ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」【解説と名盤】
目次
まずはダイジェストで聴いてみよう!
いかにもドヴォルザークらしい舞曲風の旋律に続き、独奏ヴァイオリンが自在に五線譜の上を駆け巡ります。
その調べは躍動感にあふれ、とても生き生きとしています。
まずは第3楽章をダイジェストで聴いてみましょう。
ヤニック・ネゼ=セガン指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
作曲の背景
ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53はチェコの作曲家、アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が1880年に作曲したヴァイオリン協奏曲です。
1875年から1877年にかけて妻アンナとの間にもうけた3人の子供を次々と亡くしたドヴォルザークはその悲しみを乗り越えて「スターバト・マーテル」(1877)、「スラヴ舞曲集(第1集)」(1878)などの代表作を次々と書き上げます。
1878年、高名なヴァイオリン奏者でブラームスと親交が厚いことでも知られるヨーゼフ・ヨアヒム(1831-1907)の知己を得たドヴォルザークはヴァイオリン協奏曲の作曲を思い立ちます。
1879年には第1稿を書き上げてヨアヒムの元に送り、ヨアヒムからの助言を容れた後、翌1880年に第2稿を完成させています。
1882年にはさらに大幅な改訂が施され、献呈者のヨアヒムのヴァイオリンでリハーサルまで行われましたが、なぜかヨアヒムの演奏で初演が行われることはありませんでした。
結局、チェコのヴァイオリン奏者、フランティシェク・オンドジーチェク(1857-1922)の独奏で1883年にプラハで初演され、献呈者のヨアヒムがこの作品を演奏することはありませんでした。
クラシックファンの間で「ドヴォコン」と言えば、ドヴォルザークのチェロ協奏曲のことを指しますが、今回ご紹介するヴァイオリン協奏曲もドヴォルザークらしい魅力的な旋律に溢れた素晴らしい作品だと思いますので、ぜひ聴いてみてください。
ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」解説
第1楽章:Allegro ma non troppo
ドラマティックで勇壮なオーケストラのトゥッティ(総奏)に続き、ヴァイオリンがいかにもドヴォルザークらしい哀愁を帯びたカデンツァを奏でます。(譜例①)
独奏ヴァイオリンが奏でる調べは、ボヘミアの郷愁を感じさせるような民族性もあり、独特の哀切を感じる魅力的な旋律で溢れています。
楽曲は終盤に短いカデンツァを挿んだ後、そのまま第2楽章に入ります。
第2楽章:Adagio ma non troppo
ドラマティックな第1楽章とは対照的な美しく静謐な楽章です。独奏ヴァイオリンが静かに朗々と奏でる旋律が心に染み入るようです。(譜例②)
中間部では何度か、ややドラマティックな展開を見せますが、すぐに元の優美な姿に戻ります。
後半は旋律にさらに細かい音符と装飾を纏いながら美しく展開した後、美しさと静けさの中で終曲していきます。
第3楽章: Finale:Allegro giocoso ma non troppo
終楽章は再びドヴォルザークらしい民族的な舞曲を感じさせる楽章です。その主題はとても明るく楽し気で生き生きとしています。(譜例③)
オーケストラと独奏ヴァイオリンがユニゾンで主題を奏でた後に展開していくヴァイオリンのソロは、輪になって踊っている群衆の中で楽し気に弾いているかのような印象さえ受けます。
曲は終始明るい表情のまま華やかに終曲します。
ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」youtube動画
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53
第1楽章(00:24)
第2楽章(12:43)
第3楽章(23:55)
ロベルト・ミンチュク指揮:ブラジル交響楽団
ヴァイオリン:アラベラ・シュタインバッハー
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ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」名盤
管理人おすすめの名盤はこちら!
ドヴォルザーク
1. ヴァイオリン協奏曲イ短調 op.53, B108
2. マズルカ ホ短調 op.49, B90
3. ロマンス ヘ短調 op.11, B39
4. ユモレスク op.101-7(クライスラー編曲)
マンフレート・ホーネック指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター
録音:2013年6月
ムターは近年、ラトルやデイヴィス、ネルソンスともこの作品を共演していて、いずれも好評を博していますが、レコーディングはこのホーネック&ベルリン・フィルとのコンビが初めてです。
ムターの伸びやかでしなやかなヴァイオリンの音色がベルリン・フィルの重厚で輝かしい響きの中から浮き立つような素晴らしい演奏です。
最後までお読みいただきありがとうございます。こちらの作品もぜひ聴いてみてください!
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