時にアイザック・スターンパブロ・カザルスに認められ、ジュリアード音楽院に留学。
1969年、レーヴェントリット国際コンクールでチョン・キョンファと同時に優勝。

指揮者としてもイギリス室内管弦楽団を初めとするオーケストラを指揮して活躍しています。

今回ご紹介した動画でも繊細で、際立って美しいヴァイオリンの音色が印象的です。

モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」の名盤

管理人おすすめの名盤はこちら!

モーツァルト
1. ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
2. ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219「トルコ風」
3. 協奏交響曲 変ホ長調 K.364

サー・コリン・デイヴィス指揮
ロンドン交響楽団

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー
ヴィオラ:アリゴ・ペリッチャ(3)

録音:1961年11月(1,2)、1964年5月(3)、ロンドン(ステレオ)

アルテュール・グリュミオー(1921-1986) はベルギー出身のヴァイオリニストです。

有名な作曲家、デュボアとエネスコに学んだグリュミオーは、特にモーツァルトの演奏に定評がありましたが、サン=サーンス、フランク、ラロ、ルクーなど、フランス音楽でも名演を遺しています。

少し古い録音ですが、心地よい快速なテンポで颯爽とした上品な演奏を楽しめます。艶やかな美しい音色も魅力です。

「Amazon Music Unlimited」ならいろんなアーティストの「ヴァイオリン協奏曲第3番」を気軽に聴き比べが出来ますよ!

いかがでしたか?こちらの作品もぜひ聴いてみてください!

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参考資料:「ヴァイオリン協奏曲第3番 (モーツァルト)」『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』2016年5月21日 (土) 15:26 URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイオリン協奏曲第3番_(モーツァルト)
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』2020年4月29日 (水) 06:53 URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
野口秀夫著「モーツァルトのシュトラースブルク協奏曲について(その1)ヴァイオリン協奏曲ト長調K.216説の確定」『神戸モーツァルト研究会第213回例会』2010年6月6日
野口秀夫著「モーツァルトのシュトラースブルク協奏曲について(その2)ヴァイオリン協奏曲ニ長調K.218説の顛末」『神戸モーツァルト研究会第214回例会』2010年8月1日
「大阪交響楽団 曲目解説 名曲コンサート 2017年度」『大阪交響楽団』URL:http://sym.jp/publics/index/400/detail=1/c_id=938/page938=2