チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」【解説とyoutube動画】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
独奏ヴァイオリンが引きずるように主題を奏でるとオーケストラが加わりテンポを速めて熱気を帯びていきます。
まずは第3楽章をダイジェストで聴いてみましょう!
ヤニック・ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団
ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
リサ・バティアシュヴィリさんは1979年生まれ、ジョージア(グルジア)出身のヴァイオリニストです。
1995年シベリウス国際コンクールに史上最年少の16歳で出場し、第2位を受賞。
現在は世界の主要オーケストラへソリストとして客演する他、ソロ、室内楽でも活躍されています。
作曲の背景
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35はロシアの作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1878年に作曲した協奏曲です。
この年の2年前の1876年、チャイコフスキーはロシアの鉄道王の未亡人、メック夫人から資金援助の申し出を受けます。
翌年から実に14年の長きにわたりチャイコフスキーのパトロンとして経済的な援助を続けたメック夫人との間には700通を超える多数の手紙が遺されていますが、2人はついに終生互いに出会うことなく不思議な関係を続けることになります。
これによって生活面での余裕が出来たチャイコフスキーはヨーロッパ各地を旅したり、作曲に集中出来る環境を得ることになります。
また私生活の面では1877年の7月に結婚をしますが、この結婚は2か月余りで破綻します。
同年9月には新妻との生活に絶望を感じモスクワ川へ身を投じ自殺を図りますが、これは幸いにも未遂に終わっています。
そしてこの不幸な結婚生活から逃れるようにモスクワを離れます。
翌年、この作品を書いた1878年10月には12年間勤めたモスクワ音楽院を辞職し作曲活動に専念するようになります。
この年ジュネーブ湖畔のクラランに静養に訪れていたチャイコフスキーの元にチャイコフスキーと同性愛の関係にあったとされるヴァイオリン奏者のイオシフ・コテックがフランスの作曲家、ラロが作曲したヴァイオリン協奏曲第2番「スペイン交響曲」の楽譜を持参して訪れます。
この作品に触発されたチャイコフスキーはこの地でこの作品を研究し、自作のヴァイオリン協奏曲に取り組んだと考えられています。
独奏ヴァイオリンのパートに関してはコテックの助言があったそうです。
チャイコフスキーは完成した楽譜をメック夫人と当時のロシアの著名なヴァイオリン奏者でペテルブルク音楽院教授のレオポルト・アウアーに送りますが、2人から好意的な感想を得ることはなく、アウアーからは演奏不可能として初演を断られることになります。
結局、初演はハンガリーの指揮者ハンス・リヒターの指揮、ロシアのヴァイオリン奏者、アドルフ・ブロツキーの独奏で1881年に行われますが、ここでも厳しい批判にさらされることになります。
しかし、その後もブロツキーは機会があるごとにこの作品を取り上げ、ついにはベートーヴェン 、メンデルスゾーン、ブラームスのそれと並んで4大ヴァイオリン協奏曲との評価を得るようになります。
作品はこの曲の真価にいち早く気付き、世に知らしめることに貢献したアドルフ・ブロツキーに献呈されています。
チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」解説
第1楽章 Allegro moderato(00:50)
穏やかな序奏に始まりオーケストラが徐々に熱を帯びていくと独奏ヴァイオリンが静かにソロを奏で始めます。
オーケストラのトゥッティ(総奏)で演奏される旋律は民族的な情感に溢れ大変魅力的です。
独奏ヴァイオリンは常に抒情的かつドラマティックで中盤のカデンツァでは圧倒的な技巧を見せ聴衆を魅了します。
※カデンツァはオーケストラ伴奏を伴わない独奏箇所。
第2楽章 Canzonetta. Andante(19:00)
もの悲しい雰囲気で静かに何かを語るような独奏ヴァイオリンの旋律が印象的です。
独奏ヴァイオリンに絡む木管楽器の温かく優しい調べが何かを応えているかのように聴こえます。
第3楽章 Allegro vivacissimo(25:07)
第2楽章から切れ目なく演奏される第3楽章は躍動的でエネルギッシュな民族舞曲風の楽章です。
リズムが印象的な第1主題とゆったりとした第2主題が絡み合いながら、終盤は加速度的にテンポを速めオーケストラとドラマティックに絡み合いながら熱狂的なフィナーレへと向かいます。
チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」youtube動画
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
クリストフ・ポッペン指揮 ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
ジャニーヌ・ヤンセンさんは1978年生まれ、オランダ出身のヴァイオリニストです。
世界の主要オーケストラと定期的に共演を重ね、日本にもソリストとして度々来日しているヤンセンさんは現在世界でも指折りの人気と実力を兼ね備えたヴァイオリニストです。
※アンコールに応えてヤンセンさんが演奏したのは次の曲です。(36:35)
ヨハン・セバスティアン・バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV1001より 1.Adagio
いかがでしたか?他の作曲家のヴァイオリン協奏曲もぜひ聴いてみてください!
お役に立ちましたらクリックをお願いします。